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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾肆章 虎擲竜挐 ~強者と強者の激突~
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第弐拾弐話 【1】 絶対に助けます

 遂に9個目の地獄を突破した僕達は、最後の10個目の地獄に向かうべく、下に降りる階段を探しています。


 そしてしばらく探ていると、ちょっと崩れかけた階段を見つけました。

 僕のあの巨大な竜巻が、下に降りる階段に当たっていたようです。崩れていなくて良かったです……気を付けないと。


「くっ……この先が、最後の地獄……」


「龍花。やはり先程の覚醒の反動で、体が言うことをきかないんじゃないですか?」


 そして後ろからは、玄葉さんに支えられながら、龍花さんも着いて来ていました。

 だけど、1人では歩けない程に消耗してしまっているみたいです。あの状態には、そんなリスクがあったのですね……。


「やっぱり龍花さんも、ここで他の妖怪さん達が来るのを待っていて下さい。このままだと、龍花さんが危険ですよ」


「しかし……ここから先は、十極地獄の最後の地獄です。何が待ち受けているか分かりませんよ。私なら、しばらく待てば回復するので……」


「その前にやられたらどうするんですか?」


「くっ……」


 それに今の状態だと、龍花さんを支えたまま、玄葉さんが動かないといけないから、下手したら被害者が増えちゃうかも知れないんです。それは、龍花さんも分かっているはず。


「龍花、気持ちは分かりますが、流石に手負いを連れて行くわけにはいきません。大丈夫です、私がしっかりと守りますから」


「……くっ、仕方ありません……確かにこのままでは、私は足手まといですね」


 すると、龍花さんはようやく納得してくれて、玄葉さんの手助けのもと、壁に寄りかかって座り込みました。そしてその後に、玄葉さんに向かって話しかけています。


「良いですか、玄葉。必ずお二人を守って下さい。大怪我でも負わそうものなら……」


「分かっていますよ、龍花」


 そして龍花さんの言葉に、玄葉さんがしっかりと答えます。その後お互いの顔を、心剣な表情で見ています。

 なんだろう、この感じ。信頼しきっている者同士、少ない言葉でも全部分かっている。って感じで、少し羨ましいです。


『どうした、椿よ。2人のやり取りが羨ましいか?』


「んっ……いや、ちょっとね」


『安心しろ。我と椿も、同じレベルの信頼で結ばれとる。同じように、言葉が無くても通じている』


 それ、本当かなぁ?


 僕は、白狐さん黒狐さんに無理をして欲しくないって、いつもそう思っているからね。

 それが通じているのなら、無茶はーーって、今のところしていませんね。えっ、本当に通じているの?


「…………」


 僕は試しに、あることをして欲しいと思いながら、白狐さんをじっと見つめてみます。


『おぉ、何じゃ? 愛い(うい)やつめ』


 そう言いながら白狐さんは、僕の頭を撫でてきました。


 なんで分かったのかな?!


『椿! 俺も分かっているからな!』


 そして黒狐さんも対抗しないで下さい!


「黒狐さんは酒呑童子さんを運んでおいて!」


『ぐっ……白狐。いったいいつまで、俺が運ばないと駄目なんだ?』


『そいつが起きるまでだ』


『くっ! 起きろ!! 酒呑童子!』


 駄目ですね。黒狐さんが顔面を蹴っても起きません。イビキをかいて寝ています。これ、本当に起きるのかな?


「では椿様、先へ進みますよ」


 すると、龍花さんと話終えた玄葉さんが、僕達の元にやって来てそう言ってきました。そして龍花さんは、名残惜しそうにしながら、ずっと僕達を見続けています。


 それだけ着いて行きたかったのですね……。

 でも、無茶をされても困りますから、ここで後から来る皆に助けて貰って下さい。そして、ちゃんと治療を受けて下さいね。


 だって、茨木童子を何とかしたとしても、まだ戦いは残っていますからね。

 龍花さんのあの力は頼りになるから、しっかりと次に備えていて下さい。


 そして僕達は、次の地獄に向かう階段を降りて行きます。


 ーー ーー ーー


「うっ……! なんですか? これ……」


 僕達が階段を降りている最中、その途中からいきなり空気が重くなりました。


 今までも重くて、凄く息苦しい感じだったけれど、レイちゃんが居たから、まだ何とかなっていました。


 でも、これは……この先は駄目です。


「ムキュゥ……」


 レイちゃんもキツそうにしていますね。


 それもそのはず。亡霊の負のエネルギーだけじゃなく、生きた人間の殺意まで混ざっているんです。

 それともう一つ、妖気も多少感じます。この先に誰かいる? それも、複数ですね。まさか……。


「玄葉さん。玄武の盾を出来るだけ皆に、多めに付けて下さい」


「分かりました」


 ここまで来て、まさかとは思うけれど、亰嗟に入っている半妖や妖怪、そこでバイトをしている人間達が、この先で立ち塞がっているんじゃ……。

 こんな地獄の最下層みたいな所にいたら、精神どころか体も壊れてしまいますよ。


 だけど、若干妖気を感じた時点で、僕は分かっていました。

 それに、ようやく白狐さん黒狐さんも気付いたようです。


『ぬぅ……此奴等は』


『また厄介な……』


 そして、階段を降りきった先に広がる広場には、多数の人影が見えました。

 それは紛れもなく、普通の人間と、多少妖気を放っている半妖の人達でした。

 亡霊達は、全体的に透けていますからね。この人達は透けていないので、間違いなく生きている人達です。


『こいつら全員、正気の目をしていないぞ』


 そして白狐さんが唸る中、黒狐さんもこの事態に、少し緊張しているみたいです。


 確かに……数が数なんですよ。これ、100人以上はいるよね。

 それに比べてこっちは、今までの地獄を突破する中で、何人かの仲間がリタイアして、今は5人だけです。

 あっ、6人だ……寝ている酒呑童子さんを忘れていました。もういい加減起きて欲しいですんけど。


「うわっ?!」


『『椿!?』』


 するといきなり、僕の目の前に柔道服を着た男性が現れて、僕の腕と胸ぐらを掴むと、一本背負いをしてきました。


 あれ? でもこの技、僕は1度受けたような……。


「くっ!!」


 咄嗟に僕は、体を反らしてえび反りみたいになると、背中を地面に叩きつけられる前に、足を地面につけました。


 やっぱりこれ……半年前の夏休み、楓ちゃんの実家の旅館に泊まりに行った時、そこに所属する妖怪さんの1人、磯撫でさんにもやられた技です。


 その技のキレも力の入れ方も、あの妖怪さんと殆ど一緒です。この人はいったい……と思ったけれど、あのお札を使っているんでした。

 という事は、この人達の持っているお札には、楓ちゃんが居た旅館の妖怪さん達が、封じられている?!


『椿、大丈夫か!』


「うん、大丈夫です白狐さん! それよりも、この人達の持っているお札……!」


 あの時、楓ちゃんの実家である旅館、そこの妖怪さん達数人が、亰嗟に攫われているのです。

 そして亰嗟は、妖怪さん達をお札に封じ込め、その力を行使する術を持っています。


 つまり今、僕を攻撃しているこの柔道服を来た男性は、磯撫でさんが封じられたお札を使っている事になります!


 まさかこんな所で、捕らえられた妖怪さん達を見つける事が出来るなんて、全く思わなかったですよ。


 実は、あれからも捜査は続いていたんだけれど、なんの手がかりも無く、敵が動くのを待つしかない状態だったのです。


 だけど今、やっと助けだす事が出来ます。


 あの時に僕が、スパイの烏天狗の言葉をもっと怪しんでいれば、磯撫でさんは捕まらなかった。

 そしてもしかしたら、それをきっかけに、他の妖怪さん達も助かっていたかも知れません。

 なんて考えても、終わった事なんだからしょうが無いです。


 今ここで、助け出せば良いだけなんです!


「たぁっ!!」


「…………!?」


 そして僕は、地面に着いた足をしっかりと踏みしめ、体を半分ほど捻り、その勢いで相手の体を横に回転させます。

 磯撫でさんと戦った時も、この手を使いました。でもあれから、僕は強くなっています。あの時と同じように回転させても、勢いと回転数が違いますよ。


「そぉ~れ、っと! はぁっ!!」


 そして、相手を空中で何回か回転させた後に、僕は体勢を立て直し、直ぐに腕を振り下ろすと、相手を地面に叩きつけました。


「…………っ!!??」


 因みに相手の男性は、一切言葉を発しません。叫び声も上げない所を見ると、完全に誰かに操られている様です。

 もしくは、何らかの術で理性を無くされ、ただの戦闘兵器になってしまっているのでしょうか?


 どっちにしても、ここから先に進むには、この集団を突破しなければいけません。

 それなら好都合ですね。捕らえられた妖怪さん達も、ここで助けちゃいましょう。

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