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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾肆章 虎擲竜挐 ~強者と強者の激突~
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第弐拾壱話 【1】 巨大竜巻で吹き飛ばせ!

 相手の怨念の糸をくぐり抜けながら、僕と龍花さんは、分陀利へと攻撃を仕掛けます。


「青竜刀、荒風纏い(あらかぜまとい)一心(いっしん)、不動の太刀!」


 龍花さんが途中で立ち止まり、しっかりと足を踏みしめたと思ったら、青竜刀を思い切り突き出しました。その瞬間に、もの凄い勢いの風が発生して、それが空間を貫いていきます。もう槍です、これ。風の槍ですよ。


 だけど、その強力な龍花さんの攻撃ですらも、相手は軽く腕を払っただけで弾き飛ばしました。

 どんな腕の力をしているんですか。これじゃあ、自分の妖術を吸収して攻撃する、僕の得意技でも弾かれそうですね。それならーー


 と、その前に。僕はまた縫い付けられちゃいました……。


 死角から怨念の糸が飛んで来ましたよ。流石にこれは避けられないです。


「黒羽の矢!」


 そして今回は、この妖術を吸収していないです。実は吸収して溜めているのは、別の妖術なのです。


 だからこの妖術は、使っても問題はない。

 自分の妖術を吸収して溜めている間は、他の妖術を使っても平気だけど、その間は別で溜める事が出来ないので、あんまり連発していられません。


「さてと~そろそろ飽きてきてしまったので、これで終わりにしましょうか」


 すると分陀利は、両手を胸元まで上げ、まるでその先に人形を吊しているかのようにして、全ての指を下に向けました。その瞬間……。


「椿ちゃん、後ろ!」


「大丈夫です、わら子ちゃん。気配で気付いています!」


 突然一斉に、横の個室の扉が開く音がしたからね。何か出て来たのは分かっていました。

 多分、ここの地獄で罰を受けている、沢山の亡霊達さんですね。しかも凄くやつれていて、物凄く嫉妬した様な目を向けています。


 だけど、所詮は亡霊です。僕にはもう1人、強い味方がいますから。


「ムギュゥゥッ!」


 そして、僕が肩にいたレイちゃんに目を向けると、レイちゃんはそれに応える様にして、うなり声を上げました。すると、僕に向かっていた亡霊達が、激しく吹き飛びました。

 だけど、恐らくこの亡霊達は、ただの目くらましですよね。これで決着を付けようなんて、この鬼は考えていませんでした。


 僕の目の前に突然、分陀利が現れ、僕を殴ろうとしてきます。しかも、渾身の力を込めて殴ろうとしていますね。


「くっ……!! うぅぅっ!!」


「あら。私の渾身のパンチを受け止めるなんて」


 確かに、これは相当な力だと思います。思い切り後ろに下げられましたからね。

 だけど、足は地面にしっかりと付いていたので、吹き飛びはしていないです。腕が痛いですけどね。白狐さんの力が無ければ、完全に折れていました。


「椿様に攻撃するとは……私は眼中に無しですか?」


「あら、あなたもいましたね。でも、そうですねぇ~確かにあなたはーー雑魚ですね」


「この……!!」


「挑発に乗ったら駄目です、龍花さん!」


 相手の言葉に対して、龍花さんが怒りのオーラを出していそうだったので、僕は慌てて止めました。

 だって分陀利は、常に糸を張っていて、僕達を待ち構えているのです。


 これを何とかしないと、僕達に勝ちはないですよ。


「椿様……すいません」


 僕がそう言った後、龍花さんが申し訳なさそうにしてきます。

 そんなに落ち込まなくても良いのに、って毎回思うけれど、龍花さん達4人は、自分達の力に絶対の自信を持っています。それを雑魚と言われて蔑まれたら、流石の龍花さんも怒っちゃうよね。


「冷静になれば、挑発だと分かることを……」


「その前に、龍花さん後ろ!」


「くっ?!」


 危ないですね。龍花さんの後ろから、怨念の糸が絡み付こうとしていました。

 龍花さんと一緒になって、僕も上に跳び上がるけれど、足に絡み付かれましたよ。意外とこの怨念の糸、回避が難しいです。


 至る所に怨念が渦巻くこの中で、四方八方から飛んで来るんだけれど、他の怨念で糸の方の怨念が埋もれてしまっていて、捉えられないのです。

 しかも、見えているものを避けたとしても、見えない死角からも飛んで来るので、結局捕まっちゃうんです。


「椿様。またですか。はぁっ!!」


 その度に僕は、龍花さんに助けられています。何とかして、この糸の攻略法を見つけないといけませんね。


「うぅ……ごめんなさい、龍花さん。この糸、気配を掴みにくいので、避けにくいんです」


「椿様。怨念の気配を辿っていても、それを対策されては意味がないでしょう? 常に動いておくのです」


「へっ……?」


 常にって……そんなの、直ぐにスタミナが切れて、バテちゃうんじゃないですか?


「良いですか、椿様。細かく動いておくのです、そうすればーーはっ?! しまった!!」


 あっさりと捕まっているじゃないですか!!

 さっきまではそれで何とかなっていたのでしょうけど、相手がやり方を変えて来て、怨念の糸を更に細くされていました。


 これ、肉眼でも殆ど見えない程になっちゃっていますよ!


「龍花さん!」


「くっ……!! この!」


 宙吊りにされた龍花さんは、青竜刀で自分の周りを斬りつけているけれど、全く切れていないのか、降りる事が出来ないみたいです。


「残念だけど、細くしたこの怨念の糸は、更に強度を増しているわ。簡単には切れないわよ」


「くそ……!」


 龍花さんの刀で無理なら、僕の妖術ならどうでしょう?

 ちょっと試してみましょう。そうしないと、龍花さんが危ないです。


「黒羽の矢!」


「あら……?」


 あっ、切れたのかな? 吊されていた龍花さんが落ちましたよ。


「おっと……! 助かりました、椿様。あなたの妖術なら切れるのですか……」


「そうみたいですね。自分でもビックリしました」


「…………」


 でもそれは、相手にも予想外だったらしく、分陀利は凄い形相で僕を睨んできます。

 そして、操り人形を動かす様にしながら、手を前に突き出してきて、その指を動かしてきます。


 これは……また亡霊ですか。と思っていたらーー


「きゃぁっ!! 体が勝手に?!」


「座敷様!?」


 玄葉さんが悲鳴を上げた瞬間、わら子ちゃんが僕の前に出て来ました。


 まさか、僕の仲間を盾にする気ですか?


「これならいくらあなたでも、そう簡単には……」


「黒羽の矢!!」


「えっ……?!」


 そんなの、いくらやっても意味がないですよ。

 わら子ちゃんの周りに、10本の矢を飛ばせばいいだけです。それだけで、わら子ちゃんはその糸から解放されますからね。


 さてと……僕の仲間に手を出した事、存分に後悔して下さい。


「妖具生成!」


 そして僕は、妖術で竹とんぼを出すと、それを回して竜巻を発生させます。だけど、ちょっと怒りで力み過ぎたみたいです。

 竹とんぼから、この地獄全てを包み込む程の、巨大な竜巻が生まれました。


「あっ……ちょっと……?! 流石にこれは……!!」


 その巨大さに、分陀利も戸惑っています。だけど、同時に僕も戸惑っています。


 大きすぎました……。


「つ、椿様。これは私達も……!」


「だ、大丈夫です! ギリギリで術式吸収すれば、何とかなります!」


 でも、今はまだ分陀利が吹き飛んでいないから、分陀利が吹き飛んでからにした方がーー


「椿ちゃ~ん!!」


『椿ちゃん!! まさかの幽霊の私まで~!!』


「わぁ!? カナちゃん!!」


 なんで君まで吹き飛ばされそうになっているんですか?! 君は今幽霊でしょう?! さっきは大丈夫だったでしょう?! わら子ちゃんと一緒になって、飛ばされそうになってるじゃないですか!


 まさか……幽霊でも何でも、攻撃が出来るようになっちゃっているんですか? 怒りで力んだだけで、そんな事になるなんて……。


「あ~もう! 術式吸収!」


 とにかく僕は、自分で出したこの巨大な竜巻を、黒狐さんから貰った能力で吸収していきます。

 ただその時、吸収されていくその風に乗って、分陀利が僕に向かって突進して来ました。


 それがあまりにも突然過ぎて、僕はまだ構えが取れていません。

 このままだと、相手の攻撃をまともに受けてしまいます。だって分陀利が、左手の鋭い爪を向けていて、それが目の前に迫って来ていますから。


「させません!!」


「龍花さん?!」


 だけど次の瞬間、僕と分陀利の間に龍花さんが割って入り、僕を庇ってきました。


 駄目……駄目です。このパターンは……!


 また僕は、大切な人を失ってしまう。


 その後、玄葉さんが展開した、玄武の盾の割れる音がする。

 やっぱりこの鬼の前では、玄葉さんの盾は意味を成していません。


「ぐっ……!!」


 そして苦痛の声と共に、龍花さんの体から血が噴き出してきます。

 だけど、その量が少ない……あっ、龍花さんは上手い具合に、青竜刀で相手の腕を切りつけて、攻撃の軌道を変えたのですね。自分の体に、貫通はさせなかったみたいです。


「椿様、今です! 先程吸収したものを!」


「えっ! あっ、はい!! 強化解放!」


 龍花さんが叫んできて、ようやくこれがチャンスだと気付きました。

 龍花さんが左手で、相手の右腕を掴んでいて、その場から逃げられないようにしていました。


 そして僕は、急いで龍花さんの肩口から、さっき吸収した自分の竜巻を放ちます。もちろん、強化されています。


 あの巨大な竜巻がね。


「あら? あらあらあらあら……!? ちょっと、これ……は、糸がぁぁ!!」


 流石にこの風の中では、糸を真っ直ぐには張れないし、更に風にあおられてしまって、自分自身の体に巻き付いちゃっています。


「あ……あぁぁ……!! ちょっと、これは……強力す、ぎ……きゃぁぁぁぁっ!!!!」


 そして分陀利は、絡まった糸で身動きが取れなくなり、悲鳴を上げながら、僕の巨大な竜巻に巻き込まれて吹き飛びました。

 今度は至近距離で、相手に向けて放ったから、皆を巻き込みません。でもあまりの勢いに、僕も後ろに吹き飛んじゃいました。


「わぁぁっ!!」


「ちょっ……!? 椿様!!」


 龍花さん、大丈夫です。竜巻は手から離しているので、着いては来ていません。

 ちょっと、その……放った直後の勢いで、吹き飛んだだけです。


「きゃぅっ!」


『大丈夫か?! 椿よ!』


 それに、僕にはちゃんと、助けてくれる人がいますから。


「ありがとう、白狐さん」


 そして、その尻尾で受け止めてくれた白狐さんに、僕はお礼を言います。やっと起きてくれましたね。

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