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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾肆章 虎擲竜挐 ~強者と強者の激突~
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第拾玖話 【2】 嫉妬の激走

 その後僕達は、朱雀さんを第八地獄に残し、次の地獄へと向かいます。


 後からやって来ている鞍馬天狗の翁達は、地獄を進む度に、仲間の救護をしなくちゃならないので、僕達に追い着いて来る事はないと思います。


 ごめんなさい……僕がもっとちゃんと、力を扱えていれば、こんな事にはならなかったのに。


『椿よ、また余計な事を考えて落ち込んでいるな?』


「わっ! 白狐さん?!」


 いきなり後ろから抱き寄せないで下さい。びっくりして、階段から足を踏み外しそうになりましたよ。白狐さんが抱き締めたから落ちないけどさ……。


『白狐。半分過ぎたぞ、代われ!』


『まだ半分じゃなかろう』


『今までの長さからして、もう半分は過ぎているぞ!』


『今までとは違うかも知れないだろう?』


 2人とも、低レベルな喧嘩をしないで下さい。

 そんなに僕を抱き締めたいのかな? それとも、ずっと酒呑童子さんを引きずっているから、流石に疲れたのかな?


 どっちにしても、ここから先はあんまりイチャイチャ出来ないからね。イチャイチャ何かしてしまうと……。


『ぬっ? また出たか、嫉妬の怨念が!』


 こうやって、黒いもやのような怨念が現れ、僕達を包み込もうとしてきますからね。

 白狐さん、構えないで下さい。これも幽霊と同じで、物理的な攻撃は一切効かないと思います。


『白狐、止めろ。物理攻撃なんて意味が無いだろう。椿、霊狐で何とかならないか?』


「幽霊ならまだしも、これはただの念なので、レイちゃんでは難しいですね」


 怨念は幽霊とは違って、何かに対しての執着心ですからね。魂なんか無いです。

 つまりレイちゃんでも、怨念に対しての攻撃や防御は出来ないみたいなんです。


『むぅ……それならどうすれば。このままでは、この階段から先に行けーー』


「椿様から離れたら宜しいのでは?」


 確かにその通りなんですよ。だから僕はさっきから、必死になって白狐さんから離れようとしているんです。それなのに白狐さんは、更に強く抱き締めてくるから、全く離れられないのです。


『いや、確かにその通りなのだが。離れたくても離れられん。椿が可愛すぎてな』


「僕のせいにしないで下さい!」


 そんな事をしている間にも、怨念が僕達に纏わり付いてきそうなんですよ! これでなにか起きたら、白狐さんのせいですからね!


『早く離せ、白狐!!』


『おぅっ?!』


 すると、いきなり白狐さんが、何かダメージを受けたような声を上げます。あれ? 顔を下に向けて、いったいどうしたのですか?

 僕と白狐さんの身長差で、見上げた僕の顔を、覗き込んでいるみたいになっています。

 ちょっと恥ずかしいんだけど、白狐さんの方は少し怒っていそうです。


 また喧嘩ですか?


『全く……嫉妬も程々にしろよ、黒狐よ』


『言っただろう。俺はまだ、諦めていないってな!』


 そう言えば、黒狐さんは白狐さんに何をしたんだろう? そう思って周りを良く見てみると、白狐さんの横に酒呑童子さんが倒れていました。

 確か酒呑童子さんは、黒狐さんが引きずっていましたよね?

 それが今は、白狐さんの横に……って事は、投げましたね? 黒狐さん。白狐さんの頭めがけて、酒呑童子さんを投げましたね。


 そして白狐さんは、ようやく僕から離れ、黒狐さんの元に向かって行きます。

 何にしても助かりました。怨念が途中で止まって、そのまま戻っていきます。


「龍花さん。このまま行きましょう」


『んっ? しまった! 椿を離してしまった!』


『よし、代われ白狐。次は俺が……』


 だから、イチャイチャしたらまた怨念が出て来るってば! 

 とにかく、今度は黒狐さんが僕を抱き絞めようとして来たので、それを全力で回避します。

 真っ直ぐに突っ込んで来ただけだったから、上に跳び上がれば避けられます。


『何故だ?! 椿!!』


「イチャイチャしたら怨念が出て来るって言っているでしょう! それなのになんで、必死に抱き付こうとしてくるんですか?! いつもは抱き付いていなくても平気でしょう?」


『『禁断症状が出る!』』


 2人揃って言わないで下さい! そして2人一緒になって、僕の方へにじり寄らないで下さい!


『分かるか? 椿よ。禁止されるとな、余計にそれをしたくなると言うものなのだ』


「2人とも守り神でしょう?! ちょっとは自制して下さいよ!」


『妻に限りーー』


『ーーそれは適応されない!』


「適応して下さい!」


 もう2人の目が危ないです! このままだと、次に捕まったら、僕はもう逃げられないかも知れません!


「お、怨念に何されるか分からないんですよ?」


『それでもだ。次の地獄をクリアするまで、気軽に椿とイチャイチャ出来ないと思うと、我慢が出来なくなるのだ!』


『だから、抱き絞めさせろ!』


「わぁぁぁあ!!」


 何だか2人がおかしいです。もしかして、もう次の地獄の能力にやられたんですか?!

 とにかく僕は、猛ダッシュで階段を降りて行きます。今の2人に捕まったらマズいです。


「あっ!? ちょっと、椿様! またはぐれますよ!」


「そんな事よりも追うぞ! 龍花!」


「2人とも! 酒呑童子さんを放ったらかしだよ~!」


「くっ、やむを得ん。私の玄武の盾で運ぶ。急げ!」


 何だか龍花さん達も慌てているけれど、僕はそれよりも、この2人から逃げないと!


 だけど、そうこうしている内に、次の地獄が見えてきました。

 今回は、扉が無いですね。本来ならここで待って、ちょっと様子を伺いたかったんだけれど、そんな事をしている場合じゃないので、もう突入です!


 すると、丁度その地獄の真ん中辺りに、誰かが立っているのが見えました。


 でもそこは、僕の進行方向です。邪魔です!


「やれやれ。こんな所まで来るなんてね。それで、ここの地獄の能力はいかがかしら? この第九ーー」


「どいてぇ!!」


「ーーって、きゃぁぁぁあっ?!」


 なんだか鬼っぽかったけれど、関係ないです。

 僕は尻尾をハンマーにした後、それを振り払って相手を吹き飛ばしました。


「椿様!? 今、なにを吹き飛ばしたんですか?!」


「知りません!! そんな事より龍花さん、白狐さん黒狐さんを止めてぇ! これ絶対に、この地獄のせいだって!」


 目が正気じゃないんですよ!

 絶対に、あの嫉妬の怨念にあてられたんですよ。今の2人に捕まったら、どれだけ愛でられるか分からないのです。僕の心臓の方が持たないよ。


「ふふ……ふふふふ。あ~ら、大変そうね。そう、ここ第九地獄は、正にーー」


「だから邪魔です!」


「きゃわぁぁぁあっ!?」


 また僕の目の前に誰か立っていましたよ。しつこいので、再度ハンマーで吹き飛ばしました。


「椿様! そろそろ気にされた方が良いのでは?!」


「それどころじゃ無いってば!!」


 すると今度は、逃げまくる僕の足が、まるで地面に引っ付けられたかのようになってしまい、一切動けなくなりました。


 というか、何これ? 良く見たら、足が地面に縫い付けられている?!


「もう……ポンポンポンポンと、出会い頭に人を吹き飛ばさないでくれるかしら? あぁ、私鬼だったわね」


 これ……黒い糸で足を縫い付けられているけれど、全く痛くないです。

 何でなんだろう……? なんて事を考えている場合じゃないんです。白狐さん黒狐さんが、僕の後ろにいます!


『ようやく止まってくれたか。椿よ』


『よし、ではまず俺から……』


『黒狐よ、我からだ!』


 どうしよう……このままだと、2人同時に抱きしめられそうです。そんな事されたら、戦闘どころじゃなくなっちゃいますよ。


『黒狐よ、こうなれば……』


『そうだな。いち早く抱きしめた者が、椿を独り占め出来るといこうか!』


 そして遂に、2人は僕を抱き締めようと、同時に腕を広げ、こちらに凄い勢いで突撃してきます。

 この状態で何とか……と思っていたら、上半身は動かせる事に気付きました。それなら……!


「よっ……と! たぁっ!!」


『うぉっ!』


『なにっ?!』


 そして僕は、後ろから迫って来ていた2人の腕を咄嗟に掴み、思い切り背負い投げのようにして、前方に投げ飛ばしました。


「えっ? ちょっ?! またぁぁっ?! きゃあぁぁぁっ!!」


 それよりも、なんでこの鬼は避けないのでしょう? 僕が投げ飛ばした白狐さん黒狐さんにぶつかり、そのまま後ろに吹き飛んで、仰向けになって倒れてしまいました。

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