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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾肆章 虎擲竜挐 ~強者と強者の激突~
421/500

第拾捌話 【1】 戦闘時にスカートはダメでしたね

 美形の人が醜くなったという亡霊達が、レイちゃんを捕まえています。

 レイちゃんは霊的なものなら、その攻撃を防いだり弾いたり出来るのに、何故かそれが効かないみたいで、呆気なく捕まっちゃってます。


「ムキュゥ……!」


 だけど、直ぐに助けるからね、レイちゃん!


「神風の禊!!」


『なんだ、この風?!』

『ちょっ……吹き飛ばされる!』

『うわぁあ! 命令通り、このヘンテコな生き物を捕まえたのに!』


 もう突風です、この妖術は。浄化するのと一緒に、派手に亡霊達を吹き飛ばしてしまいました。

 レイちゃんも一緒に吹き飛んだけれど、そこはもう僕と一緒に今まで過ごしてきた、経験の差ですね。

 僕の浄化の風を、体をしならせながら受け流し、更にその風に乗って、フワフワと僕の元まで帰ってきました。


「ムキュッ!」


「はい、お帰りレイちゃん」


 そしてそのまま、僕の腕の中です。


「ちっ……全く。使えない奴等だな。元の姿に戻りたければ、俺の言う事を聞け。そして俺の与える任務を、難なくこなせ!」


 その拘物頭の言葉で、全て分かりましたよ。

 この元イケメン達や美女達の亡霊は、この鬼にその姿を変えられるついでに、ちょっとした力を与えられているみたいです。ただそれは、レイちゃんの能力を突破する程の力ですね。


「レイちゃん、僕の肩に引っ付いておいて。美形を憎む亡霊の方はなんとか防げても、拘物頭によって醜くされた亡霊の方は、どうやら特殊みたいです」


「ムキュッ……」


 すると、僕の言葉にレイちゃんは大人しく従い、僕の肩に乗り、首に巻き付いてきました。

 フワフワで温かくて、結界でも張ってくれているのか、なんだか安心感があります。


 だけど、この足を掴んでいる亡霊だけは、何ともならないようですね。

 それなら浄化の炎で……と思ったけれど、ここでもあんまり神妖の妖気を使いたくないです。


 温存はしておきたいし、何より暴走が怖いのです。

 今はちょっとずつ小出しにしているので、どうにかなってはいるけれど、その内に蓋が壊れて、一気に溢れ出してきたらどうしようって、そう考えてしまいます。


 すると突然、僕の頭上から声が聞こえてきます。


「椿様! 炎が広がったら、そこから跳び上がって下さい!」


 この声は、朱雀さん?!


 あっ、そうか。朱雀さんは、朱雀の羽で飛べるんだ。つまり、この黒いのを回避していたのですね。それで、炎が広がったら跳び上がる、という事はーー


「ーーって、わぁっ!?」


 やっぱり!! 炎の矢が僕の近くに打たれたと思ったら、そこから一気に炎が広がり、地面に広がる黒いものを燃やしていきました。


 その熱さのあまり、僕の足を掴んでいた亡霊が手を離したので、ギリギリで朱雀さんの炎を回避出来ました。ただ……。


「ぎゃんっ!?」


「椿様……それは跳びすぎです」


 咄嗟だったので、その辺りの調整まで出来なくて、思い切り天井に頭を打ち付けてしまいました。


「う~いたた……もう、朱雀さん。こういうのは早めに言って欲しかったです」


「そうしたかったのですが、あんまり早くに言ってしまうと、奴等が逃げてしまう可能性があったので……」


 朱雀さんが、地面へと落下していく僕を掴み、申し訳なさそうにしながら言ってきました。

 ただ、その……尻尾は掴んで欲しくなかったです。なんでそこなんですか? 格好も、とても恥ずかし事になっちゃいましたよ。


 でもそのお陰で、下で起きている事が良く分かりました。


 地面に広がっている黒いものが動いて、朱雀さんの炎を避けていっています。まるでアメーバみたいですね。なんですか、これは。


「これが、あの鬼の能力なんでしょう。自ら罰した亡霊を集めて固め、そして使役する。とにかく、椿様だけでも動けるようになってくれて良かったです」


「えっ? あっ……! 皆!」


 どういうことかと思って皆を確認すると、地面に広がる黒いものから出る腕に、まだ捕まったままでした。


『ふむ……だが、所詮亡霊。座敷わらしの幸運の気を前に、手出しが出来ないようだな』


『白狐、それよりもだ。今の内に、上を見ておいた方が良いぞ』


『うん? おぉ! 淡いピンクか……これは中々』


『わぁ……椿ちゃんが女の子っぽい下着を』


「まぁ、女の子だからね。だけど、椿ちゃんはどちらかというと、白の方が良いような」


 何を見ているんですか! どうも皆の視線がおかしいなと思ったら、全員僕のスカートの方を見ていました。朱雀さんに尻尾を掴まれて、そのまま持ち上げられているから、お尻が上になっているんですよ。だから、スカートが捲れ易くて……というか捲れてる!?


「朱雀さん! 尻尾じゃなくて、腰とか肩とか、もうちょっとその辺りを持って飛んでくれませんか!? あと、もう少し前に!」


「あぁ、すいません。急いでいたもので。よいしょっ。しかし、下着のチョイスは良いですね。私は悪くないとーーいや、今はそれ所じゃないですね。それと椿様……これ以上前に行くと危険です」


 本当だ。地面に広がる黒いものの中から飛び出した亡霊達が、僕達の目の前に迫って来ていました。

 朱雀さんは僕の脇に手を通し、それで持ち上げて飛び続けてくれているけれど、このままだと捕まる。


「それじゃあバック、バックです! あと、皆まだ見上げてる! この体勢でも、下からだと下着が見えちゃう!」


「椿様。それは、あんまり意味がないです。後ろからも来ています。それに、戦闘になるのは分かっていたはずなのに、何故そのスカートタイプにしたのですか?」


 正論です……正論なんですよ。戦闘中に下着を見られたくないなら、スパッツを履くか、ズボンにすれば良いだけなのです。

 でも、僕はここに来るまでずっと、色々な事を考えていたのです。だから……そこまで頭が回らなかったのです。


 そして今、ちょっと前の僕を恨んでいます。なんでスカートにしたのかな……もう無意識だよね。


「こうなったらもう、恥ずかしがらずに覚悟を決めて戦って頂かないと……」


「……分かっています。分かっていますよ、朱雀さん」


 そうは言っても、空中で僕を担いだまま攻撃するのは、至難の業だと思います。

 それに僕も、上空からの攻撃のパターンがそんなにないんです。それなら……。


「朱雀さん。一旦僕を、下に降ろして下さい!」


「なっ……?! しかし、椿様……」


「早く!」


「くっ、分かりました!」


 その後朱雀さんは、僕をそのまま下に落としてくれました。

 あの……降ろしてって言ったよね? 落としてじゃないのです……でも、良いです。それでも何とかなります!


「影の操!」


 そのまま僕は、落下しながら影の妖術を発動します。

 ただ、下は黒いものが広がっていて、僕の影はその黒いのに飲み込まれています。


「あん? 無駄な事を。お前の影は、俺の出した亡霊のオーラに覆われてーーなっ?!」


 誰が僕の影を操ると言いました?


 操ったのは拘物頭の影で、その影の腕で相手を掴み、そして思い切り僕の方目掛けて放り投げたのです。


「うぉぉおお!? ふ、ふははっ! 馬鹿な事を、わざわざ自分の方になげっーー?!」


 喋る前に攻撃をしたらどうでしょうか? あまりの展開に、冷静を保つのがやっとでしたか?

 とにかく僕は、吹き飛んできた拘物頭の顔を蹴り、地面に叩きつけます。その時、拘物頭を踏み台代わりにして、僕は上に高く跳び上がりました。


「くっ……!! しかし、この程度で俺はーーうぉぉ!っ!」


 そして今度は、この地獄の壁の影を使って、拘物頭を捕まえ、また僕に向かって放り投げます。


「き、さまぁっ! まさか!」


「ほっ!」


「ぐぉっ?!」


 そして、また地面に落ちていく僕は、拘物頭を蹴りつけ、踏み台のようにして、また上に跳び上がります。

 黒いものの上に落ちたら、拘物頭の影も消えちゃうし、そうなったら別の影を使わないと駄目ですからね。


 どっちにしても、こうやって繰り返していけば……。


「ぐぉっ!! この!!」


「ほっ!」


「くそ……がぁっ!」


「よっと……!」


「がはぁっ! 何度も俺を踏み台に! ついでに攻撃まで! この野郎!」


 僕の影の妖術に捕まった時点で、このループは確定したけれど、思った以上にダメージを与えられていない気がします。


 どうしよう……そろそろ僕の方が疲れてきました。


 この辺りで威力の高い攻撃をしないと、こっちの蹴りを受け止められてしまうかも知れません。

 だから僕は、ちょっとずつ火車輪に妖気を流し、準備をしていきます。


 これで倒せなければ、後は朱雀さんに託すしかないけれど、朱雀さんは朱雀さんで、大量の亡霊と戦っています。

 ただ、亡霊さんには攻撃が当たらないので、凄く苦戦していました。


 早くこっちを何とかしないといけません!

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