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僕、妖狐になっちゃいました  作者: yukke
第拾肆章 虎擲竜挐 ~強者と強者の激突~
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第拾伍話 【1】 乙女の唇と心

 何とか第六の地獄も突破した僕達だけど、虎羽さんのダメージが思っていた以上で、これ以上進むのは危険と判断され、例によって後からやって来る他の皆に、救出して貰う事にしました。


「し、しかし……座敷様の守りが薄く……私なら、この命を投げ捨ててでも……」


「虎羽さん。私の言う事を聞いてくれないの? 虎羽さんが死んだら、私、私……」


「わわっ! ざ、座敷様! 不機嫌にならないで下さい。いっつつ……わ、分かりました……玄葉がいれば、座敷様の守護は出来ましたね」


 わら子ちゃんの不機嫌そうな顔に、虎羽さんが慌てています。確かに、今ここで不幸の暴走が起こるのはマズいですね。


 そして、わら子ちゃんは虎羽さんに向かって、にっこりと微笑むと、そのまま僕の後ろにいる、龍花さん達の元に向かいます。だけどその時……。


「そっか。龍花さん達には、こういう手を使えば、言う事を聞いてくれるんだ」


 わら子ちゃんが悪い事を覚えちゃいました。いったい、守られているのはどっちなのでしょう?


『それよりも椿よ、黒狐に何を言った?』


「ん~? ナニモイッテマセンヨ」


『誤魔化すな、目が泳いでおる!』


 あの後黒狐さんは目を覚ましたけれど、フラフラとしていて、何処かうわの空なんです。お願い、戻って来て黒狐さん!


『言え、椿! 黒狐に何を言った?! まさか、安産型かどうか気になるから、確かめてくれとか言ったんじゃなかろうな!』


「何で知っているんですか?!」


『やっぱりか……虎羽から聞いたぞ』


 虎羽さんが言っちゃっていました!! 何で言ってるんですか?!


「ふふ、報告は正確に……私は真面目ですから」


 あっ、まさか。あの事を根に持って? 嘘でしょう……。


『全く。触って確認をしなくても、椿は安産型に決まっている! このお尻の形は間違いなーーへぶっ!』


「何で見て分かるんですか! 白狐さんの変態!」


 思わず自分の影の腕で、白狐さんの頬を引っ張ったいてしまいました。でも、今のは白狐さんが悪いです。


『す、すまぬ椿よ!』


 全く……でも、2人の変態度は前から分かっているし、今更なんですよね。

 それになんだかんだ言って、必ず僕の左右に2人が立っていて、前後左右のチェックを怠らないんですよ。


 僕はもう、そこまで守って貰う必要は無いですよ。それなのにこうやって、まだしっかりと僕を守ってきます。だから選びにくくなっちゃったんですよ。


 駄目ですよ、僕。黒狐さんには妲己さんがいるんですから。早く助けて上げないとね。


「……?」


 だけどそう思う度に、自分の胸が痛いです。

 何でなの? 白狐さんの方が優しいし、たまに抜けている所なんかも、良いと思っているのに……。


「椿、黒狐が気になる?」


「いや、いつまでぼうっとしてるのかなって思って」


 危なかったです。雪ちゃんが突然、僕にそんな事を言ってきました。

 多分、僕がじっと黒狐さんを見ていたのに、気付いていましたね。


 うぅ……無意識でも、黒狐さんに視線がいっちゃっています……。


『ぬぅ……またこの迷路か』


 そして、次の地獄に続く階段を降りた後、その前方にまた、あの迷路が現れました。


 ここの地獄は、どれだけ僕に試練を与えてくるんですか。


『椿ちゃ~ん?』


「カナちゃん、分かってる。分かっていますよ。それでも、今のままじゃこの迷路を消せないんです」


 すると、僕の言葉に白狐さんが反応し、僕の肩を掴んできます。


『椿、ここを突破する方法が分かっているのか? それならば……』


 ドキドキしないで、僕の心臓。白狐さんに対しても、こんな反応をしてしまって、僕ってば気が多いのでしょうか? それとも、ただ優柔不断なだけ? う~ん……。


 それよりも、カナちゃんは言ってないのですか? この迷路の突破方法を。

 そんな目でカナちゃんを見ると、明らかに目を逸らされました。これは、説明していないですね……しょうが無いなぁ。


「あの、その……これは、迷い路って言うもので、何かに迷っている人は、ここでその迷いを捨てないと、先に進めないのです」


『迷い? 我等が迷っているのか?』


「いや、あの……多分僕です」


『むっ? なる程。我と黒狐の事か……まだ悩んでいるのか?』


 うっ……ちょっと白狐さんの口調がキツいかも……だけど、当然ですよね。せっかく白狐さんを選んだのに、こんなの失礼ですから……。


「その……白狐さんを選んだのだって、黒狐さんには妲己さんがいるからで……あの、もちろん。白狐さんも好きなんだけれど、黒狐さんはどうしても、妲己さんの事があって、せっかく2人は両想いっぽいのに、僕が居たら邪魔だろうなって、そう思っちゃって……」


『なる程。完全に心を決めたという感じでは無いのか。それでは決心した所で、また直ぐ揺らいでしまうのは当然だ』


 そうですよね。今まさに実感しています。どうしよう……どうしたら決められるのでしょう?


『仕方ない。椿よ……』


「えっ? ふむぐっ?!」


 すると、隣にいた白狐さんが僕の顎に手を当て、自分の方に顔を向けると、そのまま口づけをされてしまいました。


 ちょっと、皆が見てるってば! しかも、舌……舌まで!


「ん~! ん~!!」


 とにかく僕は、必死で白狐さんの胸を叩くけれど、白狐さんは止めません。

 そしてたっぷりと、1分間は口づけをされた後に、ようやく口を離してくれました。


「ぷはっ、はぁ、はぁ……な、なんで急に……」


『ん? これで決められるかと思ってな。たっぷりと愛情を込めてやった』


 確かに、いつも以上に長いし濃厚でしたよ。お陰で頭がクラクラする。酸欠かな?


『待て、白狐。こんな事で決められては困る』


 すると、急に我に帰った黒狐さんが、僕の肩に手を置きます。待って、嫌な予感が……。

 急いで逃げようかな~と、そう思った次の瞬間、黒狐さんが僕の向きを変え、自分の方に向けると、白狐さんと同じようにして、僕に口づけをしてきました。


「んぐぅっ!!」


 逃げようとする間もなく、あっという間でした。

 因みに黒狐さんは、白狐さんよりも更に激しいキスをしてきています。


 僕には早い。僕にはまだ早いです、それ!


「ぷぁ……はぁ、はぁ。けほっ」


『ふふ。さぁ、どうだ! 気持ちが変わったか? 椿!』


「ふへぁ……」


 黒狐さんの馬鹿……これはやり過ぎです。ろれつが回らないですよ。

 だけど、それを見た白狐さんは、また僕に顔を近付けてきます。


『ぬぅ……決まらないようだな。それならばもう一度!』


「へっ、いや、違ーーんむっ!!」


 また白狐さんが僕に口づけを……しかも、黒狐さんに負ける訳にはいかないと、さっきりよりも更に濃厚で……僕の視界がぼやけていくよ。


「ぷはっ! はぁ……はぁ……」


『ちっ、負けるか!』


「へぁ? ちょっ……! んんっ!!」


 そして、今度はまた黒狐さん。さっきよりも激しくて、何だか変な気分になってきます。これ以上は危ないです!


「ぷはっ、はぁはぁ……」


『くっ、黒狐! お主の好きにはさせんぞ!』


「だから……待っーーんむっ?!」


 いつまで続くんですか、これは! 僕の身がもたないですよ!

 それなのに皆は、持参した水筒のお茶で休憩しないで下さい! こっちを助けて下さい!

 あっ、ちょっと、ねぇ……お菓子まで出て来ました。あの、ここは地獄ですよね? 敵の本拠地ですよね?! 僕達少し、ふざけすぎていませんか?!


「ぷあっ……はぁ、はぁ」


『やるな白狐……しかし負けーー』


「お、乙女の唇と心を、弄ばないでぇ!!」


『ゲフッ?!』 


『ぐぉあ!!』


 もう何回目かも分からないキスをされ、僕は体の力が抜けてしまい、地面に崩れ落ちそうになったけれど、何とかそこは踏ん張って、影の妖術を発動し、白狐さんと黒狐さんのお腹を思い切り殴りました。


 僕の力は強くなっているので、結構痛いですよ。


『おぉ……椿よ、こんなに強く……』


『わ、分かった。俺達が悪かった』


 本当ですよ。悪ふざけが過ぎましたね。


 だけど今ので、やっぱり白狐さんが良いかな。と思っちゃいました。

 黒狐さんはやっぱり、乱暴過ぎますよ。もう少しこっちの気持ちを考えて欲しいですね。


「あっ、消えた」


 すると、僕達の前にあった迷路が、突然姿を消しました。

 それを見て、白狐さん黒狐さんは目を見開き、そしてお互いを見た後に、僕の方に向き直りました。


『椿よ。あれが消えたという事は、選んだのか?!』


『どっちだ!』


「内緒で~す!」


 乙女の唇を弄んだ罰です。そうやってモヤモヤしながら、どっちを選んだのか気になっていて下さい!

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