95/95
エピローグ
あれから十年が経った。
事態は非常にゆっくりとしか進んでいないが、世間からの興味はすでに薄れ始めていた。適応とは恐ろしいものだ。いや、あくまでも他人事だからか。無理もない。僕だって赤の他人のことをいつまでも追い続けられるほどの余裕はない。
あれだけしつこく行われていた僕に対する検査も、普通の人と大した違いがないと分かり始めるとどんどん少なくなり、今では月に一回の定期検診だけになった。キタガミさんが来ていたときと同じだ。
ノリと僕は、それぞれで生きていくことを選んだ。
たまに文通をするのみ。殺人事件として異例の執行猶予がついてからも、ノリは何かと大変そうだった。だが、ただ受動的に生きているわけではなく、本を出版するなど色々と動いているようだ。僕もノリの本は買ったが、なかなか読む勇気は出せていない。
僕の世界は、僕の中にあるまま。でもまたひとつ、世界と世界が交錯した。
この手に繋いだ小さな命との間に。




