実と文昭 その二
「……僕の意思なんて、関係ない。結果的に、僕は自分の研究で、自分の我儘で、人を死なせてしまったんだ」
「文昭さん……」
「……それだけじゃない。僕は、君にも……その片棒を担がせてしまった。罪の意識を植え付けてしまった」
文昭さんのその言葉を聞いて、私は罪悪感を覚えた。文昭さんの言ったような『罪の意識』に苛まれたわけではない。文昭さんが言うほどに罪の意識を覚えていない私自身に、罪悪感を覚えたのだ。
無論、まったく罪悪感がなかったわけではない。伊東さんの前だから取り繕っているわけではない。確かに、罪悪感はある。私が文昭さんの研究に合流したときには、もう人体実験は必要なかった。もうすでに、クローン研究までもが完成していたから。
だからといって、私は関わっていないなどと言うことはできない。そのことは理解していたはずだった。
しかし、私は文昭さんが思うほど、研究への罪悪感がなかった。もとはといえば、文昭さんに近づきたいという、邪な理由だ。
私の遺伝子も調べてみたら、共感性の欠如だとか、そういう問題があるのかもしれない、などと本気で思った。科学の道を志していたとはいえ、私と文昭さんでは能力にも知識にも雲泥の差がある。文昭さんに引っ張られてしまうのは、無理もないことだったと思う。文昭さんに、というよりは、文昭さんの研究に、だろうか。文昭さんがどんな想いで研究に臨んでいたのかなど、私なんかには推察することすらできないから。
それ以降、私はただ、文昭さんに無言で寄り添い続けた。どんな言葉も、文昭さんにとっては意味を成さないと思った。
キタガミさんに協力してもらって、私はタツくんとノリくんのデータを収集し、健康状態や発育に問題がないかを調べた。
タツくんとノリくんの二人が知りたがっている、クローンをつくった本当の目的については……私は直接文昭さんに訊いたわけじゃない。文昭さんの精神状態はかなり危うくて、そんなことを訊ける状態でもなかった。
でも、だからこそ、私は本当のことを知っている。唯一、文昭さんの本心に触れられた部分でもある。
文昭さんは、自分の病気にはほとんど無頓着というか、気にする余裕もない様子だった。それでも月に一回は健康診断に行っていたのに、亡くなる一年ほど前からは、それも行かなくなった。
思えばその頃から文昭さんは、己の死期を悟っていたのかもしれない。これ以上は、無駄な延命にしかならないことも。
このまま病院に通い続ければ、いずれ入院することになる。文昭さんはとっくに、入院しなければならない状態だった。でも、それを拒否して自宅療養を続けていた。けれども、もう文昭さんが拒否すると言っても、医者も簡単には首を縦には振れない状態にまで、文昭さんの病気は悪化していた。
病名など、詳しいことは知らない。もともと心臓に持病があり、それを拗らせた形だと聞いているが、どこまで本当かは分からない。私は、文昭さんにはもっと色々な重い病気があったのではないかと思っている。今となってはもう、分からないけれど。
ともかく、研究所がある以上、文昭さんは入院するわけにはいかなかった。まだ文昭さんには、やり残したことがあったからだ。




