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河童様  作者: なぁ恋
河童の存在価値
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河童の存在価値。



常に狙われる存在。

稀な存在。


河童のその価値は誰もが命をかけ奪い合うのもいとわない。


仲間内で戦いを呼ぶ忌みな存在。



その存在価値は、希少で高価。

だが居てはならぬもの。


だから河童は隠れた。

呼び出せる契約を人間と交わす事で懐かしい人間界との係わりを保って。


河童が生きる為の知恵。




だが、それは諸刃の剣。

 

 

  

 

*朗side*



優月を見送り、満足感で笑みが零れる。

見るからに納得出来ていない優月も、一月もあれば口説く事も可能だろう。


“口説く”ねぇ。自分の考えに思わず笑う。


河童と言う存在は近年は稀。優月の質問。父親の居所は、実際に判らない。

十数年前、人間に呼び出されたまま行方知れずになった。

生きているのか、それとも死んでしまったのか……それも知りたかったから、優月の呼び出しは有り難かった。


父はよく言っていた。

河童は妖怪仲間の中で稀な存在。

乱獲され、極端に数が減って居ると。


人間で在った母を仲間に引き入れたのもそう言った背景があった。

二人は仲睦まじかったと、うっすらとした記憶はある。

なのに母は、いつの間にか居なくなって。それを父は探しに行っていたのが人間の世界に通っていた本当の理由だろう。


私に母親の記憶はほとんど残ってはいない。

顔は似ていたと父は切なげによく言っていたが。ほとんどが人間に近い姿の私はそうだろうと解っていた。


私の“河童の力の源の皿”は体内に有る。

それを溶かし与えた優月もその皿を体内で育てて居た。

有する時間は十年。

優月に体の変化が現れる時期にあった。

だから迎えに来たのだ。


あの混血龍の物騒な物言いも、河童を体内に取り込めば濃い万能薬を一度に摂取出来るのが答え。

人間の側に近い混血は純粋妖怪よりもある意味優しいから言葉にしたとしても実行はしないだろう。

 

  

 

妖怪の仲間意識は強く。

混血妖怪は爪弾きにあう。

“混血”である事で理不尽な扱いを受け、響夜の様に人間界へ還された者も少なくはない。


それでも一部は残る事を許される。妖力の有無でそれは決まる。

―――のだが、“私みたいな者”を造れるのは河童のみ。


“混血で在ってそうでない者”


人間を仲間に引き入れた上で子孫を残す。

その様な芸当が出来るのは河童のみ。


優月も人間の姿のままで河童と成る。

彼に選択肢はない。



と、物思いに耽っていると、左目が痛くなった。


優月に何事かあったらしい。


“左目”は優月と私の“魂”で繋がった部分だからだ。


急いで彼の後を追う。





そうして、私の池の前で“化け猫”に捕らえられ傷付けられた優月を見留めた時、優月が私の名を叫んだ。


「朗!」と。


それは彼自らが心から私を呼んだ瞬間。


この恍惚感は何だろう?

不思議な満たされた感覚。


優月は私のものだ。

誰にも渡さない!

 

 

黒い化け猫が小さな優月の肩をえぐる。


苦痛に歪む優月の顔に、心が騒つく。

化け猫に対する怒りが静かに広がる。


「「河童ぁ……薬を薬をぉ寄越せぇぇ」」


化け猫は優月の初々しい薬に夢中になっていた。

薬の“元”である涙に。


予想すべきだった。

優月が襲われる確率を。


「私の許可なく私のものに触れるなど……許せないな」


化け猫が私の妖力に気付いて振り返る。


「「ほう―――河童。二匹居たのかぁ……珍しい。

稀な存在だと聞いて居たのだが―――……こうして、俺の目の前に現れたのは。俺が治る運命にあるからだろう」」


無駄な悪あがきだ。


「お前はもう死に直面している」


妖怪に転じた化け猫よ。

だが、死してから生への未練により変化した為に肉体が腐り始めていた。


万能薬はもとより死者には効かぬもの。


「残念だが、お前は死に逝く運命にある」


右手に在る私の池に指先で命令する。


水面が揺れ、大きな水玉を作る。



静かに確実にヤツを捕らえろ。


「私の優月を苦しめた。

その報いをその身に受けるがいい」

 

  

 

*優月side*



肩が痛い。

黒猫は容赦なく爪を食い込ませて来る。


でも、

“生きたい”だけ。


本当に本当にその気持ちが解るから恐怖よりも痛みよりも同情が心を占める。


朗が傍に居るから何故か安心出来て、冷静に黒猫を見れた。

半分削げた顔からは骨の白さが見え、崩れていく肉体が痛ましい。

こんな姿を見ても、腕に抱いた時の小さな今にも壊れてしまいそうな猫の姿の方が本当のこの子の姿だと感じて。


僕が護ってやらなきゃいけない。そう感じた。


強い何かを感じて目をやると、朗が冷たい目をしてこちらを見つめていて池に指を差した。


水が波打ち、丸い大きな水玉が宙に浮いて、黒猫にぶつかる。

あっという間の出来事で、肩の痛みがやわらぎ、いつの間にか朗の腕の中に収まっていた。


「「ギャアアァー!!」」


黒猫の悲鳴は水に消えた。顔を包み込んだ水玉が酸素を無くし、苦しみもがく。


「優月を傷付けた報いを受けるがいい」


朗の冷たい物言いに上向いて顔を見る。表情からは何を考えているか判らない。


でもまずは黒猫を助けないと!

 

 

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