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河童様  作者: なぁ恋
巡る世界
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禁忌を破ったのは、

妖怪側。


それは美しい娘だった。

娘もその美しい妖怪に好意を持った。


為るべくしてなった関係だった。


そうして産まれたのは、希望だったのか。



それは未だに解らない。

 



*********



 

*優月side*



地下室に暖かい風が吹き荒れて、クロスを抱き締めて倒れない様身体を伏せる。


一瞬の出来事。


風が止むと、

白い髪に変身し、剥き出しになった上半身から湯気をあげた先輩の背中が見えた。


先輩の前に姉ちゃんが長い髪をなびかせて直立してた。


「「あぁ……あああ―――……」」


葵が唸る。

顔を上げて二人を凝視する。長い髪に隠れていた顔が風に煽られ露になった。


鈍色の肌がひび割れて、中の白い骨が覗いていた。


限界だったんだと改めて判った。


妖怪を人間にする。

そう姉ちゃんは言った。


そうする為に“龍の宝珠”に成るって……。

何が起こるか心配で、けど、確かに感じるおばあちゃんの気配に安心もして、見守るしかないんだと覚悟した。


何かあれば、手助けするんだって身構えて。


狭い地下室が何倍にも大きく感じられた。



早く助けたい。

僕の中の血が沸々と沸き上がる。

..

何かが目覚め様としているのが解った。


それは、僕の人生が変わる瞬間。


姉ちゃんが目覚めた様に、僕の完全なる目覚めが急速に始まっていた。

 

 

 

姉ちゃんの額が光りだす。それは星の様に仄かな慎ましやかな光り。


龍の鱗が光ってるんだ。


そして、先輩の全身が同じ光りに包まれて、形を変える。

この狭い地下室が一杯になるくらいに光りは伸びて、先輩が変化した。


長い尾を持つ白い龍に。


キラキラ光る鱗が全身を覆った蛇の様な躰。白髪はその背中を沿って長く揺れて、頭の左右に枝の様に先が丸く伸びた角が他と同じ様に白く輝いていた。


長い睫毛に縁取られた眼は、黒い眼球に白い瞳。


恐ろしくも神々しいその姿に息を呑む。


「成人した」

いつの間にか傍に居た朗が呟いた。


「大人になったの?」

「まあ、そんな感じだ」


長く生きてるのにまだ子どもだったって考えると、何か変だけど、龍の成人の条件は龍の宝珠を手に入れる事。


そうなると、姉ちゃんは“珠”に成っちゃったの??


姉ちゃんの行方を心配して目を凝らす。


ちゃんと姉ちゃんの姿でそこに居た。

安堵の溜め息を吐くも、これからどうなるのか想像も出来なくて、知らず朗に寄り掛かって居た。

 

 

*優星side*



温かい力が額から全身に広がる。

まるで羽根を広げたみたいに背中から力が突き抜けて、その力が響夜くんに届いたのを感じた。


解る。


これが“ルージュ”の能力。

響夜くんは、成人龍に成った。


ふわりと足が地に付き、しっかりとした感覚が身体に戻って来た。


手にした閻魔帖が示す力の使い方。


「響夜くん。頑張ろう」

「ああ。優星」


何だろう。

この一体感。

響夜くんと私が、まるで一人の人間に成ったみたいな感覚。


これは癖になる。

まるで快感。


「鬼の妖力を残らず吸い尽くすわよ!」


今なら何でも出来る気がする。

響夜くんとなら、出来ない事はない!


額に集まる力を鬼にぶつける。


「「グワァッ!!」」


大きな悲鳴が響き渡る。

三本角がひび割れ、布が剥がれる様に皮膚が崩れ落ちて行く。

 

 

それは水の流れの様に止まらない。

鬼の外側が崩れ落ちたと同時に河童達も剥がれ落ち、河童を長い尾でそっと受け留めた響夜くんが朗に渡す。


私は力の為すがまま、鬼の妖力を吸い取る。

それはそのまま響夜くんの力に成る。


「「う―――ガアァ―――……」」


それはまるで断末魔の叫び。


そして唐突に声が止み、“鬼火”が消えた。


鈍色の鬼が居た場所に肌色の裸体男の子が佇んで居た。


3歳くらいの男の子。

その身体は傷だらけで痛々しかった。


ゆづがその子を抱き締めた。


「大丈夫だよ」

優しく言って、両手から流れる緑色の液体をその子に擦り付けた。


「うぁ……あああんっ」

その子は泣き始めた。


「―――……あさん。母さんっ!!」


母を呼ぶ小さな子ども。

聞こえてる?


先生。


 

*優月side*



葵が崩れる。

ひび割れた皮膚が落ちる時、朗の両親も解放された。


先輩が受け留めて朗に渡した。


僕は葵に集中する。


叫び声が響き。

躰が崩れる。

崩れた鈍色の肌の下、小さな姿が見えた。


“鬼火”が消えて、鈍色の土くれの中、露になった小さな葵。


その小さな身体に無数の傷がついていた。


僕は両手の平をむき出しの壁に擦り付け深い傷をつける。


そこから滴る血液は、緑色をしていた。


「大丈夫だよ」

小さな葵を抱き締めて傷に手を当て治す。


震える幼い葵。この姿こそが葵本来のもの。


「うぁ……あああんっ」

傷の痛みに涙が零れて、

「―――……あさん。母さんっ!!」

会いたい人の名前を呼ぶ。


「怖いよぉ」


身体の傷は治せても、心の傷は治せない。


この子にだって幸せになる権利がある!



 

 

 


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