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河童様  作者: なぁ恋
愛情論理
27/70

 

落ち着いて、辺りが見えて来て脱ぎ散らかされた学ランに気付く。


きっちりした感じの響夜くんのイメージが、違って来た。


私の前で泣くし……泣き顔、可愛かったし。


鱗を触る。

丁度心臓辺りに生えた鱗。


波打つ心臓の音が手の平に感じられて。

それに、その肌は温かい。


「響夜くんはあったかいよ」


本当に素肌に触れてるからか熱いくらいに熱を感じる。


……素肌。

裸体。思い出して顔が熱くなる。


「俺には、優星の方が温かい」


「え?」


顔を上げると、視線が合った。

龍の姿をした響夜くんは野性的で綺麗だ。


頬を挟まれ、唇が重ねられた。


吐く息も温かい。


「……涙を見せるのは私だけにして?」


「ああ。優星だけだ」


ギュウッと抱きすくめられて、幸せを感じた。


「“ルージュ”には、私のこの姿のままで成れる気がするの」


指で生えた鱗を撫でると、響夜くんが溜め息を吐いた。


「この鱗から、優星に触れられると“力”が流れて来るのが判る」


一瞬の間の後、


「心地好い。いや……気持ち良いんだ」


そう言った響夜くんが私の頭に顔を寄せて、髪に頬を擦りつけた。


互いに、腕を回して抱き締め合った。


私達は大丈夫。

そう確信出来た。

 

「響夜くん。大好きよ」


「優星……俺も」


幸せ過ぎて、温かくて、眠くなって来た。

そうだ。私、寝てなかったから……。


そうなると欠伸まで出て、眠いままに、身体を横たえた。

響夜くんのたくましい腕の中で、優しい匂いのする布団に潜り込んで。

 

 

*優月side*



「ご馳走さまでした」


一人で朝食完食。


「はい。さて、朗くんにクロスちゃんの朝ご飯、どうしましょう?」


「離れに持ってく? なら服に着替えて来るからさ、その間に作っててよ」


僕も食べて頭がはっきりしたから、もう朗に惑わされない。


階段を上がって自分の部屋のドアを開ける。


あれ?

足元の湿り気に転がったコップ。

それに脱ぎ散らかされた学制服。冬の学制服は、先輩が着てた?


そおっと、自分のベッドを見ると、大きな膨らみが……「ね!」姉ちゃん。と叫びそうになり、手で口を塞ぐ。


二人は、気持ち良さそうに寝息を立ててた。


必要以上にくっついてる二人を見て、やっぱり付き合う事になったのかな?

とか抜けた事思って、ふと考える。


付き合うとか、そう言った関係じゃないよね。


先輩は龍で、

姉ちゃんは龍の宝珠。

 

 

 

 

龍と宝珠は一対で完全。


イメージ的にそんな感じ。


完全体に成った時、先輩はどうするつもりなのかな?


父親龍をお母さんの為に倒すって、出来るのかな?


僕だって完全に河童に成ったらどうなるんだろう?


河童に成ったら朗に着いて行くって約束した。けど、だけど。


“愛してる”

“好き”


朗の声が聞こえる。

……今度は幻聴。


頬が熱くなる。

そんなの言われた事ないし、考えた事もなかった。

 

落ち着かない。


朗の傍に居ると、何だか気持ちに余裕が無くなる。

束縛されてる感じが嫌だ。

 

河童の隠れ里は、河童しか行けない場所。


朗と、二人きり。


何の覚悟も出来てない自分。

 

 

覚悟。

河童に成りたくてなった訳じゃないけど、朗が助けてくれたから今の僕が在る。


考えれば考える程、悩みが増えてくみたいな感じ。


何にも考えたくなくて、先輩の服を拾ってハンガーにかける。


と、濡れたカーペットを踏んで、ビシャとした感覚……これって水だよね?


朗は池の水を操った。

丸い球体にして。


僕にも出来るのかな?


“水分を球体に”


手をかざし集中する。

指先が痺れ始めた。


チリチリする感覚が手の平全体に広がると、カーペットの染みが小さな数粒の水玉になって宙に浮く。

それが宙で一塊の球体になった。茶色の水玉。


「出来た! と。とと……」


慌ててカップを立てて、ゆらゆらする水玉を移動させ落とす。


パシャと、くっつけた二つのカップの間を零れた液体。


半分は零れてまたカーペットを濡らした。僕にも出来る。


クロスを治して、水玉が作れて、握る拳に力が入った。

姿見が扉になってるタンス、その鏡に映った自分の姿が目に入る。


どこをどう見てもいつもと変わらない自分。

けど。目が、左の瞳に輝く星。それは河童の証。


あれ?

眼鏡、壊れた後予備の眼鏡はあったのに、するのを忘れてた。

何でかけてないのに気付かなかった?


だって、眼鏡なくてもはっきりと見えていたから。

 

 

「力が使えたのか?」


いきなりの朗の声が背後から聞こえて驚いた。


「な、に?」


「水を操る力の流れを感じた」


「そうなの??」


朗なら解るかな?


「僕、視力悪かったんだけど、見えてるんだよね。普通に」


戸口に立ってた朗が近付いて来て、背中に張り付いて……文字通りくっついた感じ。それで僕の頬に顔を寄せて目線を合わせた。


「自らを治したんだろうな」


鏡に映る二人の姿。

綺麗な朗の顔。僕の幼い、女の子の様な顔。


ムカつく。

朗は、僕を女の子だと思ったって言った。


文句を言おうと口を開けた時、朗が何かに気付いた様に後ろを振り向いた。


無言で僕から離れてベッドに行くと、姉ちゃんと先輩がくっついて眠ってるのをじっと見つめる。


あ。また、学習してる顔。


「次に「そうやって眠るのは不自然だから」


朗の言葉を遮って、釘を刺す。


「でも」と、指差すのは寝ている二人。


「二人は良いの! 恋人になったんだから」


イライラして来た。


「キスするのも、好きって言うのも……愛してるってのも、恋人とか夫婦が使う事で言葉なの!」


肩を怒らせて言い切った。


「そうなのか?」

考える様に首を傾げた。


「そうだよ」

「そうか……」


朗が見るからに落胆して肩を落とす。



それを見た僕は、

嘘みたいに胸が“きゅんっ”とした。


「絶対。違う……」

自分に言い聞かせる様につぶやいた。

 

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