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河童様  作者: なぁ恋
人間と妖怪と生
23/70

 

*朗side*



「うらやましい?」


そう言った優月がこちらを振り返り目が合った。


「“想い”はどこから来るんだろうな?」


「想い?」


おうむ返しの優月の真っ直ぐな視線がしっかりと私を見つめる。


「正直言うと、私は優月に呼ばれて目覚めたんだ」


「え?」


「10年前のこの時刻頃だ。必死に祈る優月の声が聞こえた」


それはゆっくりと身体の感覚の目覚めを誘い、眠って居た事実を一瞬で忘れさらせてしまったのだ。


「思い出した。私は父を見送った後、徐々に眠りに入ったんだ」


それは何故か?


「水先の話を聞いている内に思い出した」


この場所この離れ。それに、天井の傷。


「父はやはり、母を探しにこちらに来たんだ」


それもやはり、想う気持ちが為せる業だと今なら判る。

 

 

眠った後、水を通して自分に話し掛ける声があった。

それはまるで子守唄の様に淡々と口づさむ声で、河童の“いろは”も眠りながら聞き学習した。


「それって、おばあちゃんかも」


優月が興奮した声で起き上がり話し出した。


「おばあちゃんはいつも池のほとりで歌ってたんだよ!

僕はずっと傍に居たから覚えてる」


優月も近くに居たのか。


「さらわれたって朗のお母さん……僕のひいおばあちゃんの従姉妹だったって母さん言ってたね」


「血族」


「“河童様”と親戚!」


身を起こし、優月の目線に合わせて話す。


「何か興奮しているな」


解るような気はするが。


「ん~……。一日だよ。一日で色んな事が起こって……母さんは座敷わらしだったし、父さんは目がほとんど見えてなくて、姉ちゃんは龍の先輩と大変で。

僕は河童に成った」


一気にまくし立て深呼吸する。


「そして、クロスは可愛い」


自分の横で丸まっていた化け猫の頭を撫でると、小さく溜め息を吐いた。

 

 

「ニィ……」


寝惚けた化け猫が小さく鳴いた。

この状況下でよく眠れる。


「混乱するのも判る」


月明かりが障子を明るく照らし、畳に影を作る。


「私の代わりに混乱しているのか?」


捕まった母を、それを追い掛けた父を。


「優月の母の話で確信したんだが、私達河童は自分の契約者、呼出人が亡くなると人界には来れなくなるんだ。

父が居なくなったのは、先の契約者である節子が亡くなると、母を探す事が出来なくなるから帰って来なかったんだ。

あくまでも推測だが、否。父は母を探して居た」


自分の命こそ危険な世界に身を置いてまで、何故そこまでして母を探そうとするんだ?


「朗のお父さん、すっごくお母さんの事愛してたんだね」


愛?


「“愛”とは何だ?」


優月は首を傾げて、困った顔をした。


「それは、ごめん。正直よく解んないよ。

“好き”が沢山増えたら“愛”に成るんじゃないのかな?」


優月の事を想って過ごした日々を思い起こす。

朝、優月の声で目覚め、夕、優月の話を聞く。

それが、とても楽しく幸せで、迎えに行くのが待ち遠しかった。


これは、好きな気持ち。

愛なのだろうか?

 

 

*優月side*



「私は優月を愛している」


「え?」


はい?

何か聞きなれない言葉が朗の口から零れた。


「私は優月が好きなんだ」


朗を見る。

冗談だと思った。


けど、僕を見る瞳は、朗の瞳のキラキラ光る星が冗談じゃないと、無言で語ってる。


姉ちゃんや母さん達にやけにこだわると思った。

だから変な学習しちゃったんだ。


それに、

ずっと一人できっと淋しかったんだ。


―――って思うけど、真剣な朗の視線が、痛い。


そんなに暑い訳じゃないのに、汗が吹き出す。


何かヤバイ空気感。


「キスをしても良いか?」


はいぃ―――?!


あ。心臓がバクバク言い出した。


朗が自分の布団から抜け出して、こっちに来る。

そんなに離れてないからすぐ傍に来た。


朗の顔。

整った顔立ちに綺麗な長い黒髪。

……息が掛かる程に朗の顔が近付いて、逃げる事が出来なくて。

身体が言う事聞かなくて。


朗の綺麗に輝く瞳に圧されて、ギュッと目を瞑る事しか出来なかった。

 

 

ふさふさしたものが唇を擦る。

目を開けるとクロスが僕らの間に居て、二股尻尾が朗と僕の唇を隔てていた。


「ニャぁにやってんだニャ」


止めていた息を大きく吐く。安堵して肩から力が抜けた。


「好きだから“キス”をしようとしていた。邪魔をするな」


見るからにムッとした朗がクロスを睨んでる。


「はぁ~。お前は世間知らずだニャ」


溜め息と言葉を同時に吐いたクロスが、僕の膝に腰掛け身体を伸ばして朗を見上げた。


「第一に、同性でキスニャんてしないニャ。

第二に、普通は人前でするもんじゃニャい」


右眉端を上げた朗が本気で驚いた顔をした。


「好きならしても良いじゃないか! 人前? お前は寝ていたぞ。それに“人”じゃない」


見た目の大人っぽさが嘘みたいに駄々っ子みたいな朗の姿に、堪らず吹き出してしまった。


「何だ?」


朗が拗ねた顔をした。


何だか人間らしい表情をする朗を愛おしく感じて、

「僕も朗が好きだよ」

考えなしに口にしてしまっていた。

 

“後悔先に立たず”って言葉があったのを思い出したのは、柔らかい唇が重なった後だった。


ファーストキスが、男。


姉ちゃんみたいにセカンドまで……何てなりません様に。と願いつつ、意識が遠退いて行った。

 

 

 

 

 

 

今まで思った事なかったけど。



生きる事って、

愛する事と比例して居るって思った。



愛するものが居るのと居ないのじゃ全然違う。



大好きだったおばあちゃんが居なくなってから、どこか心にぽっかりと穴が開いたみたいだった。


けれど、それを埋めてくれたのは河童様。


朝夕と河童の池にキュウリを届けて話をする。


それがどんなに心の支えになって居たか。


小学生の時、同級生に河童様の事を話してものすごく悪く言われた。


いじめられた事実より、河童様を……僕が想う河童様、朗を悪く言われた事が許せなかったんだ。







これって。

“好き”な気持ち?


好き=恋?


“恋”?









これは悪夢かもしれない。


次の日、目覚めて最初に思った事。

 

 

 

 

 

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