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河童様  作者: なぁ恋
人間と妖怪と生
22/70

 

「父さんが視力が弱いのは何となく判ってると思うけど」


そりゃ分厚い眼鏡をかけてるからね。


「本当は、ほとんど見えてないのよ」


「「え?!」」

僕と姉ちゃん同時に声を出してた。


「歩き初めて解ったのよね。見てて危なっかしくて。だから“右くん、(ひだり)くん”が生まれたの。優太くんの視力を助ける為にね」


右眼左眼って事だと解った。


「助かってるよ。色んなモノが視えるからね。だからこそ、璃世と再会出来た」


嬉しそうに目を合わせる二人の年齢差は15もあった事を思い出した。


「母さんわね。優良の導きで人間に生まれ変わったのよ」


「簡単に言ってるけど簡単な事じゃないよね? 僕は河童に成ったみたいだけど、人間から妖怪に出来るのは河童だけだと訊いたし。ましてや妖怪から人間になんて……」


「正確には“人間から妖怪”には“鬼”になら恨み辛みが強ければ成る事がある。動物からは妖怪に化けるけど、人間は鬼に成る。これは心が壊れて邪悪に成る事だから救いがないわね。

でも河童が変化させるのは人間の性質のまま仲間にする事だから、これが出来るのは河童だけなのよ」


それに、と続いた話は“座敷わらし”も元は人間で在った事。

 

 

「だから、“生まれ変わる”には、自分の血筋でないといけなかった。母さんは長い年月放浪してた。だから元は北の大地の生まれだと知らなかったのよ」


母さんの実家は北海道。南に近いここに住んでた父さんがスキーツアーに行って出逢ったと聞いていた。

 

「璃世の分身である右くん左くんが居たからね。再会自体は簡単だったけど、人間に生まれ変わった訳だから、僕の事忘れてる可能性もあったから気が気じゃなかったよ」


でも?

「一緒になる為に妖怪で在る事をやめたの?」


「そうね。私は優太に出逢う為に水先家に辿り着いたみたい。

本当にね、産まれてすぐ好きになったんだもの」


頬を赤くする母さんは綺麗だと思った。


「赤ちゃんに恋したの?」


姉ちゃんが笑った。


「そう言う貴女もませた子ね。右くんが教えてくれたわよ。年上の響夜くんにえらく積極的だったわね」


うっと、言葉につまった姉ちゃんは強かった。


「格好良いと思ったのよ!」


「母さんは可愛いと思ったの」


女二人で目を合わせて次の瞬間には微笑んだ。


「そして今の私は、そこそこの霊力を持ったただの人間。まあ、座敷わらしの時の分身である右くん左くんは、小さな座敷わらしとしてそこそこの妖力を持ってるから、立場としては両方の間に居ると言った所かしらね」


「水先家の理想系だね」


父さんが隣に座る母さんの肩を抱き寄せた。

 

 

「水先家って、河童様の反対で、妖怪を人間にする力が有るって事?」


単純に考えるとそうなるよね?


「そうね。だから代々河童と縁を持ち続けたの。

遠くて近い存在だったから」


何だか頷けた。

その時、繋がれたままだった朗の手がギュッと僕を掴んだ。


「何?」って朗を見上げると、例えるなら捨てられた子犬みたな顔をして、いきなり抱き締められた。


「……朗?」


びっくりして、それでも震えている朗に気付いて抱き締め返し、伸ばした手で背中を擦る。


「何? どうしたの?」


「人間に戻れるかもしれないって判って、不安になったんじゃない?」


姉ちゃんが当たり前みたいに言った。


「何で不安になるの?」


さっぱり判らない。



「婿にも出す事になるのかな?」


父さんの呟きに母さんが吹いた。


「当人同士の気持ちによるわね」


「どう言う意味だよぉ?!」


タイミングよく出前が届いた。と、父さんは離れを出て母屋に向かった。

 

 

離れでテーブルを出して皆で肩を並べてお寿司を食べた。

朗も普通に食べてたから“河童”も何でも食べられるって判って安心した。魚だからかな?


僕の横でクロスも美味しそうに食べてた。


困った事に、朗があれから横に張り付いて離れない。何でか不安らしい。


でもさ、

「人間に戻るなら赤ちゃんから生まれなおさないといけないんだろう?

僕は今のままで居るから安心してよ」


大きくきっぱりと言い切った。


朗は驚いた顔してすぐに綺麗に微笑んで、何だか子犬を安心させる為になだめてる母犬の気分。


で、夜も更けて、何故だか僕は離れで布団並べて朗と一緒に寝る事になっていた。

もちろん、クロスも一緒に。


「長い一日だったなぁ」


僕の部屋には先輩が泊まる事になって“龍の宝珠”について話し合う様に両親に言われたんだ。


「姉ちゃん。何考えてるんだろ?」


自分じゃ無くなるって言われても、好きだから珠に成っても良いなんて……よく判らない。


「私はうらやましく思った」


朗が小さく呟いた。



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