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河童様  作者: なぁ恋
人間と妖怪と生
20/70

 

璃世(りよ)(母)side*

      ..

いつの間にか存在して居た。

5歳くらいの姿。

橙色の着物に赤い帯、おかっぱ頭の典型的な童。

でも何故か性別は自分でも解らないで居た。


それでも“座敷わらし”だと自覚しては居た。


50年、100年。


幾つもの家を転々として居た。自分が居なくなった後、その家がどうなるか何て考えもせずに。


迷子の子どもの様に、自分の居場所を探してたから。


どの家も自分の場所じゃないと感じて、悲しくて、仕舞には泣きながら家を出た。


何が悲しかったのか、その時は解らなくて。


ある日、不思議な色を放つ家を見つけた。


それが水先家。


家に入ると、産気づいた女性が居て、誕生したのが優良だった。


そして、産まれてすぐ座敷わらしである自分を優良は確かに見て笑った。


笑った。


嬉しくて、水先家に留まって優良の成長を見守る。


やがて優良は歩き、言葉を覚え、自分の意思を持ち、座敷わらしの“私”の手を取る。


毎日を一緒に過ごした。

 

ここが、優良の隣が自分の居場所だと心から思った。

  

 

見た目が同じくらいになった時、優良が名前を付けてくれた。


璃世(りよ)


“瑠璃”と“世界”って言葉を覚えたばかりの優良が考えて付けてくれた。


私は名前が付いた事で女である事を意識する様になる。


そして、水先家の秘密を徐々に知る事になる。


優良の祖母は厳格な女性でそして優良と同じ、妖怪を視る人間でもあった。


私が名付けられたと知ると、優良に内緒で呼び出された。

水先家に入った時はわざと無視して居た。と言われ、更に座敷わらしを家に閉じ込める事が出来たから釘を刺すのだと、真実を知らされる。


水先家は人間と妖怪を橋渡し出来る能力者の家系。

それは女のみに伝わる能力で、隔世遺伝すると。


優良は産まれてすぐ、座敷わらしを捕まえた。

今までにない程の能力者で鼻が高いと、静かに語られた。


涙が出た。


私は名前を貰った代わりに自由を奪われた。


それは優良が意図してした事なのか?


悲しくて泣いた。

 

 

突然逃げたくなった。


璃世と、呼ばれ嬉しくて。でも、今はそれが枷となる。


「おやおや。座敷わらしを泣かせてしまったね」


その声は努めて厳しく。

泣き止むには十分だった。


自分が特別だと思った事はなかったけれど、この状況から抜け出せるなら力の限りを使おうと思った時、背後の襖が開いた。


「おばあさま。何故璃世を泣かすの?」


優良だった。

明らかに動揺する優良の祖母の態度から、優良がこの事にまったく関係ないんだと理解し、気持ちが落ち着いた。


「璃世、ごめんね」


隣に座った優良が私の手を取る。


「節子。貴女には黙っておくつもりだったけど……」


この話し方はいつもの優良と全然違って、年齢よりかなり上に感じた。

“節子”と呼ばれた優良の祖母が顔を青ざめ絶句していた。


「……優良?」


弱々しく孫を見る。


「貴女は水先の、私達の力を誤解している」


「誤解?」 


「貴女は“河童”に伴侶を紹介した。それで得意になってしまった」


私がここに来る前の話?


“河童の池”が在るのは気付いてた。

 

 

「節子。私は貴女の祖母、良子(りょうこ)

貴女が私の大事な子を悲しませるから出ないとならなかった」


震える節子。

まるで叱られた子どもの様だ。


「私達は、あくまでも同等でないといけない。

どちらが上とかはないのよ?」


「でも!」


「私は一時的に表に出てきただけ。

それでも全てを把握する事は一瞬で出来る。

その内に良子と優良は一体に成るでしょう。

河童の時の様な失敗は繰り返してはいけない」


意味ありげな言い回しに、首を傾げると、優良は私の手を強く握って、


「貴女は運命を自ら感じて私の所へ来たのよ」


しっかりと私の目を見て話す言葉に嘘はなかった。


「節子。河童の伴侶は掴まってしまったのね」


訊かれて唇を噛んで下を向く。


「まさか……そんな事は? 里帰りしたいと言われ……そのままこちらに帰らなかったのは、醜い河童から逃げただけかと」


「そんな事を思ってたから河童が怒ってしまったのね。池が閉じてしまってる。

肝に銘じなさい。

彼女は掴まってしまったのよ」

 

 

「気付きませんでした。すみません。

ですが、この“離れ”に入れる妖怪は居ない筈です!」


「私が死んで、貴女に渡せなかったのです。私達の力の元である“(かい)”を。だから結界は強い妖力を持つ妖怪なら入れた。

言うなれば、天命とは言え早く死んでしまった私のせいでもあるの」


優良は私の手を握ったまま節子の手を擦る。


「強い力を持つと、人は慢る。それは悲しい事です。

節子には、苦労させますが、“優良”を導きこれからの大事に備えさせなければなりません」


涙ぐんだ節子が小さく頷いた。


「璃世の事も頼みますよ。この子は、水先家と深い繋がりを持つ大事な子ですから」


そう言って笑った優良は、いつもの優良に戻って居た。

この事は私と節子の共通の秘密となって、絆となった。


それは彼女が死ぬまで良好に続いた。

  


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