8.地味令嬢、婚約破棄を阻止する
騎士業務から外され、鍛錬に励んでいるお父様は、まだ私が魅了魔法を使えるようになってきたと信じている。
爵位が下げられ没落するかもしれないという恐れは忘れていないようだが、魅了魔法成功まであと一歩だと信じているお父様は、毎日、機嫌がいい。
先日も、緑色の目をキラキラとさせて、こんな話をしてきた。
「ルーラ、聞いてくれ。騎士団の副団長の令息、リチャード様の婚約が、正式な婚約直前で破談になったらしい」
「はぁ」
「それで、新たに婚約者を探しているらしく、ディライト侯爵には娘さんがいましたよねと打診されたよ。でも、うちの娘はもうすぐ婚約しますからと断った。そろそろ、魅了魔法でルーラの虜になった王子が、うちに婚約の申し込みにみえるかな?」
「いや、それは‥‥‥。ところで、その方はなぜ婚約直前に破談となったのですか?」
魅了魔法の話が出て、焦った私は、慌てて話をそらした。
「なんでも、婚約するはずだった令嬢の家‥‥‥、確か、ドーム男爵家だったかな。その男爵家が、かなり強欲だったそうだ」
「強欲‥‥‥?」
「リチャード様は内気らしく、もう22歳なんだ。ずっと婚約者を探していてね。ドーム家の令嬢に告白され、大喜びしたそうだ。でも、さぁ、正式に婚約だという時に法外な婚約支度金という名の現金を要求されたそうだ」
「婚約支度金? 初めて聞きました」
「要は、娘と結婚したければ、金を出せということだよ。それだけじゃないぞ。好きだ、結婚したいと令嬢に言われて、舞い上がったリチャード様はたくさんの宝石やアクセサリーをその令嬢に渡していたらしい。支度金の件もあって、それを知った副団長が、そんな家とは親族となるのはまっぴらだと怒って、破談になったらしい」
「法外な支度金ですか‥‥‥。破談になることが分かっていて、宝石類が欲しかっただけじゃないですか?当然、貢いだ物は、返ってこない訳ですよね?」
「あぁ。返ってくる訳がない。まぁ、大事になると、リチャード様の次の婚約者探しにも関わるから、宝石類は諦めるそうだ」
「なんだか詐欺みたいな話ですね。恋に狂ったリチャード様にも責任はあるのかもしれませんが」
「うん。私もそう思うよ。そういう訳で、その令嬢は美しい令嬢だそうだが、やっぱり顔より中身だと言って、地味な顔立ちで頭の良い婚約者を探しているらしい」
「‥‥‥」
私は、お父様をジロリと見たが、お父様は気にする様子はなかった。
「あ、この件は、他言してはいけないよ。副団長から、家の恥だから、くれぐれも内密にと言われているから‥‥‥。その婚約は、まだ成立する前のことで、公にはなっていないしね。それにしても、王子は、いつ我が家にみえるかな‥‥‥」
「ウフフフ‥‥‥。ルーラ、とっても綺麗だわ」
お母様は、ドレスを着た私を見て満足そうに微笑んだ。
お母様の笑顔のほうがずっと美しいと思うのだけど‥‥‥。
「さあ、鏡を見てごらんなさい」
お母様は、そう言って手鏡を私に差し出した。
‥‥‥化粧して、ドレスを着たからといって、何も変わらない。地味な私は地味なままに違いない。
私は、その手鏡を手に取らず、立ち上がった。
私が通う王立高等学園では、7月の夏休み前と3月の学年末の年に2回、貴族社会のマナーと教養の実技学習ということで、授業を1日無しにして、午後から夕方まで、学園主催のパーティが開かれる。
期末試験も終わって、さあ、もうすぐ夏休みだ、屋敷で本を読みまくるぞと思っていたある日、私は、ミリア嬢にそのパーティに誘われた。
いつも通り、昼休みの隠れ家でエドワード王子、ミリア嬢、そして私の3人で過ごしていた時のこと‥‥‥。
「えっ、ルーラ様、パーティには行かないのですか? 私、ルーラ様とたくさんお話ができると、楽しみにしておりましたのに。私と一緒に参加しましょう。ユース様は学園生ではないから、参加できないですし」
「わ、私は、そういう華やかな場所は苦手で‥‥‥。それに、エスコートをお願いするような相手もいません」
「学園のパーティなら、エスコートは不要だぞ。あくまで、授業の一環でマナーと教養の学習の場だからな。婚約者が学園にいる女生徒なら、婚約者の男子生徒のエスコートを受けて参加する者もいるが‥‥‥。そうか、ルーラと婚約すれば、エスコートできるか‥‥‥」
「え、エドワード王子、何と? 今、最後のお言葉が聞き取れなかったのですが?」
「い、いや、ミリア嬢、たいしたことではない‥‥‥。ルーラ、今回のパーティでは、なんと王家のシェフが特別に料理を振舞うぞ。立食だが、かなり豪華なものだ。僕のリクエストで『アーサーと3人の仲間』に出てくる料理もビュッフェ台に並ぶぞ」
「そうですわ。エドワード王子が初めて参加されるから、王の配慮で特別に王家のシェフを派遣いただけるのですよね?ねぇ、ルーラ様、そのお料理、食べたくありませんか?」
「は、はぁ‥‥‥」
こうして、私は2人に押し切られて学園主催のパーティに参加することとなった。
パーティに行くと伝えてから、当日までのお母様の気迫はすさまじかった。
「ルーラの初めてのパーティよ。私に任せて頂戴」、そう言って、化粧の本を何冊も買い熱心に読んでいた。
ドレス店にも何度も連れて行かれたが、何着も試着させられた上にお母様があれこれ注文をつけていて、どんなドレスを自分が着るのか私には見当もつかないほどだった。
1つ気になったのは、お母様が我が家の書庫から、古い1冊のノートを出して、熱心に読んでいたことだ。
それは、東の大陸から嫁いできたエキゾチックな美人だったと言われる曾おばあ様の残した化粧品やドレスの注文についてのメモが書かれたものだった。
「‥‥‥」
パーティ会場で取り巻きに囲まれていたエドワード王子は、一瞬、目の合った私に言葉をかけず目を逸らした。
王子は、来賓の方々への挨拶に加えて、取り巻き達の相手で忙しそうだ。
元々、昼休みには隠れ家で話すものの、クラスで王子が私に話しかけることはなかったから、今日は、王子とは話はできないかもしれない。
お母様が注文したドレスが、私の身体にぴったりとあった薄い紫色のマーメイドドレスだというのは分かった。
でも、どんな化粧をお母様が私に施したのかは見ずに出て来てしまった。
やっぱり、嫌でも鏡くらい見ておくべきだったか‥‥‥。王子に目を逸らされたことにショックを受けて私が後悔していると、ミリア嬢がやって来た。
「ルーラ様、とっても素敵です。そのドレス、どなたのデザインですか?ルーラ様の細身のスタイルをより引き立たせていて素晴らしいです‥‥‥。それに今日のお化粧、エキゾチックで色気がありますね‥‥‥」
ミリア嬢は、うっとりと私を眺めている。
「あ、ありがとうございます。でも、ミリア様のほうが、可愛いですよ」
ミリア嬢は、私より小柄で女性らしい体形をしている。
小柄な体に良く似合うふわりとしたピンクのドレスが、私は羨ましいと思った。
私は、痩せた自分の体を恥ずかしく思い、下を向いた。
ふと周りを見た私は、先ほどから、私達と同じように壁の花となっている女生徒が1人いることに気が付いた。
教師よりは、パーティは教養やマナーを学ぶ場なのだから、フロアで1回は男子生徒とダンスを踊るよう言われていた。クラス順に名を呼ばれ、フロアで踊る時間もあるのだが、皆、友達や恋人、婚約者とのおしゃべりやダンスに夢中で、そんな呼び出しに応える者はほとんどいない状態だ。
仲の良いクラスメイトもいない私達は、パーティと言っても、隠れ家とすることはほぼ変わりがないのだった。
「ミリア様、あの方、先ほどから1人ですね」
「私と同じクラスのアンジェラ・ロドリス侯爵令嬢よ。お父様は裁判官よ。同じクラスのエヴァン・ソーサ公爵令息と婚約されているはずだけど、一緒ではないのかしら?」
「お父様が裁判官ですか‥‥‥。そんな家だと、ルールに厳しくて、大変そうですね」
「アンジェラ様ご自身も、ルールに厳しい方よ。2年生ながらに風紀委員長をしているから、校則を守らない生徒をビシバシと指導をされているわ。そういえば、かなり前の昼休み、エドワード王子が廊下を走っていて、怒られていたわね」
‥‥‥それって、取り巻きを撒いて、隠れ家に初めてエドワード王子が来た時のことかもしれない。
私は、あの時の王子の照れくさそうな顔が心に浮かんだ。そして、遠くで誰かと話している王子を見つめた。
会場内がカップル同士の場となってきたため、息苦しくなった私とミリア嬢は、ひと気のない裏庭に行き、休憩することにした。
裏庭に着いた私達は、裏庭の木陰で1組の男女が話しているのに気が付いたが、2人は、私達には気が付いていないようだった。
ミリア嬢が小さな声で呟いた。
「あれ、さきほどのアンジェラ様の婚約者のエヴァン様とリリアン・ドーム男爵令嬢だわ。3人とも、私と同じクラスよ。‥‥‥リリアン様って、とても机の中が汚いの。テストや渡された書類がずっと入れてあるのよ。それを見たアンジェラ様が、これでは校則違反だとため息をついているのを見たことがあるわ」
会場から違い静かな庭では、2人の会話が聞こえてくる。
「リリアン、それは本当か‥‥‥。それが本当だとしたら、私はアンジェラを軽蔑する」
「本当です。私とエヴァン様が親しいと知ったアンジェラ様は、私に現金を渡されたのです。しかも高額の‥‥‥。2階の踊り場で分厚い封筒を渡され、エヴァン様との手切れ金だと言われました。貧乏男爵家は、金が欲しいだけだろうと…‥‥。アンジェラ様が踊り場で、封筒を厳しい顔で私へ渡すのを、複数の生徒が見ているはずです」
「金を渡すなどとは、裁判官の家の娘がすべきことではないな」
「すべて、私とエヴァン様の仲への嫉妬のせいですわ。私、お返しはしましたが、貧乏男爵家と蔑まれた上に、そんな現金を渡されていたところをたくさんの生徒に見られたことが、恥ずかしくて‥‥‥。せっかくいただいていた婚約の話も、その件を恥じた先方より、成立前に破談となりました。こんな私には、もう、婚約‥‥‥いえ、結婚の申し込みなどこないかもしれません」
そう言って、リリアン嬢は泣き出したようだ。
「私、可愛いお嫁さんになるのが夢でしたのに」と泣きながら言っている。
「リリアン、すまない。君と僕は、アンジェラに嫉妬されるような関係ではないはずだ。しかし、君の婚約が破談となり、今後、君がそういった話をもらえないのだとしたら‥‥‥、アンジェラの行為の原因を作った僕も責任をとる必要があるだろう」
「で、では‥‥‥。一生独身かもしれない可哀そうな私と婚約していただけるということですか?」
エヴァン様の声はしなかったが、「嬉しい」とリリアン嬢の声がしたから、エヴァン様が頷いたのだと私は思った。
2人はしばらく話をした後、パーティ会場へと向かって歩き出した。
‥‥‥ドーム男爵令嬢か‥‥‥。名前を聞いたことがあるわね。
エヴァン様とリリアン嬢の会話は、どこかちぐはぐな印象を私に残した。
私は、頭の中で自分の記憶と繋がっていない点と点を結び付けようとしていた。
「まぁ、修羅場ね。恋愛小説でよくあるわね。もしかして‥‥‥、『君とは婚約破棄だ!』って言うのかしら‥‥‥。実際に見られるなんて、すごいわ」
考え込んでいた私は、何故かウキウキとそう言うミリア嬢に連れられ、パーティ会場へと戻った。
パーティ会場へ戻った私が見たのは、エヴァン様とエヴァン様に寄り添うように立つリリアン嬢、そして、2人に向かい合って立つアンジェラ嬢だった。
3人の周りを生徒達が取り囲んでいる。
パーティ会場の音楽は止み、ざわめきも無くなり、生徒達は3人に注目している。
「アンジェラ様‥‥‥、私、エヴァン様に全てお話しました」
目を潤ませたリリアン嬢が、言った。
リリアン嬢は、とても美しい令嬢だった。薄いピンクのふんわりとしたドレスがその華奢な体型に良く似合っている。
「何のことですか? 私、エヴァン様をずっと探していましたのに」
「アンジェラ‥‥‥、君がそんなに卑劣な女性だとは思っていなかったよ。嫉妬に狂った上に、人を蔑み、封筒が分厚くなるほどの金を渡すなんて。リリアンの人生は、君のせいで台無しだ。アンジェラ、僕は君との婚約を‥‥‥」
「ちょっと待ってください!」
思わず、声が出た。
先ほどから考えていた点と点が繋がり、私は、咄嗟に叫んでしまった。
「あれ、誰だ?」という声が聞こえるが、声が出てしまったものは仕方が無い。
私の頭には、『王立高等学園校則』の表紙が浮かんでいる。
大きく息を吸い込んで、私は言った。
『学園に持ち込んではならないものその2。
現金類の持ち込みは禁ずる。身分・財産で人を判断することを禁じている為、また、窃盗などトラブルの原因となる為、持ち込み禁止とする。学園内の飲食時や物品購入時は、生徒手帳を見せて購入する。1か月後、登録住所に請求書を送る。』
「あの‥‥‥、アンジェラ様は、風紀委員長で、校則について厳しく指導している方ですよね?そんな方が、校則を破って封筒が分厚くなるほどの現金を持ち込んだりするでしょうか?」
私は、3人を取り囲む生徒達の環から、一歩出ると言った。
「誰よ、貴女!勝手なことを言って。嫉妬に狂ったアンジェラ様がしたことよ」
「嫉妬?確かに、近頃、エヴァン様とリリアン様がよく一緒にいるとは感じていたけれど‥‥‥」
「アンジェラ様が、私に2階の踊り場で分厚い封筒を渡しているのを見た方がいらっしゃるはずですわ」
「私、見たわ!」
「僕も!」
そんな声が生徒達の環の中から聞こえる。
勝ち誇ったような微笑みをリリアン嬢は浮かべた。
『学園規則その10、机の中身は、毎日全て持ち帰ること』
私は呟いた。
その呟きを聞いたアンジェラ様が口を開いた。
「あぁ、わかったわ。あの封筒のことね。リリアン様が机にため込んでいるテストやプリント類を封筒にまとめて入れて、たまに踊り場で渡しているのよ。教室の皆の前では、恥ずかしいでしょうし」
アンジェラ様は、驚いた顔をしていた。
その言葉を聞いたリリアン嬢が、恐ろしい表情で私を睨む。
「誰だか知らないけれど、余計なことを‥‥‥。うまくいきそうだったのに!」
「もしかして、先日、宝石類を頂いたのにも関わらず、ある男性に法外な婚約支度金をふっかけたのは、貴女ですか?それで、婚約成立前に破談となったのですよね?…‥‥そもそも、婚約する気があったのかは不明ですが」
「それは、公にはなっていないはず‥‥‥。何故、それを‥‥‥」
「リリアン‥‥‥。私に嘘をついていたのか!」
怒りの表情のエヴァン様が、リリアン嬢へ向かって叫んだ。
「ふん、エヴァン様はもう、いいです。私、もっといい殿方を探しますわ」
「ちっ、邪魔が入らず、あそこでエヴァン様が婚約破棄と言いきれば、思うようになったのに」私の横を通り過ぎるリリアン嬢から、そんな呟きが聞こえた。
リリアン嬢は振り返りもせずに、生徒達をかき分けて進んで行く。
その姿を追う事なく、エヴァン様はアンジェラ嬢の前に跪いた。
「アンジェラ、すまない。リリアンと一緒にいたのは、落第しそうだからと頼まれてテスト前に勉強を教えていただけだ。そして、先ほどは相談があると呼び出されたんだ。危うく、口車に乗って、君を苦しめるところだった」
「い、いえ‥‥‥。一体、どうしたのですか‥‥‥。でも、私、そうやって誰にでも親身になって話を聞く、エヴァン様の優しいところが好きです。私に、跪かないでください」
「アンジェラ‥‥‥」
2人は見つめあった。
「はい、痴話げんかはそこまでじゃ。さあ、皆、ダンスに戻りなさい」
2人の会話だけが響いていた会場内に、突然、男性の声が響いた。
振り向くと、豪奢な衣装に身を包んだ老人が騎士に取り囲まれて立っていた。
「孫の初めてのパーティを見学しにきたら、懐かしい方の面影に出会えるとは…‥‥。そなた、ディライト侯爵家の娘さんかな?長い手足、艶かしい黒髪‥‥‥。化粧もドレスも、若かりし頃に憧れたマーヤ・ディライト侯爵夫人にそっくりじゃ。異国の美しさ、血は受け継がれておるのだな」
その老人は、私を見て嬉しそうに微笑んだ。
「お爺様!」
エドワード王子が老人に駆け寄る。
お爺様‥‥‥。ということは、引退されて離宮で暮らしておられる前王?
そんな方に話しかけられるなんて‥‥‥。驚いた私は、声が出なかった。
「エドワード、こういった場面では、お前が前に出てうまく収めないとな。ディライト家のお嬢さんに任せきりは、ダメじゃよ。儂も、マーヤ様が凛とした様子で、喧嘩の仲裁に入るのを見ることが好きだったがの」
「すみません」
エドワード王子は、小さな声で言うと、恥ずかしそうに下を向いた。
「さぁ、若者は楽しまないと。ディライト家のお嬢さん、機会があれば、また会いたいの…‥‥」
前王は、私にそう言い微笑みかけると、騎士を引き連れて会場から出て行った。
会場は、再び音楽が流れ、賑わいを取り戻した。
エヴァン様とアンジェラ様は、2人で微笑みあっている。私の視線に気が付いたエヴァン様が、私のほうを見て会釈をした。
我に返った私は、目立ってしまったことに気が付き、慌てて体を小さくしてミリア嬢の背後へ逃げ込んだ。
「ルーラ様、すごいですわ。婚約破棄を阻止したばかりか、前王にお声をかけられるなんて」
ミリア嬢は、惚れ惚れとした様子で言った。
「ごめん、ルーラ。凛とした君に見惚れていて、言葉がでなかった。‥‥‥いつも君は素敵だけど、今日はもっと綺麗だ」
エドワード王子は、頬を赤らめながら私の傍に近寄り、小声で何かを私に言った。だが、取り巻きの生徒に囲まれた王子の言葉は、私には聞き取れなかった。
「ルーラ、一体、何をしたんだ」
夏休みが始まる頃、家に届いた手紙を開いたお父様が茫然として呟いた。
それは、ソーサ公爵家の紋章入りの便せんにしたためられたもので、パーティの際に迷惑をかけたという内容の詫び状だった。
「ソーサ公爵家と言えば、宰相を務める家柄だぞ。よし、これを明日、城へ持って行って、団長にアピールしよう。我が家が、ソーサ公爵家とつながりがあると分かれば、ルーラと王子の婚約より先に、騎士に復帰できるかもしれない」
お父様の言葉に、私は小さくため息をついた。
お読みいただきありがとうございました。




