第2部 13話 『訓練合間のとある食事風景』
今日の昼飯は真田丸と、ワチと、アンリエルが同席している。
何でも、俺との飯の同席は持ち回りでやってるらしいので、競争が激しいのだそうだ。
だが、真田丸とは俺は相談する事が多いし、ワチは俺が絡まないでいると寂しがるし、どっかのビキニアーマーさんは、
「ワタシがマスターの一番の護り手なのだ。だから、一番側にいるのは当然なのだ」
と言って譲らず、この四人で食卓を囲む事は多い。
「ご主人様、お代わりをお持ち致しましょうか?」
とか言って、ヨルコは毎回給仕してくれるので、食卓争いにはあんまり加わっていないそうだ。
だが、今日の給仕役は光輝くアンリエルの眷属だったりする。
「マ、マ、マスター。お、お、お代わりなどいるか?」
喋れない眷属に代わって、アンリエルが問いかけて来るので、じっーと見つめてやったら顔を真っ赤にしてこの体たらくである。
この先を考えると、早くまともになって貰いたいものである。いざって時に困る。荒療治でいきなりキスでもしちゃろうか?
いやいや、キスした後に水溜りの泥水で、唇をすすがれちゃったりなんかしちゃった日には、とても立ち直れないぞ。
屋敷の壁に掛けられた奇妙な仮面に血を吸わせて、暴走してしまうかもしれん。
「うん。お代わり頂戴」
馬鹿な考えはおくびにも出す事はない。流石は俺である。心の守りは鉄壁なのである。森崎ではない。若島津、若林レベルなのである。キェェェーなのだ。
皿を渡すとアンリエルの眷属は上手にそれを受け取り、厨房へと消えて行く。
「中々順調そうじゃないか。まだ、眷属は一人だけで訓練しているのか?」
「そうだ。マスターの言った通りであった。今一人のコントロールに大分自信がついたので、そろそろ数を増やす算段をしている」
シルバーに弱点を指摘された後、アンリエルは流石脳筋と言う動きを見せた。いきなり光の眷属を今の限界値である十体を呼び出して、当然の様に碌に制御出来ずに、限界を迎えてぶっ倒れるを繰り返したのだ。
見るに見かねた俺が、またもやアドバイスを送る事になる。
難しい制御の精度を上げる訓練のセオリーは、数を少なくして簡単に行う事である。だから、一体をまずは完璧にコントロール、かつ、四六時中呼び出す訓練をしてはどうかと提案したのだ。
結果はこの通り、上々である。
今、アンリエルの俺に対する信頼は、間違いなく高まっている。
俺の脳裏に、ここだと言うサインがやって来る。お気に入りのアクセサリーを装備させるならここだ!
しかも今、手元には、丁度、真田丸との打ち合わせに使っていたメモ帳と筆記用具があるのだ。
サラサラサラーって。
はい、どーん。
「マスター、これは一体?」
「これか? これは『黒縁眼鏡』と言う集中力を高めてくれるアクセサリーだ」
「なんと、その様な物があったのか!」
俺とのやり取りを聞いていた真田丸は一瞬体をピクリと動かしたが、また直ぐに平静を装ってスープを飲み始めた。
流石は真田丸です! 我が主の望みを叶える為に、だんまり決め込んでくれております!
「守様、なんだか、悪い事を考える時の顔を……」
「アッハッハッハー。ワチ、林檎食えよ」
俺は食卓からすかさず林檎を一切れ取って、ワチの口に突っ込む。
「どうだ、ワチ。美味いか?」
「シャリシャリして美味しいのです!」
幼女め。
俺の野望の邪魔はさせん。
「本当はその普段着を提案した時に、一緒に着けて貰えば良かったんだがな。すっかり忘れていたんだ。すまん」
「マスター、そんな頭を下げないでくれ。ワタシの為を思ってくれて、嬉しいぞ」
アンリエルは、喜んでいるんだなぁ。僕も自分のフェチが満足して、喜んでいるんだなぁ。
正に! これがウィンウィンってやつだ!
「では! 今から早速霊装を編むとしよう。眷属を呼び出したままの霊装作成はやった事がないからな。これもまた、良い訓練となるだろう。ありがとう、マスター」
良い笑顔を残して、アンリエルが去って行く。
いやぁ、良い事をした後は気持ちがいいや。
普段着の霊装姿のアンリエルの後ろ姿は何度見ても良い。スタイルが良いので、タイトスカートがめちゃくちゃ似合っている。
綺麗なお尻してるよなー。
それに黒縁眼鏡が加わるのですよ。
やったぜ、俺! こりゃあ、夕飯はドンかつだ!
あ、しまったなぁ。
折角職業の欄が確認出来るのに、アンリエルの職業欄を確認するのを忘れてしまった。また、今度でいいだろう。
取り敢えず、ワチのを確認してみる。
『ビルの管理人』と書いてある。一度ウィンドウを閉じる。開く。やっぱり書いてある。
じーっと、俺が見つめているとワチは二ヘラっと笑う。
「どうしたのです、守様。ワチの魅力に、ある日突然雷に打たれたのですか! ですね!?」
「ちげーわ」
あーぁ、もう口の周りいっぱいにソースをつけちゃって、まー。俺はテーブルの上の紙ナプキンを取って拭き拭きしてやる。
「ありがとうなのです」
こいつが俺のビルの管理人なんだなーっと思う。
……。
設定おかしくないですか!?
ふっー。落ち着け落ち着け、俺。これはもう分かっていた事じゃあ無いか。
俺をこのビルオーナーにしてくれた奴が、何処のどなたかは存じませんが、言葉尻を捉えて宇宙に平気で放り出す奴なんだ。
幼女が管理人、上等じゃあないですかってなもんだよな!
さて、真田丸でも見てみるかな?
と、気軽な気持ちで真田丸の職業欄を確認して、俺は目が点になる。ワチとは違う意味で、一度ウィンドウを閉じて開いてみる。
書いてある文言に変化はない。
執事エルフとか、有能エルフとか書いてあると思ってたんだけどなぁ。
なんだ、こりゃ?
『封印された森の王』
何々? 何なのこれ?
封印された森の王って何すか? めちゃくちゃフラグくせぇんですが!!
「我が主、どうかされたのですか?」
「いや、何でもないよ、無いんだよ! 見せられないよ!」
「そうですか……」
迂闊に真田丸に聞いて良いものかの判断も出来ない。封印が強まる、或いは解除条件かもしれないからな。
今の所は伏せておいた方がいいだろう。
しかし、ビルオーナーが直面する課題か? 森の王の封印って。おかしいんだよ、世界観がー!
あ、そーだ。
「タヌキチ」
『へい、タヌキチお側に』
俺が小声で呼び掛けると、タヌキチも小声で応えて、空中にシュタッと現れる。
こいつのこーゆーノリの良い所は、結構好きだったりする。調子に乗りそうだから、言わないけど。
「これ分かるか?」
俺は真田丸の職業欄をタヌキチに見せる。
タヌキチは渋い顔して、たっぷり時間をかけてから答えた。
『あっしにはさっぱりわかりやせんや』
「そうか……下がれ」
『へいっ!』
と、ノリばかり良くって、使えねータヌキなのである。
こりゃあ、しょうがねぇな。ワチ経由になるけど、ボンキュボーンに聞いてみるしか無いだろう。
俺は心の中にある、後でやる事リストに、この件を放り込んだのだった。
□現在のオーナー状況
職業:四分の一ビルオーナー
オーナーポイント :19759ポイント。
配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ハイゴブリ1、ハイゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1、カースクラー商会の面々3、暴風壁1。
今の迷子:王国王女、王国騎士団長。
今の協力者:とある商会長の孫娘。
ビルサイズ:3フロア。
分割ビルA(ラフシー商会ビル):1フロア。
備考:貴方は懸案事項の一つが上手くいきそうなので、とても幸せだ。




