第2部 12話 『訓練風景ゴブチーム、ゼクウ他の場合』
「突然だが、例外戦を認めよう」
俺がその日、訓練場に到着すると、丁度、リューシンがそう話しているのが見えた。
例外戦とは何だろう?
リューシンの前には、ゴブザとゴブツ、それに彼配下のゴブリンチームが勢ぞろいしている。
「数は力だ。今お前達はこのビルの中で一番の数を有している。だが、それが力に繋がっていない。それが私には我慢出来ない。だから全員でかかってくるがいい。そして一人一人が強くなれ。そうする事でしか、このビルに未来はない」
数は力ね……。
外で聞いている身だが、耳が痛いのは確かであった。いくつか考えている事はあるにせよ、結局は俺達はラシュリーの為に何が出来るのかなのだ。
ウェスティン、ライガール王国、数の力では俺達は到底及ばない。
そのどちらとも戦おうとしているラシュリーの力になれるのか、なれないのか。
全てはそこだ。
だから俺は一刻も早く、ラシュリーとオンヤと合流したかった。パズルのピースはどう考えても、俺達だけでは足りない。
「全員で掛かったとしても、貴方にはもの足りないでしょう。であれば、我も助太刀したいと思いますが?」
「いいだろう」
リューシンはニヤリと笑って快諾した。助太刀を申し出たのは、ゼクウである。
「あぁ、ゴラぁ。ゼクウ。抜け駆けしてんじゃねぇ。助太刀は俺がしようと思ってたのによぉ」
「X字、こう言うものは早いもの勝ちだ。それに我は、真田丸殿に代わって船の操縦もしなければならないのだ。貴重な訓練時間は見逃せん」
「ちっ。嫌味な野郎だ。なら、情けねぇ所は見せんじゃねぇぞ」
「全力は尽くす」
と言うゼクウとX字のやり取りの後ろで、ゴブザがゴブリン達に指示を飛ばしている。
ベンディミア家の襲撃を乗り乗り越えて生き残った17名のゴブリン達が、その指示を受けて四方に分かれていく。
ゴブザは更に風格を増していた。
完全に進化の過程を経た様に思う。
「ポイントステータスオープン」
俺は残りオーナーポイントを確認した。
オープニング後もビルは好調で、ポイントは増え続けている。現在のオーナーポイントは18759ポイント。1000ポイントの消費は問題ないと判断する。
「タヌキチ」
『はいでやす。守さん』
「職業ステータス確認スキル追加だ」
『了解でやす。ポイント消費するでやす』
以前に確認した部下の職業を確認する能力を追加する。消費ポイントは1000ポイントである。
部下の力を正しく知るのも、オーナーの勤めなのだ。
『本音は?』
「面白そう! 見たい!」
どっかのタヌキが白い目を向けて来るが、面白そうって大事だと思うよ。好奇心こそ、人を突き動かす最高の動力源だもの。
俺は新たに得た力を使って、ゴブザのステータスを確認する。
ふむふむ。ハイゴブリンリーダーだと?
ゴブリンリーダーは職業だろうけど、ハイゴブリンって事は、種族が変わってんじゃね?
それともクラスアップなのかね? 説明文が無いので、いまいちわからん。
俺はゴブツのステータスも確認する。
ハイゴブリンシャーマンか……。ゴブツもゴブザ同様、種族が変更された様だ。ゴブツも見た目の変化は著しく、俺達でも雄雌の区別がはっきりわかる様になっていた。
職業の他に種族的な物まで変わるのか。
この先のゴブザ達の進化には要注目だ。
叩き上げが伸びていくなら、ゴブ達を増やしていくのも有効と思えるからな。
俺がゴブザ達のステータス確認する間も、ゴブザの指示は続き、ゴブリン達は配置を済ませて、ゼクウは姿を消していた。
「よし、準備はいいか?」
「ゴブッ!!」
ゴブザが吠えて攻撃が開始された。
まずリューシンを四方から取り囲んでいた、ゴブリン達が駆けて、四方八方から同時に襲いかかっていく。
迎え討つリューシンは涼しい顔で、一歩も動いていない。上半身を狙う攻撃は体重移動のみで交わして、足を狙う攻撃だけを木刀で弾き飛ばしている。
背中に目があるかの様に、どこからの攻撃もまるで当たらない。
完全に指導モードである。
リューシンの反撃により、ゴブリン達が手にした木刀を次々取り落としていく。
「俺は一番隙がでかい所を狙っている。痛みと共に、自分達の戦いを見直すが良い」
不意に木刀から左手を離したリューシンは顔の前で、何かを捕まえていた。
「惜しいな。だが、まだまだ」
「くっ!」
バチバチと言う雷と共に、ゼクウが姿を現わす。
「その擬態にはまだまだ改善余地がある。音、気配、素の貴様の技術が未熟だ。見直せ」
「うぉお」
そのまま片手でリューシンはゼクウを持ち上げ、力任せに放り投げてしまう。
すげぇ。
真正面から組み合ったのは、ゴブザである。木刀を捨て、純粋な力勝負に持ち込むつもりなのだ。
「面白い狙いだが、俺は力勝負でも船長以外には負けた事はないぞ」
当然なのだろうが、このリューシンよりもシルバーは強いのだ。
うちはなぁ……などと、考える。いやいや、うちはほら、海賊じゃ無いし、ビルオーナーだから!
ね?
……努力します。自分なりだけどな。
がっぷり組んだゴブザであったが、その腕がはち切れんばかり盛り上がっても、リューシンの体は動かない。まるで巨大な岩でも持ち上げようとしているみたいだ。
一人相撲が続き、最後はリューシンがゴブザを放り投げて終了であった。
リューシンの奴、息一つかいてないよ。
「息を整えたら、もう一戦だ。少しでも良い。何かを摑み取れ。課題はそれぞれ違うのだからな」
訓練は続くのだ。
強い刀がハンマーで叩かれて生み出されるかの様に、うちの連中は今打たれている。
「よっしゃ、次は俺だ!」
「X字、貴様だけでは相手になるまい。この儂も助太刀してやる!」
リューシンの許しも得ぬまま、X字とガイバーンの脳筋コンビが突っ込んでいく。
「ほほう、行儀作法も知らぬ奴らに手加減をする理由などないな」
俺の実力じゃ、何が起きたのかはわからない。
リューシンが瞬間移動したかの様に、別の場所に出現し、X字とガイバーンが体がプルプル震えていたくらいか。まるで影を置いて来るかの様な神速の動きだった。
「未熟者らめ。精進せい」
「ぬぐはぁ!!(X2)」
そう言って、X字とガイバーンは仲良く崩れ落ちたのだった。
あ、ゴブツと一緒にワチが、倒れた連中の治療している。
『偉いでやすねぇ。ワチさんは』
「おい、タヌキチ。何故だか、俺の耳に棘が刺さった様に感じるのだが」
『守さん、それは気のせいでやす』
と、タヌキチは涼しい顔である。
いかん、このままではひょっとして、このビルで俺が一番役立たずになってしまうかもしれない。
……なーんてな。
俺は俺だ。自分を卑下しても始まらない。
こうやって必死に成長している、みんなをどう扱っていくか、それを考えるのが俺の仕事だ。
後は戦力増強を考えるのも俺の仕事だよなぁ。
□現在のオーナー状況
職業:四分の一ビルオーナー
オーナーポイント :17759ポイント。
配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ゴブリ1、ゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1、カースクラー商会の面々3、暴風壁1。
今の迷子:王国王女、王国騎士団長。
今の協力者:とある商会長の孫娘。
ビルサイズ:3フロア。
分割ビルA(ラフシー商会ビル):1フロア。
備考:ハイビルオーナーとかに進化出来ないか? 貴方はくだらない事を考えている。




