第1部 33話 『思いがけない新たなる仲間』
「なんじゃ、こりゃ」
『どうしたでやす?』
俺が疑問の声を上げると、タヌキチが素早く反応してくれた。
「オーナーステータスオープン」
俺がそう言うと、空中に半透明なウィンドウが浮かび上がる。オーナーステータスって何だよ、だせぇよって最初の頃は思っていたが、今はもうなんか普通だ。人間何にでも、慣れていく物なのである。
『それでどうしたでやす?』
「見てみろよ、職業の所」
『へい。四分の一ビルオーナーとありやすね』
「……おかしくない?」
『……おかしいでやすかね?』
「じゃ、四分の三がなんなのか教えてくれよ」
『……』
いや、わかるぜ? この後の展開は大体読めるんよ? どーせ、次に成長したら『半人前ビルオーナー』とかになるんだろ?
それをやりたいが為の四分の一ビルオーナーって、もうね。そう言う所よ。こう言う所が、色々おかしいだろって言ってんの。
この世界を創造した奴は、いずれぶっ飛ばしてやらないとダメだろ。
適当過ぎ。
そう思うなぁ。
『まぁまぁ、守さん。ここは一つおちついてでやすね』
ナビゲーターがタヌキとかなー。
それもおかしいよなー。
『なんか悪寒がするでやす』
あ、逃げた。逃げタヌキである。
まぁ、駆け出しよりは進化したって事なんだから、良かったって事になるんかな。
一つの戦いを終えて、得たものあり、失ったものもある。それを考えれば、色々と成長した事は間違いない。
少なくとも、配下の人数は増えたし、特に押し掛け商会なんてのも配下に組み込む事になってしまったしな。
……ん、てとてとと、こちらに向かって歩み寄って来るのはワチである。
「守様、守様! お片づけが終わったら、美味しいご飯です?」
「先に風呂入った方が良いと思うな。うむ。綺麗になった所でみんなで飯にしよう」
「お風呂でご飯ですね! ワチは頑張るです!」
『うぉぉおお!』と唸って、ワチは自分の身長もある程の箒を担いで、走っていく。
うんうん。
お風呂でご飯じゃねぇけどな。
今、俺達はみんなで、ベンディミア戦の後片付けの真っ最中である。勿論、あんな事があった後なので、風呂屋も喫茶店も休業となっている。
予定外の休みの延長となってしまった。
そんな中でもラフシー商会は営業しており、アミエル達、カースクラー商会の面々は、ビル外に机を並べて来客の対応をしている。
もう、アミエル達を妨害するベンディミアはいない。楽しそうに仕事をしている彼らを見るのは、中々微笑ましいものがあった。
襲撃者達の身柄及び、多数あった奴らの遺体は、カフス・アグラが全て引き取ってくれた。意図はわからないが、正直助かった。
ラッキー。
カフスが、ただただ良い奴だなどと言う錯覚も起こしかねない。やり手の彼の事だ。何がしか、利益があるんだろう。
「おう、そこの。これは一体何処に運べばいいのかの?」
聞いたことのない野太い声に振り返ると、大男の異星人が、俺を見下ろしていた。岩みたいな体をしている。
んー、誰だ?
大男は瓦礫の塊を担いでいる。
「外に瓦礫置き場があるから、そこに置いてくれ」
「おお、そうか。すまぬな」
そう言って大男はのっしのっしと歩いていく。だが、大男は、途中で思い出した様に立ち止まり振り返った。
「お主とは初めて会うのう。儂はガイバーンだ。お主の名前は?」
ガイバーン? はて、どっかで……。
「荒海守だけど」
するとガイバーンと名乗る大男は担いでいた瓦礫を落として、急に笑顔で駆け寄って来たので、普通にビビる。
何? 何、なんなの?
加減はしてくれていたのだろうが、肩をばんばん叩くものだから、衝撃が凄い。
「そうか、お主が彼奴の言う『お館様』か!」
「俺の事をお館様と言う奴は一人しかいないな。X字の知り合いかい?」
「知り合いと言うよりも、命をやり取りした仲よ。バッサリ斬られて負けてしまったがの! かっかっかっ!」
そう言うと、ガイバーンは包帯の巻かれた懐を指し示した。
おいおい、X字と命のやり取りして負けたガイバーンって言ったら、敵の主要メンバーの一人じゃないか。
俺は今更ながら、こいつが誰なのか思い出していた。
ドドドド!
地響きの様な音がして、駆けつけたのはそのX字であった。
「お館様、一体どうしやした? あ、てめ、ガイバーン。後で紹介するから、大人しくしてろっつっただろうが!」
「X字。周りが働いているのに、儂だけ寝てるなど出来る訳がないだろうが。かっかっかっ」
「お前はつい昨日まで敵の人間だったんだぞ。俺がお館様に紹介するまで、おとなしくしてろって事だろーがよー」
「それはすまぬ」
「おい、X字。どう言う事なんだ?」
するとX字は、床に片膝を立ててひざまずくと、俺に向かい深く頭を下げたのだった。
「実はこのガイバーン。命を取り止めた後、俺達の仲間になりたいと抜かしやがって、お館様に確認を取ろうと思っていやした!」
仲間……ねぇ。
俺が視線を向けると、ガイバーンは床に両膝をついて、俺に向かって深く頭を下げたのだった。
所謂、土下座ポーズである。
「儂の名はガイバーン。大将! 宜しければ、儂を貴方様の配下に加えて頂きたい」
ガイバーンが俺の事を『大将』と呼んだ事で、俺の魂に震えが走った事は間違いの無い事実だ。
大将。
俺の事をそう呼んでいた気のいいドワーフはもういない。しかし、種族も見た目もまるで違うが、このガイバーンと言う男は何処かマキシムを思い出させるのだ。
それに……大将って呼び名か。
少しの間、逡巡したが、俺は自分の直感を信じる事にした。
「ガイバーン!」
「はっ!」
「いいだろう。俺の配下に加わる事を許してやる。けど、お前は俺達を襲撃して来た奴らの仲間だったんだ。それはわかるよな?」
「勿論、わかります」
「なら、いざって時はみんなの為にその命を使ってくれ。お前がみんなを思えば、みんなもお前を思ってくれる筈だ。ここはそう言う所なんでな」
「わかりました。大将! 感謝致しますぞ!」
「X字。ちゃんと面倒見てやってくれよ」
「任してくだせぇ、お館様!」
こうして、俺は敵であったガイバーンを仲間にする事になったのである。
「おーいっ、すいませーん。ちょっと聞きたいんだけれど、いいかい?」
今日は良く声をかけられる日らしい。
振り返ると一通の手紙を握り締めた、配達人らしき風貌の男が立っていた。
「ここにオンヤって人はいるかい?」
「あぁ、今はちょっと用事で留守にしているけどな。アンタは誰だい?」
「俺はビームス・コロンバインって言う配達人よ。オンヤ宛の手紙を預かっていてな」
「そうか。良ければ俺が受け取って、オンヤに渡しておいてやるけど」
「それは助かる。じゃここにサインを頼む」
俺は日本語で、荒海守とサインをした。
「こりゃなんて、読むんだい?」
「荒海守だよ」
「え!? 荒海っていやー、あの四大商会に新たに参加したって言う」
まぁ、そんな事もありましたね。
すると、俺がラフシー商会の会長と知って、ビームスと言う男は申し訳なさそうに、問いかけて来たのだった。
「風呂屋と喫茶店はいつ再開されるんですかぃ?」
どうやら、ビームスと言う男は、生粋の風呂好き人間の様だった。
思えば、このオンヤへの手紙が、俺達の新たなる戦いの始まりとなったのである。
□現在のオーナー状況
職業:四分の一ビルオーナー
オーナーポイント :25245ポイント。
配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ゴブリ1、ゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1、カースクラー商会の面々3、暴風壁1。
今の協力者:狐面2。
ビルサイズ:3フロア。小さめ。
備考:四分の一ビルオーナー……ぷぷぷ。




