第1部 32話 『押し掛け商会と、とある押し売りの件』
既に、ローグライン・ベンディミアにはご退場頂いております。
厳つい顔のカフスの配下が連れてったんで、ろくな事にはなっていないだろう。
合掌。
ひと段落ついて、会議室の中には、カフス、アミエル、そして何とバラモンのおっさんがいた。勿論、その三人に加えて、俺とアンリエルもその場にとどまっている。
俺達がいる事が、まるで当然かの様にカフスもアミエルも何も言わない。
バラモンのおっさんが、チラリと視線を向けて来たので、ニヤッと笑いかけてやると、肩をすぼめてシュンとしてしまった。おもしろっ。
「では、満場一致でベンディミア家の四大商会会議への参加は一時取り止めると言う事で宜しいでしょうか?」
「異議はありません」
「異議……なし」
バラモン、元気ないな。自慢のカイゼル髭も、こうなったら、逆に哀愁を感じる。
「ちょっと疑問なんだが、完全な廃止で無く、一時的でいいのか?」
ちょっとだけ、お節介で聞いてみる。
カフスは笑顔で頷いた。
「ええ、この幻影都市が最も成長した時期は、四大商会時代でしたからね。僕は余り商会を減らしたいと思っていないのです。三大商会時代は正直な話、良い時代ではありませんでした」
「ふーん、なんだか、もっと制度改革を考えているって顔だな」
「さて、どうでしょうねぇ」
ハッ。危ねぇ。深入り厳禁だな。
好奇心と言う奴はいつでも危険である。気をつけねば。
なーんて事を考えていたら、アミエルが小さく手を挙げていた。
「どうしました?」
「実はカースクラー家として、四大商会に参加するのは止めようと思っているんです」
ここで、俺の妖怪アンテナが反応したのである。これは、なんだか、とってもめんどくせぇ予感!
「ワタシ達、カースクラー商会はラフシー商会の傘下に入ろうと思っております。ですので、四大商会への参加の件も、是非ラフシー商会にお願い出来ればと思っています」
は? なんだ、それ。聞いてないぞ。
ラフシー商会? ラフシー……おいおい、まさか。
「ラフシー商会とは聞きなれない名前ですねぇ。どう言う意味があるんですか?」
「はい、『荒海』と言う意味がありんす」
「あー、なるほど。それは素晴らしい」
ちょっと待て。
「そんな商会はねぇ!」
「荒海君が新たに立ち上げる商会と言う事ですよね。カースクラー商会はその傘下に入られたいと?」
「はい! 是非、そうしたいと思っております」
「人の話を聞け! おい、バラモンのおっさん! おかしいだろ? おかしいよな!」
すると、バラモンは真顔ですっと右手を差し出して来やがったんだ。
「荒海殿! 今後はダータネル家と仲良くしてくだされ!」
「日和ってんじゃねー、このバカチンが!」
この話は結局何だかんだで、押し切られてしまう結末を迎えるのである。
アミエル以下、カースクラー家はこうして俺の配下におさまる事となった。
勝手にな!
存在もしないラフシー商会とやらが、俺の目の前で、勝手に! 作り上げられていく。
カフスとアミエルだけでなく、バラモンも何故かノリノリで話し合っているのがすげー引く。
なんだ、この展開は!!!
帰りの宇宙船の中である。
どうも、ラフシー商会会長の荒海守です。
「副会長のアミエル・カースクラーよ。宜しくお願い致します……なーんてね」
「なーんてね、じゃねぇよ。勝手にあんな話進めやがって」
「そう不貞腐れるもんでもないさね。好きだろ? 権力」
「昔は好きでした。今はめんどくせぇ」
「そうお怒りでないよ。実質的な事はアタシらカースクラーがやるんだから、守様はでーんと構えていてくれればいいんだよ」
アミエルは笑っている。
くそー。
カースクラー商会の連中がカフスと対等の関係を築ける様に、ベンディミア家の制圧に協力したのが裏目に出ちまった。
内の連中の実力を知ったカフスは、益々俺との関わりを強めようとするだろう。
俺の将来は、ローグライン・ベンディミアか? あんな権力でギトギトになった爺さんにはなりたくねーな。
はぁ。なるべくクリーンに生きて行こう……。
『自動運転をセットしました』
運転席の方からそんな音声が聞こえて、振り返るとシャルケとトーガスが、俺を見つめていた。
「守様、少し宜しいですかい?」
今度はなんだよ?
ため息をついて二人についていく。アミエルがついて来ようとするが、『男同士の話なんで』とシャルケが断った。
二人に連れられたのは、通路の奥である。
「おいおい、こんな所に連れて来て一体なんの用なんだよ?」
いきなりボコられるとかないよな?
内心少しビビっていると、シャルケが顔を近づけて低い声を出した。
「守様、いずれお嬢を貰って頂けるんですよね?」
「ハア?」
いきなりの事で、ちょっと何を言っているのかわからない。ガシッと背後から腕を掴まれて、振り返るとトーガスも怖い顔をしている。
「守様、お嬢と結婚する。いつする?」
「なんでそーなるんだっつーの!」
「初恋なんでやすよ! わかるでしょう、守様! お嬢がアンタの話をする時の目は正に乙女なんです」
「失われた青春ー!」
「わかんない。なんだか、全然わからないよ!?」
「責任、とってくだせいよ!」
「青春ー!」
「責任も何も、手なんか出してねー!」
二人をどうにか振り切って、廊下に逃げる。なんだあいつら、いきなり極端な事を言い出しやがって。
ふと、廊下の先を見ると、アンリエルが窓際に立って外を見ているのが見えた。
俺は頭をかいた。真面目な奴だからな。思い詰めるのはわかるんだけど……。
俺は背後から、アンリエルに歩み寄ってその頭をチョップ!
「マスター……」
完全に魂が抜けているらしく、俺と目があっても例の病気は出ていない。
「お前なぁ。言っただろ。全部の責任は俺にあるって。それに今回の事で、マキシムの仇は取ったんだ。いつまでも落ち込んでんじゃねー」
「だが、あの時、ワタシがアブレーチェの動きに気づいていてれぶぁ……!」
俺は両手でアンリエルの頬を抑えていた。
変な声が出たのはその所為だ。
「お前なー。思い上がるのもいい加減にしろよ?」
「思い上がふ?」
「そーだよ。自分が自分がって、自分しか見えてねーじゃねぇか! あん時、アブレーチェを止められなかったのは、アンリエル一人か? そーじゃねぇだろ。
俺を含めて、全員が止められなかったんだ。そりゃ後悔だってしてるさ。けどな、マキシムがずっと俺達が後悔してるのを望むか? どうなんだ?」
「の、望まなひ……と、思ふ」
「そうだろう? お前が後悔してちゃ、みんなが前に進めねーんだよ。振りでもいいから、ちったぁちゃんとしろ。どうなんだ。出来んのか?」
こーゆーのは、気合いだからな。
俺は真っ直ぐにアンリエルの瞳を見つめた。すると、顔に若干の赤味がさしたんだ。
いい兆候じゃねぇの。
「で、出来ると思ふ」
「思うじゃねぇ、やるんだよ。お前は俺の剣なんだろ? どうだ。やれんのか?」
「や、やれる。やれるに決まっている!」
そう言って、アンリエルは俺の手を振りほどいて、そして俺を見つめて顔を真っ赤にして固まったんだ。
そして俺を置いて走り出す。『わぁわぁ』と、言葉にならない叫び声を上げていたな。
お、病気復活か。
これで少しはアンリエルも、自分を取り戻す事だろう。うむうむ。
そうしてブリッジに戻ろうとして思い出した。
しまった! 今の隙をついてアンリエルを騙くらかして、セクシー女教師に必須の眼鏡と言う神アイテムを装備させれば良かったー。
えーい、惜しい事をした。
□現在のオーナー状況
職業:四分の一ビルオーナー。
オーナーポイント :25245ポイント。
配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ゴブリ1、ゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1、カースクラー商会の面々3。
今の協力者:狐面2。
ビルサイズ:3フロア。小さめ。
備考:このタイミングでそれ? と言う事を貴方は考えている。




