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とあるビルオーナーの宇宙戦記  作者: ヨシペイ。
第1部 宇宙漂流と幻影都市
31/66

第1部 31話 『巡る因果は彼の者に返る』

 言葉の余韻を噛み締めて、ローグラインは表情を作るのが困難になっていた。



 く……く、く。

 くくく、ハハハ!

 これは僥倖! 思わぬ、僥倖だ。



 ローグラインはてっきり、守が見せた瓶はアブレーチェから奪った物だと勘違いしていたのだ。

 我が家から、盗まれた物だと?

 盗んだ物に一体どんな証拠能力があると言うのか。おかしい。笑えるわ。これは全く、茶番もいい所だ。



「知らんな」

「何だと?」

「お前は一体誰に口をきいているのか、わかっているのか? 私はベンディミアだぞ。ベンディミア家の長、ローグライン・ベンディミアだ」



 鋭く言い放つ。

 恐らくこいつは震え上がる筈だ。この幻影都市で私に逆らって生きていける者がいる筈が無いのだ。





 ……んー。

 これまでだな。

 俺は判断を下した。

 下手な演技もここまででいいだろう。



 チラリとアンリエルの方を伺うと、めちゃくちゃ不機嫌な顔をしてるし、俺も正直もうこの男が調子に乗っている姿を見たくない。



「オイ……もう、いいんじゃねぇのか。カフス?」

「おや、荒海君は淡白ですね。釣り針に掛かった魚が抵抗するのは、釣りの醍醐味ですのに」

「なんだ。貴様ら何の話をしているのだ?」



 俺達の様子に怪訝な表情をしたローグライン・ベンディミアに、俺は人差し指を立ててそれを突きつけてやった。

 どこぞの裁判ゲームじゃ大抵こうするってーポーズである。ババーン!



「バーカ、お前はもう終わってるんだよ。ローグライン・ベンディミア。過去にアミエルを不幸のどん底に突き落とし、俺のビルを襲撃させ、マキシムや他の者達の命を奪った。その報いを受ける時が来たんだよ」

 俺は顎でカフスに合図を送る。



 カフスが懐から取り出したのは、俺が先程ローグライン・ベンディミアに突きつけたのと全く同じ小瓶である。



「何故、お前までもがその瓶を持っている!?」

 続けてカフスが、もう一つ同じ瓶を取り出すに至って、ローグラインの表情は目まぐるしく変化した。



「どうします?」

「俺はいい、お前が説明しろよ。カフス」

「では……」



 カフスは語った。瓶の一つは、宇宙海賊ウェスティン・ラパーザ絡みで手に入れた事。無論オンヤの持っていた小瓶である。そして、もう一つが……。

「貴方の部下、アブレーチェが持っていた物です」



「何を馬鹿な……」

「貴方はきっとこう考えていた筈だ。四商会会議となれば、必ず二対二で膠着状態になる筈だ。そうなれば、ベンディミア家が一番力を持っている。どんなに足掻こうと、自分の意見が通るだけなのだ、と。違いますか?」

「ハッ! 何を言うか?」



「力がある商会の意見が通る。ならば今、貴方の商会は如何でしょうか? 今、貴方の家は力を有しておりますか?」

「何だと……」



 こうなって来ると、どーせ苦しい言い訳しか出ないであろうローグラインを見てるよりも、バラモンっておっさん見てた方が面白い。

 日和見主義って話だけど、いまやおっさん、首の動きを総動員させて、あっちをキョロキョロこっちをキョロキョロ。黒目も踊ってるし、ぶっ倒れる寸前じゃないかって位に慌てている。

 何を考えてるか丸わかりだし、動きがとても個性的です。面白い。



 俺はバラモンのおっさんを見ながら、横目でローグラインに向けて言い放つ。

「もう、諦めろ。ローグライン。アブレーチェ達は全員俺達が殺した。お前の元には誰一人戻ってこねーぞ」

「知らん知らん! 私は不愉快だ!」



 お、逃走か。

 だけど、そうは問屋が卸さんわな。



 動いたのはアンリエルだった。霊装としての剣を呼び出し抜き放ち、突き付ける。切っ先が眼前に出現し、認識するまで、ローグラインは全く動きを捉えちゃいなかった。

 反射で出た冷や汗を、恐らく多分、今頃認識している筈だ。



「勝手に動くな、下郎……」

「……」

 その上、アンリエルから剥き出しの殺気を放たれては、言葉も無く息を飲むしか出来ない。



 俺はアミエルに目で合図を送った。

 頷いたアミエルが、部屋の外に合図を送ると、やって来たのは、アミエルの部下、シャルケとトーガスである。その後ろには、二人に連れられたブーチの姿があった。



「ブーチ……」

 ローグラインは睨みつけるが、ブーチは視線を合わせ様とはしなかった。

 黙り込むブーチに、カフスが近づいて何事かを囁きかけると、ブーチはまるで壊れたレコードの様に話し始めた。



 元々、死の薬の商売に手を出したのは、ローグライン・ベンディミアであった事。裏でそれを咎めたのが、ザザ・カースクラーであった事。そのザザを嵌めて、立場を逆転させ、彼を四商会から追放した事。



 死の薬を発展させ、宇宙海賊『残虐公爵』ウェスティン・ラパーザと協力して、死の兵士を作り出す薬を作っている事まで暴露しても、ブーチは止まらなかった。

 彼の知る限りの悪事を話し終えるまで、それは終わらなかったのである。



 実は既に、ベンディミア家の主要な建物には、俺とカフスの手勢が共同して襲撃を行なっている。勿論、今この会議室の外で待機していたローグラインの護衛も既に制圧済みだ。



 襲撃は今も、現在進行形で行われている。

 初めから、ローグライン・ベンディミアに出口は無かったのだ。



 この屋敷に足を踏み入れた瞬間、いや、アブレーチェ達の襲撃を俺達が撃退し、カフス・アグラが俺達の提案を受け入れた時には終わっていたのだ。



 マキシム、仇は取ったぜ……。



 そう思っても、気分はまるで晴れない。全てを知ったローグライン・ベンディミアが床に崩れ落ちている姿を見ても、ちっとも気分は良くならなかった。

 こんな奴の気持ち一つで、俺達は襲撃され、マキシムは命を落としたのだと思う。



 強敵だった。尊敬出来る程、手強い敵だった。せめてそう思わせるぐらいはしてくれよ。

 だが、そうじゃ無かった。

 ローグライン・ベンディミアは人の命を弄ぶ、ただのクズ野郎でしか無かった。

 解っていた事だ。



 だから、俺は、アミエルにもアンリエルにもローグラインの命を決して取らせなかった。

 人を刃で貫けば、返り血を必ず浴びるものなのだ。彼女達に浴びせるには、彼の血は余りにもドス黒い。

 そう言う事だ。



 俺はアミエルを抱きしめて、もう一つの空いた手で、アンリエルも同じ様に抱きしめてやった。

 彼女達は涙を流していた。

 俺よりも深い葛藤があるのだ。

 泣きたい時は泣けばいい。特にこんな後味の悪い事をした時には、な……。



 俺はがっかりしていたけど、一つだけ、俺のユーモアの琴線に触れた出来事があった。

 それは、淡々と進行していく事態の中で、バラモンっておっさんだけが取り残され、ずっーとアタフタしてて、まるでフラワー◯ックみたいだったって事だ。

 日和見で馬鹿なのかも知れんが、何となく憎めないおっさんであった。





□現在のオーナー状況

職業:駆け出しビルオーナー。

オーナーポイント :25245ポイント。

配下:幼女1、タヌキ1、老エルフ1、ゴブリ1、ゴブシャ1、ゴブ17、ビキニアーマー1、コロボックル14、XYZ各1。

今の協力者:狐面2、落ちぶれ商会の面々3

ビルサイズ:3フロア。小さめ。

備考:ベンディミア家との闘争、ここに決着。

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