一人ぼっちはイヤだ
キキイはゴーリッキに言われた通り教会で宿屋の場所を聞くと一直線に向かった。そして、チェックインをすませるとリュックを放り出しベッドへ飛び込んだ。
(疲れたぁ)
列車の旅の疲れもあるけれど、それ以上に、見知らぬ大人との会話にくたびれてしまった。
慣れない一人旅。
初めての土地。
キキイは全てを自分で決めなければいけないことに早速疲れを覚えた。
大した準備もせずにコーバリまで来たのだから、悪いのは自分だった。勢いに任せてコーバリを訪れたのまで何とかなったし、カルネとクグロフを発見したのはラッキーだった。だけれども、肝心のリーリとユイに連絡がつかない。
キキイはこの行き場のないぐったり感をどこかにぶつけたかった。
「リーリのせいだっ」
キキイは大声で叫ぶと、ベッドの上をゴロゴロ転がった。
そして、またメールボックスを開いた。
〈No mail〉の文字が映し出された。
キキイはよっこらしょっと体を起こした。
「・・・とりあえず外を歩くかぁ」
キキイはリュックからショルダーポーチを取り出すと部屋を出た。
列車を降りて最初に目に付いたのは『海に囲まれた街コーバリへようこそ』と描かれた機械仕掛けの看板だった。古びた駅にあるありふれた看板で、全然、海っぽさんなて感じられないものだった。ただ、実際に駅から見えたゴーヤ浅瀬はとても綺麗だとキキイは思った。
でも、街中を歩けば誰でも気づく。
駅から少し歩くと浅瀬は遠く向こうに離れてしまう。そして、コーバリの市街地に近づくと、歴史を感じさせる石造りの建物や街中を自由に行き来する沢山の機械人形が目に飛び込んで来る。何より、世界最大のギーリク大図書館の周辺は市街地のロマンチックな雰囲気とまったく異なっていた。
街の真ん中まで来ると、潮の匂いもしないし、波の音も聞こえない。
(まぁ、当たり前かぁ。近くに浅瀬があると不便だもんなぁ)
中央広場まで来ると、謝肉祭を楽しむ人々でゴーヤ浅瀬のキラキラ風景なんて消し飛んでいた。
キキイは例のパンフレットを広げると、謝肉祭のイベントをチェックした。
「何なにー、この後、市長による演説が中央広場でありかぁ」
ショルダーポーチに折り畳んで入れていたせいで、パンフレットはくしゃくしゃになってしまっていた。キキイはシワを綺麗に伸ばすと、リーリが参加しそうなイベントがないか一つ一つ調べた。
(退屈そうな市長の演説)
(機械人形による芝居)
(お料理コーナー)
色々な催しが行われるようだった。けれども、キキイにはリーリが一番好みそうなのはギーリク大図書館以外に考えられなかった。でも、ゴーリッキによれば立ち入り禁止らしい。
どうしよう。
雑踏の中を一人で歩き回るのは疲れるし、一人ぼっちを感じてしまう。それはイヤだ。
仕方なしに、キキイは市長の演説を聞くことに決めた。もしかすると、リーリとユイも聴きに来るかもしれない。
キキイはそんな期待を抱だきながら、広場に並ぶ屋台で時間を潰すことに決めた。




