子供はツンツン、大人はプンプン
プーミの出し抜けの行動にリーリの心臓はドキドキした。
けれど、ユイは平然としている。
プーミも何もなかったように平気な顔をしている。
ひとり緊張を高めているリーリは自分だけ場違いな行動を取っているような気分になった。
「静かですね、誰もいないようです」
「宝石が展示されている訳ではないものね。ここには古い本が置かれているだけだから、人は必要ないのじゃないかしら。監視用の機械人形もいないようだし、監視装置もなさそうだわ」
「うーん、そんな感じです」
ユイは耳を澄ませて音を拾ったようだった。
「一つ、二つ、・・・三つ。古文書が保管されていそうな部屋はいくつかありそうです。厳重に扉が閉ざされている部屋もありますね。建物の一番高い場所に一つ、そして、地下の階に一つ。他はバラバラですね」
ユイは頭の中に広げた図書館の地図を検索しながら答えた。
ギーリク大図書館は考えていた以上に広い。
全ての場所を訪れていては朝日が登ってしまうかもしれない。
せめて場所を絞り込むヒントがないと館内を彷徨うことになってしまいそうだった。
「私は地下の部屋に保管されている可能性が高いと思うわ。古文書はこの世界最大の図書館であるギーリク大図書館で最も大事にされている本だもの。もしも、火事があった場合に備えて火が移りにくい場所に置かれているはずよ」
そうなのだろうか?
保管方法など考えた事もなかったリーリはどう返事をしたら良いのか分からなかった。一般に公開されているのだから、古文書専用の部屋があってそこを目指せばたどり着くと何となく考えていた。
「リーリ君はどう思うの?」
「分かりません。古文書が保管されている場所まで司書の人に聞くわけにはいきませんでした。それに、古文書はこの図書館の目玉なので目立つ場所に展示されているのかな、くらいに思っていました」
リーリは自分の考えを素直に口にした。
そもそも、こうして夜に忍び込むのも予定外だった。
図書館を訪れて、古文書の申請をして、ユイに本の全てを読み取ってもらい、それでコーバリでの用事は済むと考えていたし、半日で終わる簡単なことだと思っていた。それなのに、迷路の様なギーリク大図書館で古文書を求めて夜中に探し歩くなんて想定外だ。
「ユイも、プーミが言うように地下の部屋から探してみるのがいいと思います。当てずっぽに歩いても、この広いギーリク大図書館の館内のウロウロしてしまうだけです。プーミの推論を頼ってもいいんじゃないですか?」
「他の部屋にある可能性は?単に、厳重に閉ざされているっていうだけでは、そこに古文書があるとは限らないよ。それに、これだけ大きな図書館なんだから人目に付く所に置かれているかもしれない」
「それは・・・リーリの言う可能性がないわけではありませんが・・・他に目ぼしいヒントがありません。リーリの推測が間違っていないのなら、プーミの推理も同じぐらいに正しいと思います。ユイが今持っているデータから言えるのはそれぐらいです。ですから、リーリの言う人目に付く所を探しても、地下の部屋から探索を始めても、変わりないと思います」
ぐうの音も出ないくらい正論だった。
ユイがプーミの側を持っているようでリーリは面白くなかった。
冷静に考えれば、ユイ以上の方位磁針を持たない自分が言葉を重ねても同じ結論にたどり着いてしまうの当たり前だ。ただ、ユイを納得させるだけの、プーミより論理的な意見を言うだけの、即興的な言葉をリーリは持っていなかった。
「それなら決まりね。リーリ君も異論はないわよね?」
何となく、からかう口調にリーリには聞こえた。
もちろん、プーミはそんな風に言っていない。
ただ、プーミには自分の態度がツンツンしていて子供じみて見えているのかもしれなかった。
「二人がそう言うのなら反論はありません」
売り言葉に買い言葉ではないけれど、納得してというより渋々といったわけではないけれど、リーリは拗ねた口調に響いてしまったのかなと二人の笑う姿を見て思った。
(何が可笑しいんだろ)
リーリ自身は真面目に言ったつもりだったけど、二人には違って聞こえたようだった。
「ふふ、それなら、早速向かいましょう」
プーミはそう言うとユイの背中を押してスタスタ歩き出した。




