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心配は肩こりのもと

「ユイ、手前のドライバーとT型レンチ、取ってくれる?」

「はい、これですね」

「あと、小型べンチお願い」

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

 リーリは慎重に裏口に使われているカモフラージュ装置を外し、裏口の錠も手際よく解除した。

 目に見る限り監視装置はなさそうだった。

 ユイもそれらしいものはないと言っている。もし、ユイにも気付けない装置があるならこの場であれこれしても無駄だ。

 諦めるしかない。

「リーリ、どうですか?ドアは開きそうですか?」

「うん。装置を停止させたから開くはずだよ」

 ユイはその言葉を聞くと鉄製のドアに力を加えた。

 すると、ビクともしなかったドアが内側に少し開いた。

「わっ。開きましたよ、リーリ」

「すごいわね、十分もしないうちにドアを開けちゃうなんて」

「どうもです」

 リーリが作業に取り掛かっている間、プーミは何もしなかった。

 何もする必要はないし、出来ることも何もないだろう。

 だけれど、プーミのために頑張ったような気がして面白くなかった。

 自分たちが現れなかったらどうするつもりだったのだろう

「さ、早く入りましょう」

「そうですよ。リーリも早くしましょう」

「分かってる」

 リーリは道具を鞄にしまうと、ドアが閉まらないように支えてくれているユイの後に続いた。


 真っ暗闇の一歩手前。

 そんな感じの夜の館内だった。

 一応、といった感じでポツリポツリとオレンジ色の明かりが灯されている。

 けれども、頑張って目を凝らせば何とかなるという訳でもなく、暗さを一層深めるためだけに役立っていた。

「お化けが出そうな暗さね」

「本当ですね、奥の通路は真っ暗で見えません」

「温かいのは嬉しいけど、暗いのもなんだかイヤね」

 二人の言う通り不安定な闇が広がっている。

 リーリも星明かりに照らされた夜道の方が明るく感じられた。

 落とし穴があっても絶対に気付けない、そんな自信を持たせるぐらい真っ暗がどこまでも続いていた。

 夜の静かなざわめきも図書館の分厚い石壁に阻まれて、まるで掃除機に吸い込まれてしまったかの様に何処かへ行ってしまっていた。

 ただ、お昼の図書館と変わらないのは、本の匂いが変わらず満ちている所だった。

 昼と夜で雰囲気がガラリと変わっているのにリーリは戸惑ったけれど、馴染みある匂いに触れて少しほっとした。

 

 と、気を抜いた瞬間、背後でドアが勢いよく閉まる大きな音が鳴り響いた。

 リーリは飛び上がりそうなほど驚いた。

「ドアの音ってこんなに響くのね」

 最後に館内に足を踏みたプーミは驚いた様子もなく悪びれた様子もなかった。

 リーリは音を立てない様に忍び足で館内に踏み込んだ。もし館内に見張りがいれば、お前達何やってんだぁ、とあっという間に見つかってしまい追い返されるのは目に見えている。避けられる苦労はしないに越したことはない。

 誰だったそう考えていると思っていた。

 リーリはプーミが現れて早速起こったイレギュラーな出来事に一層肩が凝った気がした。


 リーリはキリッとプーミを睨んだ。


「そんな目で見ないでよ、リーリ君」

 何もなかったかように佇んでいるその様子を見るとリーリはとため息を吐いた。

(やっぱりここで別れた方がいいのかな)

(迷惑をかけられたらたまったものじゃない)

 瞬間、リーリに不安を思い起こさないわけではなかった。

 ユイと二人きりであれば、今のような不意打ちの出来事はまず起こらない。

 お互いのことを良く分かっているのだからユイが自分のことを気にかけて、今の場合でもドアをゆっくり締めてくれていたはずだ。

 ドッキリさせて楽しい場合と、そうでない場合を心得てくれている。

 度胸が良いのは結構だけれど時と場合による。

 ワザとでないにせよ心臓に悪い出来事はこれっきりにして欲しい、とリーリは思った。

「リーリ、この先はユイが案内役を務めます。館内の地図は頭にインプットしていますから任せてください」

 ユイはリーリの様子を気にせず、今、自分に出来る事を口にした。

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