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TCG風の力で俺は魔法少女達と肩を並べる  作者: 庚 権左右衛門
23/24

天使少女は今後を占う


 4月25日、日曜日。

 この日、夕夏は朝食の場にこそ顔を出したが、朝食を食べ終わるとそのままそそくさと自室に戻ってしまった。

 あまり元気そうには見えない彼女の顔を心配そうに眺める家族だったが、夕夏は『大丈夫』の一点張り。

 そして――自室に戻った彼女は、そのままベッドに横になり、再び深い眠りに就いてしまった。


 ――遡ること数時間前。

 戦闘を終えたセレスは、戦闘後の高揚した気分が覚めると、途端に顔から血の気が引くのを自覚した。


 チョーカーの力により、ある程度体に魔力をプールできるようになったエンゼルナイツ達だったが、魔力そのものがどこからか送られてくるというわけではなく、静養時に魔力を貯めなければ、消費するのは魔力ではなく自身の体力となるのを、彼女は経験から知っていた。

 体力を消費して魔法を使う――つまり、魔力が尽きれば、そのあとは使えば使うほど疲労が蓄積していく。

 ダメージディーラーの一人であるセレスは、その一撃ごとが強力な代りにコスパが最悪。

 そこへ立て続けに三夜連続だ。

 魔力は、静かにしていればいるほど溜まりやすい。必然的に最も貯めやすいのは睡眠時だった。

 しかし、連日の襲撃に遭い、魔力は溜まるよりも消費する方が多く、特に昨晩の戦闘では魔力がついに底をつき、途中から彼女は自らの体力を消耗して戦っていたのだ。


 ゆえに、その後一晩夜を明かしただけでは飽き足りず、こうして昼間も耐え難い睡眠欲求に襲われるほどに疲れ果てていた。


 心身ともに疲れ果てていた夕夏は、その睡眠欲に抵抗することなく、素直にぐっすりと眠る。

 もちろん、万が一にも昼食をのがさないために目覚ましはセットして。


 そうして、昼くらいまで眠ったところで、目覚ましが鳴る前に目が覚める。

 時刻はセットした時刻の三十分くらい前だった。


「…………~~っはぁ、良く寝た……」


 軽く体を解してみる。

 大分疲れが抜けたように思える。

 が、魔力はまだ十分に溜まったとは言えないようだ。

 おおよそ三分の一ほどだろうか。


 正午にセットしたため、まだ昼ごはんというには少し早いかもしれない。

 宿題をすでに終わらせてしまっているため、若干の暇を感じた彼女は――おもむろに、趣味で始めたルーンカードを手に取った。


「占いにも魔力が使えたら、良かったのになぁ……」


 残念ながら、エンゼルナイツの力は戦闘特化だった。

 少なくとも、夕夏が授かったチカラはそうだった。だから、ルーン占いは本当に趣味の範疇だった。


 とはいえ、もともと彼女の占いは的中率が高いと友達たちからは好評で、彼女もまんざらでもなかったので、別に魔力をそれに流用できなくてもそれほど残念とは思わなかった。

 ただ、せっかくなら『的中率100%の占い』という漫画やラノベじみたものもやってみたい、と思ってしまうことはたまにあった。

 未来予知というのは誰にだって魅力的な力じゃないか、と夕夏は少なくともそう思っている。


 とはいえ。どちらかといえば賢い彼女は、その『的中率100%の占い』が孕む危険性にも当然気付いていたが。


「まぁ、だからといって、その予知した未来が変えようのない、それも絶望的な未来だったら……と思うと、ちょっと怖いところもあるけど」


 なんにせよ、確定した未来ほど恐ろしいものもない、と理解している彼女は、それに夢こそ見ても無理してほしいとは思っていなかった。

 引いたルーンを確認して、夕夏は少し微笑む。

 引いたカードは四枚。一枚目から順に『ユル』『ハガル』そして『ウィルド』に、『マン』となっている。

 四枚引きのルーン占いは、夕夏が参考にしているサイトでは一枚目からそれぞれ過去、現在、アドバイス、未来を示すとしており、それをもとに彼女は占いの結果を読み解いていく。


 『ユル』が示すのは死や再生などを意味しており、転じて新しい始まりなどを象徴することもある。まぁ、エンゼルナイツのちからを託されたことを考えれば、それが人生の転換点とするには十分すぎるだろう。

 『ハガル』。雹を意味するこれは予想外の方向からくる不可避のトラブル。とりあえず、高頻度での襲撃以外にはトラブルらしいトラブルは起きていないが――用心しておくに越したことはないという占い結果だ。

 三枚目は『ウィルド』。なにも書かれていないカードは、逆らえない運命を示す空白のルーン。逆らえないのだから、そのまま流されるだけ流されよう、という意味だ。

 そして、最後は軍神を示す『マン』であり、人・仲間を示すルーンだ。人間関係がうまくいったり、新しい仲間が加わったりという意味でもある。

 読み解いていけば、すでに起きているか、間もなく起こるであろう予想外のトラブルを切り抜けた後は、その結果に身を任せれば新しい仲間が増え、その後の戦いがとても有利になる、といったところだろうか。


 ならば、夕夏自身は別に何をするでもなく、これから起こりうるトラブルで生き残れるように心の準備だけしておけばいいということだろう。

 とりあえず、現在の状況こそ思わしくないものの、いずれ好転するという結果が出た彼女は、自身の気持ちが少しだけ楽になったのに気づき、ふふ、と再び微笑んだ。


 問題は、待ち受けるトラブルだ。

 夕夏は、それが自分が耐えられるトラブルであってくれればいいが、と思わずにはいられなかった。


 ――そして。その占いはまさに的中しているのだ、と示唆するかのように、その日の昼過ぎからは雨が降り続いたのであった。



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