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TCG風の力で俺は魔法少女達と肩を並べる  作者: 庚 権左右衛門
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とある侵略者のエピローグ


 日本の、大都会某所。

 ここに、一隻の航空戦艦――らしきものが、空中を航行していた。


「艦長、エネルギーが航行継続の判断水準を下回りました」

「わかった。いったん着陸。マジックエネルギーが溜まるまで、艦を休めることにする。また、チャージが終わるまで、我々も一時の休息とする」

「了解! 総員、着陸準備! 本艦はこれより、エネルギーチャージと休息のため、地上に着陸する。繰り返す、本館はこれより、エネルギーチャージと――」


 艦は、なんらかのエネルギーを用いて空中を航行しているらしいが、長時間の航行をしてきたのか、艦に貯蔵されているエネルギーが底をつきかけているようだ。

 そこで、この艦に搭乗している彼らは、疲労が蓄積していることもあり、休息も兼ねて地上に降りようとしているらしい。


 艦は緩やかに高度を下げ、着陸地点を探すかのようにあたりをぐるぐると飛び回り始めたが――やがて、とある高校の敷地内に着陸地点を決めたようで、ある時を境に一位の方向へ一直線に飛翔していった。

 ――と、ここで一つ疑問に思うことがある。普通なら、この艦が地上付近に降りてきただけで騒ぎになろう。

 なにせ、きわめてSFチックな、カクカクとした要塞のごとき形をした戦艦だ。

 普通なら、誰かの目に留まった時点で、すぐにその驚愕は波及するだろう。


 しかし。

 この艦はいろいろと普通ではないため、まず気づかれることはない。


 まず一点目。

 これは学校側の理由になるが、今は4月に入って、新入生の授業も通常授業に移行した初日である。しかも、時刻は一時四十分頃。

 一般的な高校なら、五限目の授業がすでに始まっているころで、当然この学校もそうである。

 この学校は、十二時四十分に長めの昼休みが始まり、一時半に五限目が始まるようにカリキュラムが組まれている上、体育の授業を受けるクラスもこの時間は体育館で体力測定を行うクラスしかないので、まず野外に生徒や教員が出ることはなかった。


 続いて二点目。

 これ以降は艦側の理由である。


「光学迷彩、異常なーし!」

「高度、降下中! 進路上に障害物なーし!」

「衝撃緩和結界、展開! 結界の正常展開を確認」


 こんな感じで、光学迷彩に、衝撃緩和結界などという極めてファンタジーな要素により、人々に気づかれる要因は一切排除されている。

 よって、艦がこんな、人の集まる学校に着陸しようとも、そこにいる人々には感知される可能性が全くないのである。


 艦は、その後も順調に下降を続けて、アスファルトに塗り固められた地上に音を立てることもなく、緩やかに着地を果たした。

 艦内では、着地の際に一瞬、この上ない緊張感が走ったが、成功すると一同揃ってほぅっと安堵の息を漏らしていた。

 やはり、どのような航空機であれ、空を飛ぶという行為は、飛べない生物にとって、強い解放感と同時に墜落死への恐怖が常に付きまとうのだろう。


「艦の着地成功を確認。各自、艦の異常確認の上、異常がないことを確認したら休憩に入るように」

『はっ!』


 艦長の指令を受けると、船員たちはそれぞれの作業場にて、計器チェックや破損の有無などを確認し始める。

 艦長がそれらを眺めながら、今後のことを考えていると、副艦長が彼に話しかけてきた


「いやはや……この世界への侵略作戦が欠航されてから艦内のカレンダー上では五年の歳月がたちましたが――この世界は広いですなぁ……」

「そうだな。それに、どこを見ても石とガラスでできた塔ばかりだ。この世界の文明の高さをうかがい知れる」

「そうですな……ただ、我々は我々にしかできない侵略の仕方がありますからな」

「ふん、言いおる……」


 彼らはこの世界を侵略しようとしているようだ。

 そして、その戦力は未知数だが、どうやら勝算があるらしく――二人は、エネルギーチャージが終わった後の行動計画を立てるべく、席の後ろにあるコンピューターの前に移動していった。


 一方、確認作業を終えた船員たちは、エネルギーチャージが終わるまでは監視員以外はやることがなくなるため、食堂へ赴いて食事をとったり、長い航行でたまったストレスを発散するために甲板へ出たりなど、思い思いの行動でリラックスをしていた。

 そこに、最低限の警戒心はあっても、緩んだ空気の中、外敵の存在を気にする者は誰一人としていなかった。

 魔法による光学迷彩。それにより、この世界の生物からは見向きもされない。

 嗅覚や聴覚の優れる生物にも、それに対応する認識阻害用の結界を張っているため、まず気づかれることはないだろう。

 偵察任務中の彼らは、過去にもこうして、大勢の民衆がいる中で堂々と着陸し、エネルギーチャージのためにその場に長時間の滞在を行ったことがあった。

 それゆえに、見つかるはずがないという安全神話は、彼らの中で不動のものとなっていた。


 しかし、悲しいかな、万全を喫しているように思える彼らの防衛機構も、神のいたずら――偶然の賜物には、一切の役目を果たさなかった。


 のほほんとした艦の空気に監視員までもが充てられて、あくびをしたまさにその時。

 急に、計器の一つがアラートを告げる。

 計器が告げる渓谷、それは――巨大生物の接近。

 巨大生物といっても、それは彼らにとっての巨大生物であり、近づいているのはごく普通の女子生徒。


 ――実は彼ら、ゴマ粒程度の大きさしかない生命体であり、艦自体もせいぜいが道端を飛び交う昆虫くらいの大きさしかなかったのだ。


 油断していたところへまさかの緊急事態。しかし、艦長をはじめ、熟練の船員たちの対応は見事なものだった。

 監視員の報告を受けて、艦長は緊急離陸を命令。艦は速やかにその場を離脱した。


 しかし――ここで、偶然の賜物により、艦は思わぬ最期を迎えることになる。

 巨大生物――女子生徒が偶然つま先にあたって蹴り飛ばしてしまった石ころは、なんの因果か艦の未来位置にめがけて一直線で飛翔した。

 急な離脱により、バランスを崩しかけていた艦は、ほぼ水平に移動していたこともあり、その飛翔する石ころに対応することもできずに、石ころの衝突を許してしまう。


 そして――そのまま、石ころと地面の間でサンドイッチの具材のように挟まれた艦は、直後にその上を通った別の男子生徒に石ごと踏まれて、粉々に砕け散ってしまった。

 わずか一、二秒の間に起きた、急な不幸。

 艦に搭乗していた船員たちは、そのままこの世界の誰にも気づかれることなく、こうして孤独な最期を迎えたのであった。



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