後編
後編というかエピローグ
「ねー聞いた!? この前の事件、被害者が隣町の高校の奴らしいよー!」
「えー! あのチョーグロイやつ? マジでぇ!?」
「マジヤバァーイ!」
昼食時だというのに、周りも気にせずにギャハギャハと笑うギャル三人。その輪の中にいながらも、北村 梓は居心地悪そうに作り笑いを浮かべていた。
周りの目が痛い。だが、自分が注意したところで目の前の三人は話を聞かないだろう。
このグループの中で、梓の地位など最下層なのだから。
「そーいえばさー、それ、『ゴーストデータ』ってアプリが原因だってネットで見たわー」
「何それー?」
「なんでもー、嫌いな奴消せるとか!」
「はぁ? 何それ神アプリじゃん!」
「でもぉー、データーと同じとかで、最後まで消さないとヤバイんだって!」
「はー?」
「なんかー、中途半端な削除だと、この世とあの世がどーたらでバケモンンになるとか意味わかんなかったー!」
「ちょ、イミフー!」
けらけら煩い笑い声を聞き流し、梓は黙々と弁当を口に運ぶ。言っていることは、なんとなく理解できた。
パソコン上のデータを削除しても、ゴミ箱の中も削除しなければ完全には消えた事にはならない。
そのデータが、人間だとしたら。
表向きは消えた人間でも、完全にこの世から消えたわけではない。
その状態の人間は、幽霊や妖怪といった存在と同じと言える。
ネットの情報というのは、そういう事なのだろう。面白い憶測だ。今のご時世、簡単に広がるネタだろう。
「ねー梓ぁー? なんかノリ悪くない?」
「え、そ、そんなことないよ!」
「ならいいんだけどさー、あ、飲み物買ってきてくれない?」
「アタシも!」
「いつものねー!」
「う、うん!」
まただ。梓はそう思いながらも、財布を持って教室を出る。
ちらりと周りを見れば、誰もが目を逸らしていた。それもそうだろう。
召使の様に使われる梓を遠目から同情することはできるが、助けようとする変わり者などいない。いたら、すでにこの現状が変わっている。
購買に行く足取りは重い。何が悪かったのか、今でもわからない。
入学初日に熱を出し、友人を作る流れに乗り損ね、登校した時にはギャルグループの下っ端としてカウントされていた。
自分をこき使うギャル達が憎い。自分可愛さに梓を見殺しにするクラス全員が嫌い。
行き場のない負の感情が、自分の中で渦巻く。
「ねぇ」
不意に、声をかけられた。俯いていた顔を上げると、見た事のない少女がいる。赤と青のメッシュを編み込み、学校だというのにチューブトップの様な変わった着物。
少女はにこりと笑うと、梓に問いかけてきた。
「嫌いな人、消したい?」
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