華の見る夢
あの運命の夜から、千善は今まで以上に仕事に精を出していた。毎日夜が来る度に、あと5日。あと4日。あと...と指折り数えては雅楽との逢瀬に思いを馳せるのであった。それは雅楽も同じであった。何度も何度もお花に「今日は何曜日だい?」と尋ねていた。そんな雅楽の様子にお花は嬉しく感じていた。今までにないくらい雅楽は楽しそうで、幸せそうだったからだ。幸い、最近は客をとる事も、和武の相手をする事も無かった。そして、今日も今日とて雅楽はお花にいつもの質問をするのであった。
「お花、お花。今日は何曜日だい?」
「雅楽様。今日は待ちに待った金曜日ですよ。今は朝です。」
「!じゃあ今日の夜は...」
「えぇ。皇様がいらっしゃる日ですね。」
お花がそう言うと、雅楽はぽわぽわと花を纏ったかのようにご機嫌になった。
「雅楽様。さぁ、朝食を食べましょう。」
「お花、楽しみ過ぎてご飯が食べられないよ...!」
「そんなにですか...。ではみそ汁だけでも飲んで下さい。」
「う、うん。分かった。」
「それから...楼主様から言われたのですが、新しい着物を仕立てたそうです。お昼を食べたら身体を清めて、今日はその着物を着て皇様をお迎えしましょう。」
「...?楼主様は何故そのような事を?」
「それは分かりませんが...皇様が財閥の方なので最高のおもてなしをとの事なのでしょう。」
「なるほどね。」と答えると雅楽はみそ汁を口にした。心なしかお花も嬉しそうにニコニコと笑っている。
「お花?お前まで嬉しそうだけれど...」
「いえ。ここに来る前に例の着物を見せていただいたのですが、とても美しく、雅楽様にピッタリな物でしたので!」
「早くその着物を着た雅楽様が見たいです。」とうっとりとしながら言うので、雅楽は一体どのような着物なのかとても気になってしまった。
「一体どんな着物なんだい?」
雅楽がそう問うと、お花はパァッと顔を明るくしたかと思えば、ニヤリと悪い笑みを浮かべ「それはお昼のお楽しみです。」と悪戯に笑うのであった。そうして朝食を終えると、雅楽はごろりと布団に寝転がった。
「雅楽様。お行儀が悪いですよ。」
「大丈夫だよ。ここには僕とお花しかいないのだから。」
「ハァ...。それではお昼にまた来ますね?」
「ありがとう、お花。」
雅楽がそう言うとお花はお膳を持ち地上へと戻って行った。
「千善様...。早くお逢いしたいです。この一週間、楽しみで楽しみで...」
雅楽はそう呟くと静かに瞳を閉じた。まだ一度しか逢っていない相手だと言うのに、こんなにも心を惹かれるとは。一体何故だろう。そう思いながら雅楽は眠りにつくのであった。




