異端児、誕生
母は誰もが振り返る程の村一番の美女であった。そして第二の性はオメガ。村中のアルファ達が放っておくはずが無い。そんなある日、村にアメリカ軍の負傷兵が数名流れ込んで来た。その中に、金髪碧眼の彫刻の様な美しい男がいた。アメリカ兵達の世話を誰しもが嫌がっていた中、心優しい母はその役目を担った。そして母とその男が互いに惹かれ合うのにそう時間はかからなかった。それは運命でもあり、必然でもあった。何故なら男の第二の性はアルファ。そう、この二人は魂が導く"運命の番"であった。そうして二人は一夜の過ちを犯した。それを知った村人達は大激怒した。そしてアメリカ兵達を村から追放し、家族を含む村人は母を家から一歩も出さなくなった。母は家の中で男を想いながら日々を過ごしていた。しかし、そんなある日、ふと気が付いた。来るはずの月の物が来ていない事に。母は妊娠がバレると、子と共に殺される。そう思ったら恐怖に苛まれ、ガクガクと震えた。しかし、このままではいけない。と気を確かに持つと、寝入る家族を起こさない様に外へと出て慎重に、慎重に村から脱出したのだった。
村を後にした母は暫く夜道を駆け抜けると明かりの灯る集落を発見した。そして、その明かりを目印にその集落を目指して歩いて行く。集落へと辿り着くと入り口で門番をしていた大男に母は助けを求めた。
「すみません...。助けて下さい。子を身籠っているのです...。」
「...このほのかな香りは...。お前、オメガか?」
「は、はい...。」
「長!長ー!!オメガ様が!オメガ様がいらっしゃいましたぞ!!」
大男が叫ぶと集落の人間がわらわらと集まって来た。そして人々は口々に、「オメガ様!オメガ様じゃ!」と手厚く歓迎してきたのであった。
「さぁ、お前さん。今日からここがお前さんの家だ。安心して良い。我々が何からもお前さんを守ってみせよう。」
そう長が言うと、母は集落の奥の屋敷へと通された。そこには綺麗に手入れをされた部屋に、ふかふかのベッドが置かれていた。
「ここはオメガ様の為の部屋だ。残念ながら今、この集落にオメガは存在しない。だからお前さんには暫くこの集落でオメガ様として過ごして欲しい。」
「...ここでなら、この子を安心して産めますか?」
「あぁ。全力で力になろう。」
こうして、僕を身籠った母はこの集落で暮らす事になった。集落の人々は優しく、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。そして十月十日の月日が経ち、母は陣痛と戦っていた。集落の人々は慌ただしく動き回り出産の時を待った。そして、とうとうその時が訪れた。母は集落の女性の手を握りながらいきみ続け、股の前に構えていた女性は「頭が見えたわ!あと少し!頑張ってください!」と言った。それを聞いた母は最後の力を込めていきむと、「おぎゃーおぎゃー!」と大きく元気な泣き声が響き渡った。
「おめでとうございます!オメガ様!元気な男の子です!」
「あぁ...あぁ、やっと会えた。愛しいあの人との子供...。」
「それにしても...お美しい産声ですね。」
「そうですね...。」
そうしていると屋敷の扉が開かれ、長が「産まれたか?!」と入って来た。
「おぉ...。オメガ様の赤子はとても美しい...して、名前はお決まりになったのか?」
「...はい。"雅楽"と書いて"うた"と。」
「雅楽...。この美しい産声に相応しい美しい名ですな。」
こうして僕は産まれたのであった。




