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序章
ここはアメリカ・カルフォルニアロサンゼルス国際空港のベンチである。手前の大きな窓から、幾つもの滑走路と、離陸着陸をする数々の大型ジェットが見える。遥か向こうには青く霞む山々を望み、その頂上はよく晴れた空の青さに紛れていた。冬の乾いた風は、窓辺に張り付くように吹いていた。
俺は佐久間直之、六十歳越えのオッサンだ。俺には娘が一人いる。かんなという。彼女は元気にやっているのだろうか…
なぜここにいるかというと、俺が十年も前、転勤でこっちに飛ばされたからである。行く直前、用があってかんなに学校で会った時、彼氏ができたととても嬉しそうに言っていた。そんな明るい笑顔を最後に、俺はこっちにきて、しかも妻の不倫で離婚だ。親権も妻にとっていかれた。俺はもう何も持っていなかった…
そんな俺にも、やっと転勤の終わりがやってきた。日本本社に帰る辞令が出た。しかし、日本に帰って何をしよう。どこに帰ろう。俺は、大量のコートを着込んで、このベンチで途方に暮れていた…
前のベンチに、二人の男と二人の女がいる。きっとかんなもあれくらいの年だろうか…
俺はなんとなく、彼女らの話に耳を傾けながら、永遠に続きそうな飛行機の待ち時間を潰そうと思った…………
(序章終わり、合唱編に続く)




