一石二鳥どころか三鳥かな!
お城の案内をするモクレンについて行こうとしたヤス兄を引き留めた。どうせなら、ヤス兄も計画に参加してもらおうと思ったからだ。
「……嫌な予感しかせえへんけど……どないしたん?」
「嫌ですわ、お兄様!気のせいでしてよ!おーほほほほほ!」
流石はヤス兄。勘がいい。でも、あたしの中では決定事項なんだ。諦めていただこう!
「はあ……まあええわ。ほんで?ボクは何をしたらええの?」
かくかくしかじか。 どうでっしゃろか?
「ええええええええええ………いやまあ、やれるだけはやるけどぉ……。はっ!もしかしてそのための武器防具一式やったんか!?」
「いやいや、それはたまたまです」
魔王領で働くことが決まる前から用意していた品物だからね。そんな一朝一夕で武器防具は作れないよ。時間をかけて作っただけあって、満足な出来。素敵なエフェクトもあるし、あれがあれば余裕で魔族達とも渡り合えるはず。
まあ、私が知るのは妃候補の女性達ばかりだったから種族代表となればもっと強いのかもしれないけど。そのへんはどうなのかなー?ちらっとオルネース様を見たら、めっちゃ浮かれてた。
「いやあ、本当にいい嫁もらったわー!まさか、武闘会で共通言語を決めるだなんて!力こそ全てなこの魔族領において、ここまで納得できる理由はないわ!いざとなれば、アタシが全員ボコればいいわけだしね!!」
そう、あたしの案とは武闘会。優勝した部族の言語に統一するというもの。優勝者が想定外の者だったらオルネース様が真の優勝決定戦と称して優勝者をボコる予定だ。
出来レースと言うなかれ。うっかり魚人とかが優勝したら読めない書けないしゃべれないの三重苦だよ。あれはもう、人間には発音できない。水中で喋るやつだからね!
これまで何度か言語統一または共通言語決定の話はあったけど、部族を集めても話がまとまらないしオルネース様も忙しすぎてもういいってやめちゃってたらしい。そもそも、武闘会とかで決める発想がなかったとべた褒めされた。ところで、さっきからオネエになってるけどいいのかな??
「まあ、いざとなれば魔王様がいてるから、ボクが負けてもなんの問題もないわけですね。ふむ……ええか。いい腕試しになりそう」
ヤス兄もやる気になってくれた。ついでにヤス兄に奮闘してもらって人間の強さを見せつけていただこう!ヤス兄めっちゃ強いから問題ないよね!
「ヤス兄、あたしが訓練相手になるよ!」
「そうして。この剣、威力がめっちゃヤバいからなぁ。ついでに出力調整したってや。対戦相手を殺しかねん」
「はーい!」
通達してから待つことしばし。そもそも血の気が多い魔族領の住人達。合法的に暴れられる上、他種族と戦える。更に勝てば褒美ももらえるとあって全種族が同意したそうだ。
今回の結果が良ければ、今後も何か大きな事を決める時定期的に開催していいかもしれない。
全種族から同意を得たので一週間後に初の魔族領武闘会開催が決定した。ちなみに、例外なのが竜人族。あたしの意向を確認し、今回は辞退した。いやその……別に出ても良かったのよ?
最近、竜人族からあたしのおかげでドラゴンが遊びに来てくれると感謝されているせいか、巫女として崇められているのだ。別に実害はないので放置しているが、その巫女様のお兄様であるヤス兄に刃を向けるなど不敬なんだとさ。
あと、魔人族も不参加。その代わり、決定事項に不服は言わないとのこと。魔人族には全然関わってないんだけど……なーんか嫌な感じなのよね。こういうカン、当たるんだよなぁ
城の訓練スペースを借りて、ヤス兄に魔剣を使っていただいた。
「そーい!」
ヤス兄が剣に魔力を乗せて振り下ろしたらアラ不思議。想定していたより、広範囲が更地になりました。
「………おうふ」
「………ユアン」
「はひ」
「ユアンはボクを殺人鬼にしたいん?」
「いいえ」
「ほな、なんでこんなヤバい武器よこしたん!?ボク、ほんの少ししか魔力強化してへんで!?それでこの威力とかおかしいやん!ほんの少しでこれやったら、全力出したら魔族領が更地になるんちゃう!?」
「えうううう……武器だし強ければ強いほどいいかなって……」
強さを追求しすぎたらしい。確かにヤス兄の言う通り、この剣ヤバすぎる。錬金釜さんを出して、出力抑えめにしてもらいましたとさ。
何回かの調整を経て、丁度いいとヤス兄が言った。ヤス兄の剣はヤス兄の魔力増幅と鎧もセットにすると超強力な身体強化を付与してくれるスグレモノ。
「あ、鎧もセットで試してみて」
「嫌な予感しかしないけど、わかった。ジャージ並みに着心地いいな、この鎧」
「内側にマジカルフロッグの革を貼っているからですかねぇ」
伸縮性があり、防具屋のおいちゃんオススメの素材だったのよね。魔力を通すとフィットするらしいよ。不思議素材だね。
「へー。こころなしか体が軽い……!?」
ヤス兄が軽くジャンプしたら、雲を突き抜けた。
あかんこれ、怒られるやつや。一瞬で視界から消えたヤス兄を見て、今度から装備品をサプライズで用意するのはやめようと心に誓ったのだった。
追伸、着地はできる樹たんが植物でトランポリンを作ってくれたおかげで大丈夫でした。当然涙目のヤス兄から叱られました。ごめんて。マジごめんて。




