わりと兄は短気である
帰宅したら、お客さんがいると言われた。まあ、それはいい。
しかし、何故か応接室ではない方向に歩いている。まあ、それもいい。
ダンスホールにたくさん騎士と思われるお兄さんたちがいました。なんでだ。
「お兄様ですわね?」
即座に頭を下げるヤス兄。
「ごめんなさい!」
「オコシャス様は悪くないんです!」
「オコシャス様は我々を庇って……!」
大体の状況は把握した。まあ、数日なら公爵邸に滞在してもらえばよかろう。滞在費はあたしのポケットマネーで賄ってもいい。
「要はその……あんまりにもひどくてキレてもーて……団長の顔に辞表叩きつけて辞めてきてもーた。んで、辞める予定だった騎士達の辞表もまとめて叩きつけてきてしもて……本当にごめんな」
「ふふ、大体の状況は理解しましたわ。お兄様がそれほど怒るのですもの。悪いのは団長様ですわ。早急にオルネース様へ連絡いたしますね」
それにしてもさぁ、騎士百人は多すぎないかな!?えーと、なんて説明しよっかな!急すぎて頭が働かないんだけどー!それに、なんか緊張する!
とりあえず自室に戻り、通信用の魔具を起動した。もちろんあたしの錬金釜で作ったモノ。見た目はガラケーっぽいが通話しかできない。まあ、この世界において初の通信機器なので、実はオーバーテクノロジーっぽいのだが……。
「えーと、こうかな?」
一応お試しで一度使ってみたものの、実際に使用するのは今回が初めてだ。きちんと作動し、コール音が鳴った。
『ちょ!これでよかったんだっけ!?も、もしもし!?だったかしら!?』
まだ数日しか離れてないのに、懐かしさと愛しさがこみ上げてきた。
「……うん……そうだよ」
なんだか泣いてしまいそう。なんとかこらえて返事をする。
『あれ!?音量はどうやって上げるの!?ユアンの可愛い声が聞こえないわ!というか、これ耳元でユアンが囁いてるみたいで落ち着かないわ!!』
「あはっ。その発想はなかった。急にごめんね。至急話したいことがあるんだ」
慌てるオルネース様のおかげで涙は引っ込んだ。
『ええと、アタシの理解が追いつかないけど……』
「ですよね」
いきなり百人雇用してって言われても困るよな。オルネース様のとこは、数人で回してるわけだからそこにいきなり百人来てもなぁ。給料とかもどうするって話だし。
お金は素材取引を適正化すれば手に入るけども今すぐできるかと言われると難しいわな。それより、指導する魔族が足りなすぎるのも問題だ。
「とりあえず、ヤス兄と数人に仕事を覚えてもらってヤス兄達から他の騎士達に仕事配分したり教えてもらうでどうかな」
『天才か』
「普通だよ」
特別頭がいいってわけでもない。頭の出来はヤス兄とメガ兄のほうが良いし。とりあえずはそれでいいと言われたのでお願いすることにした。
これでオルネース様の業務量が減れば、週末あたしと過ごす時間が増えるのでは……と邪念がよぎったのは許してほしい。やっぱりね、大好きな婚約者と過ごす時間はほしいんだよ!
「そんなわけで、ヤス兄が五人ぐらい選んでくれる?条件は書類仕事ができて、強い人」
「オッケー!楽しみやなぁ」
「明日は一応あたしも行くよ」
そこそこシメておいたとはいえ、不穏分子はまだいるだろう。念入りに潰す意味でも目を光らせておくべきだ。
「学校休んでまで?そない心配せんでもボクは大丈夫やで?」
「魔族の流儀はちょっと特殊ですから、初日だけでも行こうと思いまして。それから、ヤス兄にこれを」
それは、錬金釜さんで作った装備一式である。白金に輝く鎧に緑のラインが入っている。武器も同じ。ヤス兄行きつけの鍛冶職人と試行錯誤の末に作った傑作なのであーる!
「またスゴそうな……ありがたくもらっとくわ」
「あ、邪魔かなと思って普段はバングルになるからね。剣だけとかもできるよー」
「軽々しくスッゴい発明ポンとよこさんといて!ビックリするから!!」
「ご……ごめんなさい」
これは……通信機器のことを教えたらまずいかもしれない。
「ユアン?」
「ぴっ!?」
「まだあるんやね?言いなさい!厄介なことになる前に!!」
何故か勘のいいヤス兄にバレて洗いざらい話す羽目になるのだった。うう……別に悪いことはしてないのに!
「今度から作る前にお兄ちゃんに言いなさい!これは情報漏洩したらやばいヤツやからね!」
「はーい」
「他にはないよね!?」
ホルソマッチョをブッ飛ばした脛当て……あれはアウト!?セーフ!?どっち!?
「ええええと………」
念の為話してみたが、脛当てもアウトだった。今度からは絶対作る前にヤス兄かメガ兄に言うようにと念押しされた。
「バレたらあの王太子の嫁コース間違いなし!世界各国から狙われるからな!?」
「気をつけます!!」
それだけは嫌だ!あたしは絶対にヤス兄の言いつけを守ると心に誓ったのだった。
大人の事情で魔王妃も連載再開しまーす。
ローテーションでまわしていきますぞー。




