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失敗は成功の母ってこと?

 キョウさんは案外強引だった。同じ緑の精霊のマスター同士仲良くしようと押しきられ、なんだかんだで文通することになった。まあ、恋愛的な意味で進展せずに友人になるぐらいは大丈夫だろう。こっちでは伝書鳩ならぬ伝書使い魔がいるそうだ。可愛い鳥さんだった。

 グリムワンドさんとも是非仲良くしたい。うああああ、超もふもふ!しかも花みたいないい匂いがする!

 あ、樹も大きく………もふもふサンドですか!ゴチになりやす!もふもふに挟まれて、幸せ~。樹は新緑の匂いなんだよね~。幸せ~。

 私がもふもふサンドにうっとりしていたら、レインさんが残念なものを見る表情だった。そして、キョウさんに気がついた。


「あれぇ?キョウじゃん!ひっさしぶり~」


 世間は狭いもので、レインさんの友人だったらしい。テラスに移動し、皆でのんびりお茶していたらさっきの狼獣人さんが遠吠えしていた。うちの前で遠吠えすんなよ。迷惑だよ。


「…どうしたのですか?」


「またフラれたァァァァ!!」


「……ちなみに、ナニをどうしたのですか?」


 彼が言うには、この近くの食堂で先ほどご飯を食べていたらウエイトレスさんが可愛くて一目惚れしたそうな。さっき精肉したお肉を渡したら受け取った。つまりオッケーだといつ結婚式する!?と言ったら、はぁ?と眉間にシワを寄せて聞き返されたそうだ。


「んん……なんやかわいそうやねぇ」


 まぁ、ウエイトレスさんの気持ちもわからなくはない。悲惨だとは思うけど。


「……あの、貴方は何故人族と結婚したいのですか?」


「うちの一族、女の方がムキムキで…それに比べて人族は華奢で可愛いじゃないっすか。姐さんは別次元みたいっすけど」


「………んん?」


 それはどういう意味ですか?


 人間の男性陣が一斉に痙攣しやがった。ちくせう。とりあえず、私ではない人族の嫁がほしいみたいなので協力してあげることにした。


「まず人族の求婚方法は、貴殿方とは異なりますわ」


 人族式の求婚方法や、どのようにすれば女性の心を掴めるかについてみっちりレクチャーしてあげた。狼獣人のウルブズさんは尻尾と手をブンブン振りながら去っていった。


「師匠!このご恩は忘れないっす!」


「…忘れていいですよ~」


 達者でな。幸せになれよ、と私も手を振る。


「ユーリフィアン様は、何故女性の口説き方にお詳しいのでしょうか?」


「なんで敬語なのよ、ヤス兄。昔、馬鹿とモテ対決したことがあって、その時のナンパのコツを教えただけでしょ」


 ちなみにあたし(男装)が圧勝した。


「勉強になりましたが、僕らじゃ無理だね。そもそも声をかける時点でハードルが高すぎるね」

「ねー」


「…ヘタレできゅ」


「こ、こら!そんな本当のことを言うんじゃありません!!」


 グリムワンドさんがさりげなくとどめを刺したらしく、キョウさんが泣いた。やめてあげてください。





 今度は上空から鳥…の獣人が落ちてきた。なんか号泣している。


「ユアン」


「……行ってまいります」


 ヤス兄の笑顔の圧力に負け、話しかけた。やはり、さっきカスタネットをもらっていった鳥さんであった。彼によると、さっそく先ほどの歌と新ダンスを披露したそうだ。人族ではなく同種族の女性だった。今までになく反応は良かった。ラップは彼の音痴をカバーしてくれたらしいが…それでは足りなかったらしい。


「完成度を高めなさい」


「くえ!?」


「完成度を高めるのです!そんな一朝一夕で嫁は来ません!完璧なダンスをマスターすべく、踊って、踊って、踊りまくるのです!!」


「クエエエエ!師匠…目が覚めました!俺、頑張ります!!」


 鳥獣人さんはコンドリャーさんと言うらしいです。元気に飛び去って行きました。強く生きろよ。




 さて、兄達の所へ戻ろうとしたら、誰かが目の前にいた。なんか生臭い。


「卵ヲ産メ」


「だから産めないってば」


 思わず素で返してしまった。まだまだ修行が足りないね。真の淑女への道程は遠い。


「すいません、賢いお兄様達~、お知恵を拝借したいです!」


「はいな~」

「どうしたのかな?」

「なんだい?」


 この近隣で彼の同種がいる所を教えてあげた。彼は頷き、礼を言って歩きだす。彼の名はキャクセンビノタメニオンナニナッタさん。どこかの編みタイツを装備した鯛を彷彿とさせる。素敵な脚線美の鯛魚人男性に騙されない事を祈っておいた。


「卵ヲ産メ!」


「ひゃああああ!?」


 うちの庭師(お爺ちゃん)に卵を産ませようとする魚。オイイイイイイ!?鯛魚人男性以前の問題じゃねーか!!だから人間は卵を産めないしお爺ちゃんだしあああもおおややこしい!!


「…あ、もしかして目がほとんど見えてないんちゃう?」


「…………確かに」


 キャクセンビノタメニオンナニナッタさんに聞いてみたところ、やはりそうだった。彼は病におかされており、せめて子孫を残したいそうだ。


「レインさん、いい薬ないです?」


「んん……あるにはありますが…ちょっと…問題があります」


「ああ、もしやアレやな?んん…ま、ええんちゃう?助けられんのに放置するんも寝覚めが悪いし」


 レインさんはヤス兄の許可を得て、見覚えのあるお薬をキャクセンビノタメニオンナニナッタさんにふりかけた。


「ミエル……ミエル!体ガ軽イィィ!!」


 キャクセンビノタメニオンナニナッタさんは元気に走り去った。


「卵ヲ産メ!」


「キャアアアアアア!」


 でもうちのメイドさんに卵を産ませようとしたのでグリムワンドさんによって強制退去されました。奴を健康にした事が、はたして良かったのかがよくわかりません。

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