目を閉じて見る夢の中で
今夜もユーリフィアンにお手紙持参で会いに来た。今朝返事を渡したら、メガ兄は大喜びでお返事のお返事という名の長編大作執筆に取り組んでいた。しばらくは血縁上の父の手紙は渡せないだろう。
今日はヤス兄の手紙を持ってきた。
「ユーリフィアン」
「優音!」
何故だ。あたしなのに日に日に女子力が上がっている。髪を乾かすのが面倒ではあるものの、夏場結った方が楽だからと伸ばしていた髪が綺麗に結われて見たことがないぐらいツヤツヤになっておる。よく見たら爪も綺麗に整えられ、なんか塗ってある。すげぇ可愛い。
「はい、手紙。今日のはヤス兄からね」
「ありがとうございます。こちらは小田郡様からのお手紙ですわ。あの、本は読んでくださいました?」
「さんきゅ…アレな。読んだよ」
ユーリフィアンが隠していた本…それはあたしがいた世界を舞台にしたとしか思えない創作恋愛小説。しかし、問題はそこじやない。比留間優音はその小説のざまぁされる悪役だったのだ。しかし、小説の優音はなんというか…真逆なタイプ。根暗で陰湿な嫌がらせを主人公にしていた。まぁ、お約束で嫌がらせがバレて断罪されるのだが…話はまだ完結していなかった。
「なんだか最近、小説の主人公さんと同じ名前のお嬢さんに声をかけられるのです。根津様をネトッタとかなんとか…」
あの主人公…痛い子と噂の廣井マリンさんな。あれに絡まれると厄介だなぁ。なんつーか、マイワールドに生息してる奴なんだよな。クラスは違うらしい。そこは良かった
「……小田郡はなんと?」
「よかろう、ならばくりいくだ!拙者と兄上にお任せくだされ!!…とおっしゃられていました」
戦争か……小田郡!そして小田郡兄!ユーリフィアンを頼んだぞ!明後日の方向に敬礼をした。
「わたくし、本当にそれでいいのでしょうか」
「ん?」
「優音から父様の話を聞いて、思ったのです。わたくし、耐えるだけでした」
ユーリフィアンは外見があたしであっても綺麗だ。
「わたくし、自分で抗いたいです。新天地でもメソメソしているだけなんて、嫌ですわ!」
「よし、小田郡に自分でそう言いな。あいつはユーリフィアン主体で作戦を考えてくれるさ。強くなったな、ユーリフィアン」
「!!は、はい!」
ユーリフィアンの笑顔はとっても素敵だった。住む世界は違うけど、応援してるよ。ユーリフィアンはそれからヤス兄の手紙を読むと返事を書き始めた。
あたしも小田郡からの手紙を読む。樹は大人しくあたしの頭に乗っかっている。最近は肩か頭にいる事が多い。今日もモフ可愛い。
『報告書
一五○○ 敵がユーリたんの教科書を隠そうとしたため、激写。写真と動画をネットにアップする準備をした上で全力説教。
一六○○ 敵がユーリたんに下駄箱で罵詈雑言。他女子も参加しそうだったため、根津氏を含むイケメンズを緊急召喚。さらに時間差で教師を召喚。教師に証拠品を提出し、敵は指導室に連行された。
一七○○敵がユーリたんの下駄箱や机に嫌がらせをしないよう、兄上仕込みの罠を仕掛けた。明日獲物がかかるのを楽しみに帰宅。
また報告いたしますぞ。ユーリたんは拙者が護衛いたします!
小田郡』
「…小田郡!」
明後日の方向に敬礼をした。小田郡、グッジョブ!!何故か敬礼をした小田郡が微笑んでいる気がした。
確かにゲームのユーリフィアンと今のユーリフィアンは別物だ。小説の比留間優音とあたしもまったくの別物。
しかし、あたしとユーリフィアンが本来の状態で産まれて、繋がっていなかったらどうだろう。あたしは昔から気が強かったから、ユーリフィアンがいなかったら悪役令嬢ユーリフィアンみたいになってしまわなかったか?ユーリフィアンも優音として産まれていたら…もしかしたら小説の比留間優音のようになったかもしれない。
『正解です、優音さ…くるっぽぉぉ!!?』
いつの間にかポッポがあたしの頭に…いたが、樹に蹴飛ばされた。樹はあたしの頭に占有権を主張しているようだ。
「マジか」
「さ、流石は優音様。冷静ですな」
「…まあ、非現実に日々遭遇していればな」
ポッポがいきなり出てきたぐらいでは驚かないし、丁度考えていてありえると思っていたから。とりあえず小田郡もいるし、あたしは小説みたいな陰湿な嫌がらせもしてないから、ユーリフィアンは大丈夫。問題があるのは私の方かな。ユーリフィアンがゲームをやらないことを祈る。つか、ゲームの回収を小田郡に頼もう。お礼と一緒に。
「優音様…して、世界を救うお話は受けていただけますかな?」
「魔王はどっちにしろなんとかしなきゃならない案件だろうから、受けるも受けないもない気がする。まあ、善処するとだけ言っておく」
「優音?魔王とか世界を救うとか、どういう意味ですの?」
黙々と手紙を書きながらもユーリフィアンは話を聞いていたらしい。
「え…あ、そういや今日狼と鳥と魚と人間とお見合いした」
「は?なんですの?え??く、詳しく聞かせてくださいませえええ!!」
あ、これ目がさめるな。ユーリフィアンの声が遠ざかっていった。




