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光と闇のシンフォニア  作者: 花宮 あいら
光と闇のファンタジア
43/135

間章─Rinn

それは、ルナがアリアと結ばれるずっと前


ルナがまだ、小さかった頃のお話

王宮の中をぺたぺたと歩き回って

一際大きな扉が開いているのを見つけて、覗いていた。


「呪い?」


「そう、ルナには呪いがあるわ

 今でこそ大丈夫だけれど

 あの子の金色の髪は真夜中になれば銀色に変わる

 瞳の色も青く緑にそまる色が紫の人になる。」


「でも、それだけでありましたら…」


「それだけではないの…

 厄介なのは、あの呪いは己を蝕む。

 そうね…抑えきれない何かが起きたとき

 抑えてくれる何かがない限りあの子は、

 自分自身で死へと向かうわ」


「…そうなのですか」


「だからね、リン

 あなたがルナを見ていて欲しいの

 年の近いあなたが見てくれているなら、

 ルナのことを知っているあなたがいるなら

 あの子は大丈夫よ」


「エステレア女王…はい、頑張ります…!」


難しい言葉はまだ分からないけれど

お話が終わったことを理解したルナは

そっと重い扉から声をかけた。


「お母さま…」


「ルナ、どうしたの?」


「呪いってなに?」


どきりとした。今の会話を聞かれたかと思った。

急いで取り繕う。


「なんでもないわよ

 そう、ルナ。

 今日からあなたと一緒にいてくれる方よ」


小さなリンの手を引っ張って

ルナの前に連れる。


「リン・レルミアと申します

 よろしくお願い致します」


「リン…さん」


「リンで構いません。」


「リン…」


リンがルナを初めてみたとき、リンはルナをこの世の人とは思えないほど美しいと思った。

愛嬌のある顔立ちに、品のある立ち居振る舞い、そして言葉遣いに至るまで、自分より幾つばかりか年下のルナに気後れした自分がいた。


「わたしは…ルナ・ブルームーン・S

 この王国の第二王女です

 よ、よろしくお願いします…」


ぺこりとお辞儀をするルナを、リンはそっと抱き上げた。


「ふふ…かしこまらなくていいんですよ」


「じゃあ、私は書斎にいくわね

 宮庭にでも行って遊んでいてね、ルナ」


「はい、お母さま」


エステレアはそっとその場を立ち去った。


「わたし、魔術のお勉強をしたいので

 図書室にいって参ります。

 ええと…リンさんも一緒にしませんか…?

 美味しいお紅茶とクッキーをご用意します」


「それはわたし達のお仕事です

 では、図書室に参りましょうか」


「…はい!」


純粋で可憐な彼女を見ていることが

自分を一心に見てくれて、無償の愛で応えてくれて

まっすぐ育つルナを見ることが、リンの楽しみになっていった。


そしてルナが9つになったある日、

エステレアはルナに呪いのことを告げた。

どことなくりわかってはいたし、エステレアも

それなりには言っていた。


「あなたはね…」


「…そう、なんですね…わたしは…」


そして、一筋の涙を流したあの横顔を

リンは、ずっと忘れられなかった。

自分のせいだ、と責めるルナが自分に甘えないで

一人涙を零して必死に耐えているのを見ていられなかった

幼い頃から持っていた青糸を解こうとしても出来なくて。

ルナはその頃から従者を付けずに石碑や、

時には国を抜け出して蒼の湖にも行くようになった。


「「綺麗な歌声…」」


湖で歌う彼女を見てふと言葉を漏らすと、

誰かと声が被った。


「…誰?」


「…誰だ?」


歌い続けるルナを横目に、リンは声のするほうを見渡した。

そこには、黒い髪を持ち、仮面をつける

いかにも眉目秀麗な男の子が木陰にちょこんと座っていた。


「「あなたの名前は?」」


また声が被った。


「…オレは、リー。」


「私はリン。あそこで歌っている、ルナ様の従者。

 アリー、あなたはよくここへ来るの?」


「…ああ」


言葉が少ない彼は、リンと年が近かった。

着ている物と黒い髪を持ち仮面を着けている

もしかして闇の王子か、とは思ったが、声には出せなかった。

闇の王子の名前は一般には明かされていない。

成人または結婚や婚約で初めて明かされる。


「…今日は先客がいるから。」


「…そう。」


ルナの歌がぴたりとやんだとき、

ルナは湖に足をつけた。


「冷た…!」


その声はまるで天使のように透き通り、

歌っているより生き生きとしているような

触れたら壊れてしまいそうな。

その時リーは立ちあがって闇の方へ歩き出した。


「どこにいくの?」


咄嗟に言葉を出した。


「…帰る」


「そっか…ばいばい」


「…」


小さく手を降ったのが見えた。

少し、嬉しかった。


それから、ルナが歌っている時には何度かリーと会った。

たまにルナが歌っていない時は、リーが歌っていた。

リンが二人の歌を聞いていることに、二人は気づかなかった。

それから時がたって、ルナは12歳になった。


「わたしの婚約者…?」


「ええ、そうよ。闇の王国第一王子。

 政略結婚になってしまうけれど…良い?」


「あ…はい、国のお役に立てるのでしたら…」


「ルナ、どうしたの?」


「なんでもありません…失礼します。」


足早にルナは部屋を出て行った。

どこへ行くかと思えば、ルナはあの湖にいた。

時折聞いていたあの歌は聞こえなかった。

リンは、それを追いかけて走った。

ルナが気配に気づいて時々振り返ったが、リンに気付く事はなかった。


「…ああ…!わたし…なんてことを…」


湖に誰もいないと分かると、ルナは涙を湖に一粒

また一粒と、ぽたぽた伝って零れていった。


「あの声がまた聞きたくて…来てしまうなんて…」


そのかすかに聞こえた言葉に、動揺したリンは物陰で

葉っぱを踏みつけてがさ、と音をたててしまった。


「…誰ですか…?」


涙声でかすれた声を出すルナを

リンは飛び出して抱きしめた。力いっぱいに。


「り、リン…苦しいです…」


「…ルナ様、泣いていいんですよ」


「…え?泣いてなんか、いません…

 泣いてなんか…」


「嘘です、今だってこうして、

 涙を頬が伝っているじゃないですか

 本当は嫌だったんでしょう?

 あの声が、湖から聞こえるあの声が好きだったんでしょう?

 自分に素直になったって、いいんですよ

 生きているんですから」


「…リン…」


衣服に声を殺すように、ルナはリンに泣いた。


「わたしは…あの声がもう一度聞きたかった…

 わたし…わたし…!」


うんうん、と頷きながら聞くリンを

ルナは抱きしめ返した。


そして二年後、ルナは闇の王子と結婚した。

名前はアリア。

リンは、その姿を見てびっくりした。

あの時のリーとそっくりだった。

いくらかアリアが大人っぽかったが。

でもそう思ったことは、二人には言わなかった。

だって、あの頃から歌で通じて、相思相愛だったなんて聞いたらきっとルナは赤面して枕でも投げてきてしまいそうだから。


「ねえ、リーさん。いや、今は、闇の王子アリア様。」


その言葉を囁かれた時、アリアは驚いた顔をした。


「…ふふ、なぜ知っているのかって?

 覚えていらっしゃらないのですね。

 それは…秘密です」


きっと、この出来事はずっと胸に秘めて、

ルナにも教えないだろう、リンはそう思って

そっと寝ているルナの頬にキスをした。


「ルナ様、良かったですね。

 どうか、幸せになって下さい。」


親愛の証として。

これは、ずっと前のお話。

ルナとリンの出会いと

ルナとアリアの出会いのお話。

ずっと前から一緒だったんですね

そして、想い合っていたんですね。

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