1ー3 光と闇の対峙の先は
三章 王女の嫁入り
結婚式のとき、二人は初めて顔を合わせた。
光射し込む教会で、初めて。
王子は王女を見て、呪いは嘘だったのかと思った。
金色の髪と青緑色の瞳、後継者の証だった。
光に包まれる彼女と周りが、まぶしかった。
「───呪い……」
王女は彼のことを、なんて美しい人なんだろうと思った。
闇からわたしを愛してくれると言ってくれた人は
仮面を付けて、距離があるように思えた。
闇が、彼らのすべてを物語っているようだった。
「───あ……」
闇の王と光の女王は、二人を祝福した。
そして、光の王の後継者であるソレイユも。
自分のことのように涙を流していた。
「王子、様…」
「オレは闇の王国、第一王子、アリア・レイ・フィンスターニス」
さらりと自己紹介をするアリアにルナは尋ねた。
「なんと、お呼びしたら?」
「…アリアでいい。」
「アリア様、わたしのことは、ルナとお呼び下さい。」
「…あぁ…」
アリアの頬が、薄く桃色に染まる。
その初々しさに客は目を引かれていた。
招待客が、微笑ましく見守っている。
だんだんと騒がしくなってきたのでアリアは手を引いて、ルナを外へ連れ出した。
「アリア様、わたしは呪いを持っています」
「…知ってる。父上から聞いた。」
「今は、お客様がいらっしゃるので魔法で隠しています。
明日になれば、魔法は解けます。」
「なあ、お前は…」
アリアは、ルナにキスをした。
愛すると決めたから。愛の証として。
「アリア、様…?」
「…気にしなくていい。」
封印のことは言えなかった。
言葉少なにアリアが手を差し出し、二人は手を繋いだ。
闇と光が混じり合った瞬間だった。
「ルナ、元気でね
アリア様、ありがとう
妹を幸せにしてね。」
「ルナ…また、会いましょうね。
待っているわ。
アリア様、よろしくお願いします。」
「はい」
そうたどたどしく言葉を交わして、二人は光のもとへと帰っていった。
手をつないで、二人で。
ルナは闇の王子ロワに挨拶をした。
「光の王女よ。久しいな。
そなたを見るのは二度目か。」
「はい、お義父様」
「堅苦しくなくてよい。私のことは父で良い。
お前は今日から闇の王子妃。
歓迎する。」
「はい。お義父様、ありがとうございます」
「アリア、良い妻を貰ったな。
大事にしろよ。」
「はい、父上。」
夜、闇の国は一層の漆黒に包まれる。
星空が美しく、見たことのないほどの煌めきを見せ、天空に浮かぶ城は月ほどに白く輝く。
今まで殆ど光しか見たことのなかったルナには、それが真新しく、少しだけ怖かった。
「アリア様…」
「ん…」
ちょっとだけ甘えるように寄りかかってみる。アリアはルナの頭を撫でて、出来るだけ優しく、その身体に触れる。目を瞑り、大きな身体に自らを委ねる。
「この国は、怖いのですね…」
「闇は、初めて?」
「はい」
「そうか…」
「あっ…!」
アリアはルナを抱き寄せた。
彼なりに大事にしようとしているつもりだった。ルナはびっくりした面持ちと、きょとんとした顔で彼の顔を覗き込んだ。
「アリア、様…?」
「オレは、何も持たないオレを救ってくれたお前を愛そうと思う。」
「…はい」
言葉少なに緊張が伝わる。
ぴりぴりしているのに、あたたかくて優しい。そんな雰囲気が二人を包み込んでいる。俯いて、言葉を待つ。
「だから、オレはお前を守る
何があっても。お前は、離さないから…」
「アリア様。
…なら、わたしもあなたを愛します…
間違っていたとしても、後悔はしません」
そう言ってルナもアリアを抱きしめた。
アリアは、触れれば彼女が壊れてしまいそうで怖くなった。
小さくて、細くて、弱い。
自分が守って、幸せにしてあげたいと思った。
「おやすみなさい…」
ルナも、自分よりも大きいアリアが少しだけ怖かった。
自分を包み込んでしまう。
──この人になら、わたしをさらけ出せる
そう思った。
アリアとルナの新しい生活。
愛し合うと誓った二人。
書いていて、微笑ましくなります。