1ー2 光と闇の対峙の先は
二章 闇に溶ける真夜中の王子
王子は、佇んでいた。
一人で、ひっそりと
仮面を外し、床に落として。
父から知らされた。
婚約者は光の国の第二王女ルナ・ブルームーン・S
「呪い」を持つ王女であると。
王子は一度だけ見たことがあった。
天上の国のお姫様。
銀髪の髪と青紫色をした瞳。
それは美しい姫だった。
白いバルコニーで泣いていた。
自分のことではなく、誰かのために悲しんでいるように見えた。
「光の国の王女か…」
ぼそりと、誰にも聞こえないように呟いた。
その一言は、闇にかき消えていく。
ガラス張りのドームのようなところ
光の国が見える。天上の国。
闇と対峙する、闇を打ち消す光の国。
『昔むかしの物語───』
幼いころに従者が語ってくれた話。
エアリアルのはじまりと光と闇の戦争が描かれる。
でもそれよりも王子は、今自分が感じとれる景色が好きだった。
だから王子はその眺めも好きだった。
闇にはない輝きがあるから。
美しく儚い人の心を動かせる力を光は持っているから。
「お前には、約束された将来がある
闇の王としての努めを果たせるよう、日々学べ。」
「はい、父上。」
でも自分にはなにもない。
王として学んだ帝王学と、その生まれながらの地位しか。
将来を約束されてしまった王女を、王子は可哀想と思った。
好きでもない人の妻となり、愛されず死んでゆくのかと。
従者の話はそのあとも続いていた。
『全てを持つ少女は、何も持たない少年に恋をしました。
そして、少年もまた少女を愛していました───』
昔の物語は、もう神話の世界の話。
まるで、今の自分たちを語られている気分になった。
「ならオレは…お前を妻として愛し
お前を幸せにすると誓う
何があっても。」
そう呟いた時、声が聞こえた気がした。
ソプラノのように澄んだ高く綺麗な声で。
「ならわたしは、何も持たないあなたを愛します。
それが間違っていたとしても、
わたしは決して後悔をしません。
あなたがわたしを愛してくれるのなら。」
「…あぁ…」
そう言って王子は仮面を付けた。
姫だけには外そうと思って。姫だけに見せたかった。
あの時から王子は、姫に恋をしていたのかもしれない。
『でも、全てを持つ少女には一つだけ
持っていないものがありました───』
持っていないものは、姫にはあるのだろうか。
光に包まれて育った姫にそんなものは
『それは、記憶───』
ハッとなって思い出した。
光の王族は、生まれるときにそれまでの記憶を失う。戻ることは二度とない。
普通の人は、生まれる前の記憶は持たない。
だが、光の王族は前世の記憶を持つ。
でもそれは危険だから、と生まれたときに封印される。
♢♢♢
「…それは、まるで…」
それは一生思い出すことはない。
光の王族は、知らない記憶。
宰相が代々伝え行うものだから、
このことが女王に知られれば、
王族は封印を解いてしまうから。
でも確か、その封印はささいなことで解かれてしまう。
まだそれは、ずっと先のことだけれど。
それは───。
二人は運命に導かれていきます。
二人が行く先には、
何が待ち受けているのでしょうか?




