20-3 狂い始める世界─エアリアル
8章 いつも……
アリアが倒れて、二日がたった。
ルナは、彼にずっと付き添い、そのために彼女の体力は憔悴していた。
「アリア様……」
「───お母様」
コンコン、と扉がノックされる。アイリスの声だった。ルナを心配するように、彼女はその場で言う。
古びた扉は、声を良く伝えた。
「未来では、いつもお母様は、お父様の手を握っていました。二人が死ぬときも…ずっと。お父様は、きっと大丈夫です。だから、お父様が起きるよりも早く、「禁忌」や洗脳を無くしましょう
お母様が……お母様でいるために…」
最後のその言葉に、なぜだか含みがあったような気がした。
ルナはそれを無視して、アイリスに告げる。
「アイリス、クラリスと一緒に行って」
「お母様?」
「───わたしは大丈夫よ」
扉越しに、ルナは優しく微笑んだ。微笑みを感じ取ったのか、アイリスはくるりと向きを変えて、クラリスの部屋に向かう。
「クラリス……」
ぼそりと呟いて、アイリスはクラリスの部屋へと入った。
♢♢♢
「母様も父様も知らないだけでしょう」
「クラリス」
「姉様が何にも言わないから!」
「やめて!」
ペガサスで天空を駆ける二人の姉妹は、そこで口論を繰り広げていた。
「姉様、どうしていつもそうなの!」
かりかりとした雰囲気。クラリスが暗雲を呼び寄せていく。
「空」を司るエレメントを持つクラリスは、自らの周りの天気を変えるという、人智を超えた力を持っている。
それは、今までの力を持つ者でも数少ない天才だった。
「雨よ───この愚人に、天災を与えたまえ」
クラリスは、大きな黒い剣を天に掲げて魔法を唱える。
ばり…と稲妻が轟いた。アイリスはびくりと身体をふるわせて、自らも対抗する。
「クラリス…あなた」
「姉様は黙って!」
「炎よ───あたりを業火で守りたまえ!」
アイリスも聖槍を掲げる。振り下ろして、あたりの炎をぐらりと揺らす。
轟々と鳴る音に、クラリスは耳をふさいだ。
「クラリス!民に被害を与えることはやめなさい!あなただって一国…いいえ、二国を背負う王女なのよ!!」
「それが何なの?ここでは私は王女じゃないわ」
はぁ……とアイリスは深いため息をついて、洗脳をとく鍵のあるはずの場所へとペガサスを飛ばした。
世界を救うためなのに、どうしてこうなってしまうの……
そう思いながら。




