03 しょくじ
優吾や瞬一は、スマートフォンを取り出すと、実家に掛けたりラインを確認したりした。
まずはあったことの報告。そして無事かどうかを尋ねた。
中には、すでにそんな確認は終えているという者もいた。
いま、つられて、
(確認しなきゃ)
と思い立った者もいた。
大半の家は無事だったが、
「私感染してる、帰ってきちゃだめ」
という言葉や文字を送られて嘆く者もいた。
(そんな)
と。
そんな者もいるからこそ、辰彦や優里に対して向ける目にもまた、切なくなるものがある。
(いつかはああなってしまうなんて)
と、そういう目で見るのだ。
辰彦と優里、他数名の引っ掻かれた者たちもまた、いまのうちに家族に連絡を取った。
スマートフォンの確保は簡単ではあった。
教室に戻る必要がある人の分もあったが、机の横の鞄にだけ手を入れ、狂ってしまった化学教師、音山から触れられないようにするのは、そこまで難しくはなかった。
家が無事じゃない者に対し、優吾は、
「誰かの家に泊まらせてもらって」
と告げた。
そんな優吾の家はどうやら無事らしい。
ネオ東京市の完全な安全が確認されるまで、特大の鉄の壁は建てられたまま。
それが取っ払われるまで、ここの教師がほぼ全滅している以上、運動や読書で時間を潰すしかない。
運動場ではすでにサッカーをしている者がいる。
スマートフォンを眺めている者も。
音楽を聞いているか、もしくは、ドラマでも見ているか。
夜になると、家が無事な者は、一旦帰った。
家族とのほっとする時間は、慎重に、
「本当だろうな」
と確認してからになった者がほとんどだった。
夕食を済ませると、優吾は天堂高校へと再度向かった。
途中にマクダナルズがある。
その店は、その日をやり過ごすために来た客によって運営されていた。
店員はいない。というより、外の柱にくくり付けられていた。「うういああ」と、嘆いているのか何なのか、意味の不明な声だけを発する者となって。
(やっぱり、ちゃんと確認しててよかった)
待ち合わせ場所だった。
そこへ、恵美菜と瞬一と実夢が来た。
実夢は、
「じゃあ、やるね」
と、業務用ポテトを揚げたり、バンズ、パティを焼いたりした。
「できたよ」
「よし」
優吾がうなずくと、彼らは天堂高校へと向かった。
水飲み場の横、近づき過ぎない場所に。辰彦と優里、ほか数名、合計で五人分を、それぞれの前に、一人分ずつを置いた。
「好みは、たっちゃんのは僕が知ってるから、それで作ってもらった」
優吾がそう言ったあとで、実夢が、
「優里のはチーズマシマシだよ」
と、声を震わせた。
こんな何気ない会話が、いつか終わりを迎える。恐らく確実に。という想いが、急にあふれ出したのだった。
さらに優吾が、
「ほかは腹持ちのいいように、十分な量を持ってきた」
と、ほかの三人にも。
ジュースも用意していた。今後も食料と水は大事だろうと思わされる。
その状況で、
「たっちゃん」
と優吾は言ったが、その先をなかなか言えなかった。すると辰彦が、
「気にすんな。それより夜、大丈夫か? 気をつけろよ」
「うん」
友人が狂い、人ではないような存在になってしまう、そう思った優吾にとっては、それが精一杯の返事だった。
翌日。
朝の食事も辰彦と優里のことを考えなければならなかった。……皆が持ち寄った。
中には菓子を持って来た者もいた。
「ふはっ、お供え物としめ縄かよ」
辰彦は笑っている。
優吾は、複雑な表情だった。




