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ネオ東京市はツリーマンの地として閉鎖されました。  作者: 阿川時定


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3/3

03 しょくじ

 優吾(ゆうご)や瞬一(しゅんいち)は、スマートフォンを取り出すと、実家に掛けたりラインを確認したりした。

 まずはあったことの報告。そして無事かどうかを尋ねた。

 中には、すでにそんな確認は終えているという者もいた。

 いま、つられて、

(確認しなきゃ)

と思い立った者もいた。


 大半の家は無事だったが、

「私感染してる、帰ってきちゃだめ」

という言葉や文字を送られて嘆(なげ)く者もいた。

(そんな)

と。

 そんな者もいるからこそ、辰彦(たつひこ)や優里(ゆうり)に対して向ける目にもまた、切なくなるものがある。

(いつかはああなってしまうなんて)

と、そういう目で見るのだ。

 辰彦(たつひこ)と優里(ゆうり)、他数名の引っ掻(か)かれた者たちもまた、いまのうちに家族に連絡を取った。


 スマートフォンの確保は簡単ではあった。

 教室に戻る必要がある人の分もあったが、机の横の鞄(かばん)にだけ手を入れ、狂ってしまった化学教師、音山(おとやま)から触れられないようにするのは、そこまで難しくはなかった。


 家が無事じゃない者に対し、優吾は、

「誰かの家に泊まらせてもらって」

と告(つ)げた。

 そんな優吾の家はどうやら無事らしい。


 ネオ東京市の完全な安全が確認されるまで、特大の鉄の壁は建てられたまま。

 それが取っ払われるまで、ここの教師がほぼ全滅している以上、運動や読書で時間を潰すしかない。

 運動場ではすでにサッカーをしている者がいる。

 スマートフォンを眺(なが)めている者も。

 音楽を聞いているか、もしくは、ドラマでも見ているか。


 夜になると、家が無事な者は、一旦帰った。

 家族とのほっとする時間は、慎重に、

「本当だろうな」

と確認してからになった者がほとんどだった。


 夕食を済(す)ませると、優吾(ゆうご)は天堂(てんどう)高校へと再度向かった。

 途中にマクダナルズがある。

 その店は、その日をやり過ごすために来た客によって運営されていた。

 店員はいない。というより、外の柱にくくり付けられていた。「うういああ」と、嘆(なげ)いているのか何なのか、意味の不明な声だけを発する者となって。


(やっぱり、ちゃんと確認しててよかった)

 待ち合わせ場所だった。

 そこへ、恵美菜(えみな)と瞬一と実夢(みむ)が来た。

 実夢は、

「じゃあ、やるね」

と、業務用ポテトを揚げたり、バンズ、パティを焼いたりした。

「できたよ」

「よし」

 優吾がうなずくと、彼らは天堂高校へと向かった。


 水飲み場の横、近づき過ぎない場所に。辰彦(たつひこ)と優里(ゆうり)、ほか数名、合計で五人分を、それぞれの前に、一人分ずつを置いた。

「好みは、たっちゃんのは僕が知ってるから、それで作ってもらった」

 優吾がそう言ったあとで、実夢が、

「優里のはチーズマシマシだよ」

と、声を震わせた。

 こんな何気ない会話が、いつか終わりを迎える。恐らく確実に。という想いが、急にあふれ出したのだった。


 さらに優吾が、

「ほかは腹持ちのいいように、十分な量を持ってきた」

と、ほかの三人にも。



 ジュースも用意していた。今後も食料と水は大事だろうと思わされる。

 その状況で、

「たっちゃん」

と優吾は言ったが、その先をなかなか言えなかった。すると辰彦が、

「気にすんな。それより夜、大丈夫か? 気をつけろよ」

「うん」


 友人が狂い、人ではないような存在(もの)になってしまう、そう思った優吾にとっては、それが精一杯の返事だった。


 翌日。

 朝の食事も辰彦と優里のことを考えなければならなかった。……皆が持ち寄った。

 中には菓子を持って来た者もいた。

「ふはっ、お供え物としめ縄かよ」

 辰彦は笑っている。

 優吾は、複雑な表情だった。

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