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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:92 戦う女神

「ん……ここは、どこだ?」


 目を覚ますと、ノーティスは知らない街の中にいた。

 ただ、知らないだけではなく、普通の街とは何かが違う。

 あまりにも見た事のない光景が広がっているのだ。


 無論、ここがスマート・ミレニアムではないのは、一目瞭然だった。


 辺りには、滑らかな石材で出来た大きな直方体の建物が立ち並び、巨大なガラスの中には次々に動く映像が映し出されている。


───ホラムか?


 一瞬そう思ったのは、ホラムがスマート・ミレニアムとは違い科学を発展させているからだ。


 けれど、すぐに違う事に気付く。

 この街を行き交う大勢の人達は、鎧はもちろんの事、誰一人として額に魔力クリスタルを埋め込んでいないから。


───まさか、ここがトゥーラ・レヴォルト?!


 けれど、その考えもすぐに違う事に気付く。


 行ける訳が無いからだ。

 スマート・ミレニアムからは、あまりにも離れた場所。

 何よりも、トゥーラ・レヴォルトは魔力クリスタルの救いを拒否した蛮族。

 自分がこんなとこにいて、無事で済んでいたハズがない。


───じゃあ、一体ここはどこなんだ……


 ノーティスはその時、ハッ! と思い出した。

 昔、アンリのクリスタル・ゲートから見た異世界の光景を。


 もちろん、あの時見れたのは一瞬だったが、あの光景はノーティスの記憶に鮮明に残っている。

 不思議な記憶と共に。


───間違いない。ここは、あの時に見た異世界だ! でもなぜ俺はここに……


 ノーティスは驚きと不可思議さを心に交叉させたまま、ゆっくりと街を歩き出した。


 額の魔力クリスタルには、誰も触れてこない。

 たまにチラチラ見られるぐらいだ。

 そういえば服装も何か系統が違うが、異世界ならば当たり前かと思い、ノーティスはそのまま探索を続けていく。


 すると、広場に人が大勢集まっているのを見かけた。


───ん? 何だアレは。


 ノーティスがそう思い近づくと、その場の人達に大きな声で演説をしている女の子の姿が目に映った。


「……事態条項には断じて賛成できません! 今こそ立ち上がりましょう! 私達の子供や孫、そしてこの日本を守る為に!」


 彼女の演説に聴衆達が大きな拍手をしている中、ノーティスは彼女をジッと見つめながら考え込んだ。


──条項? なぜ反対? そしてニホン。聞いた事は無いが、この街の名前だろうか。いや、条項というからには国である可能性も否めない……


 ノーティスがそこまで考えた時、一瞬頭にズキッと痛みが走り、その直後思い出した。


───俺はこの街を知ってる! そしてあの子の事も!


 けれどノーティスは、ここがどこで彼女が誰なのかは思い出せない。

 ただ、知っでるという事を思い出せただけだ。

 それが余計にノーティスを混乱させる。


───どこだ……そしてあの子は……


 ノーティスが顔をしかめながら想いを巡らせていると、広場に数台の車が到着した。

 白と黒の2色に塗られていて、屋根には赤い光がチカチカと灯っている。


 そして、その数台の車のドアがバンッと開き、そこから一斉に屈強な男達が降りてきた。


 その男達は聴衆を掻き分け、彼女の周りをズラッと囲むと、その中の1人が彼女をギロッと睨みつける。

 恐らくこの部隊のリーダーだ。


「貴様を国家反逆罪で緊急逮捕する!」


 男がそう告げた瞬間、他の男達が彼女の体を後ろと両脇からガシッと拘束した。

 すると彼女はもがきながら、男達をキッと睨む。


「くっ……何が国家反逆罪よ! アナタ達がこの国を……そして自由を奪おうとしてる事が、どうして分からないの?!」


 彼女は悲痛な想いと共にそう叫んだが、男は彼女にズイッと近寄るとニヤッと嗤い、彼女の両手にガシャッと手錠をかけた。


「黙れ……国家に楯突く反逆者め!」


 けれど、彼女の眼光は衰えない。


「反逆者と言われても構わないわ。けど……この国の未来だけは必ず守ってみせる!」

「フンッ、今からムショにブチ込まれるお前に何が出来る」

「……私は諦めない。意思を継ぐ人がいる限り、必ずこの国を狂気から奪還するわ!」

「ハンッ、狂気に犯されてるのはお前らだ」


 自分の言葉も想いも全く伝わらない事に、彼女はその綺麗な瞳に涙を滲ませる。


「違う……お願い、気付いて。もう残された時間は無いの! 私達だけじゃない。これから未来を生きる子供達が……」


 彼女がそこまで言うと、男は彼女の顎を指でクイッと持ち上げジトッと睨んだ。


「黙れ……! キサマの戯言や陰謀論に付き合ってる暇はない。お前は国家の法に背いた。だから逮捕する。それ以上でもそれ以下でもない!」


 男はそう言い放つと、部下達に彼女を広場から車に連行するよう指示を出した。

 そして、ガシッと体を拘束されたまま連行される彼女は、その途中で涙を零す。


「皆様、ごめんなさい……私は守れませんでした。でも、この国の自由の光を、どうか、どうか消させないで下さい!」

「おいっ、いい加減に黙れ。この反逆者が!」


 男がそう怒鳴りつけた瞬間、聴衆の1人が体をブルブル震わせた。


「……その人を連れて行くな! こんなのは間違ってる!!」


 彼女がその男をハッと見つめた瞬間、それが他の聴衆達に伝播していく。

 こうなれば抑圧されていた分、火がつくのは早い。


「そうだ! 日本から自由を奪うな!」

「彼女を離せ!」

「お前らの横暴、ネットに晒してやっからな!」


 聴衆達のその声に、ギリッと歯を食いしばり聴衆達を睨みつける男達。


「貴様らも抵抗するなら全員しょっぴいてやるぞ! この愚民共が!!」


 彼女に手錠をかけた男が怒声を上げると、聴衆達の怒りはよりヒートアップし暴動が起こった。

 ワァァァァッ!! と、いう声の中、聴衆達と警官達がもみ合いになり現場は壮絶な状況に……! 

 そしてその最中、聴衆の1人の男の拳が警官の頬をガツンと捉えブッ飛ばした。


「ぐわっ……!」

「ハァッ……ハァッ……」


 思いっきり殴った男は、息を切らして警官を見つめている。

 そんな中、殴り飛ばされ怒りが一気に沸騰した警官は、ググッと立ち上がると、腰に携帯している銃をサッと引き抜き、自分を殴った男に両手で構えた。


「キ、キサマーーー! 許さんっ!!」


 その光景を見た彼女はハッ! と目を見開くと、拘束されていた体を警官の隙を見て勢いよく振り解き、銃を向けられた男の前に駆け寄った。

 そして、警官に向かい両手をバッと広げ立ち(はばか)る。


「ダメっ!!」

「どけ!」

「やめなさい! 私達が争ってる場合じゃないの! 気付いて……お願い!!」


 けれど警官は彼女の命をかけた静止も聞かず、引き金の指にググッ……っと力を込めていく。


 ノーティスはその瞬間、彼女を助ける為に全速力で駆け寄ろうとした。

 彼女が誰なのかは思い出せていない。

 けれど、ノーティスの魂が告げていたのだ。


 『大切な人だ。必ず守れ』


 だが、ノーティスの体は動かなかった。

 正確にいえば、とてつもなく遅くしか動かない。

 それは一瞬だったが、何者かがノーティスの動きを封じたのだ。

 その場の空間ごと時の流れを歪めて。


───くっ……なぜだ! これは一体。


 謎の現象に阻まれノーティスが憤る間に、銃口から弾丸が放たれ彼女の胸をバシュ! と、撃ち抜いた。


「あぁっ……!!」


 彼女は胸から鮮血を拭き上げると、涙を上に零しながら背中からドサッと倒れ、胸からどくどく血を流していく。


 その瞬間、空間が正常に戻ったノーティスは彼女に駆け寄り、片膝をついて彼女を抱きかかえた。


「おいキミ! しっかりするんだ!」


 すると彼女は、涙を流しながらノーティスの頬に片手を伸ばし、ゆっくりと微笑む。


「やっと……やっと、会えたね……」

「……!」

「お願い……この国を……未来を守って……!」


 彼女がノーティスを見つめながらそう告げた瞬間、それは起こった。

 なんと、ノーティス達以外の時間が止まり、周囲に薄暗い紫色の磁場のようなモノがブワァンッ!! と、一瞬で広がったのだ。


「こ、これは一体……」


 その時、天空から漂ってきた。

 禍々しく、全てを闇に覆い尽くすかの如き絶大なオーラが……!

時空間を歪める事の出来る存在。

天空から降臨してくるのは、一体何者なのか……!



次話は、ノーティスが一度全ての記憶を取り戻します。

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