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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:93 悪夢と愛しいルミ

「な、何だこれは?!」


 ノーティスは片膝をついて彼女を抱きかかえたまま、ギョッとした表情で周りを見渡した。

 世界全体が、異様な黒い紫色の磁場に覆われているからだ。


「これは、一体……」


 そう零した瞬間、天空から巨大な白く神々しい光がサアアッと降り注がれ、その光の中から、この世の者とは思えない5人の巨大な超越者とも呼ぶべき存在が降臨してきた。


「な、なんだあれは!!」


 ノーティスは驚愕に目を大きく開き見つめる。

 まるで、世界の終わりを告げてくるような存在の彼らを。


 そんな彼らは、邪悪そのものかつ神の如き絶大なオーラを放ちながらノーティスを見下ろし、神々しさと禍々しさが交叉した声で告げてくる。


「光の勇者エデン・ノーティス。これはお前の夢……しかし、同時に現実でもある」

「夢であり現実? どういう事だ!? 何よりお前達は一体……」


 その瞬間、ノーティスの頭に凄まじい痛みが走る。


「うっ……! くっ、こ、これは……!」


 脳内を駆け巡っていく痛みと、それに伴って溢れ出てくる大量の記憶。


 ノーティスは両手で頭を抱えて顔をしかめる中で、全てを思い出した!

 なぜ今自分がここにいて、彼らが誰で、これまで何をしてきたのかを!

 そこから全身に駆け巡っていく。

 彼らの激し過ぎる怒りが……!!


 ノーティスは頭痛が収まると、彼女を抱えたままギリッと歯を食いしばり、悲壮な想いと共にゆらっと立ち上がる。

 そして彼らを下からキッ!! と、睨みつけた。


「お前達のせいで俺は……いや、俺達は皆……!!」


 しかし、ノーティスのその気持ちを嘲笑うかのように、彼らはその瞳を邪悪な光で輝かす。


「我らの鍵であり同時に仇名すその女。どこに行こうとも…どの世界に転生しようとも、決して逃さぬ」

「そうよぉ♪ 決して逃さないから」

「ヒヒヒヒヒッ♪ 逃さなーーーーい」

「それに光の勇者、オマエもだ。オマエの魂の逃げ場など、どこにもありはしない」

「所詮、我らの因果律から逃れる事など出来ぬ運命……諦めるがいい」


 ノーティスには分かっていた。

 彼らは超越者であると同時に、この世界を破滅させる事を悦ぶ(おぞ)ましき存在達だと。


 けれど、ノーティスは鞘から剣をスッと抜くと、彼らに臆することなく剣を構え、精悍な眼差しを持って正面から向き合った。

 師であるアルカナートが、そうしてきたように。


───師匠。俺は……


 ノーティスはアルカナートに想いを馳せながら、彼らを決意と共に睨みつけた。


「因果律? 逃げ場? 諦める? お前らの勝手な基準で俺の……いや、俺達の人生を勝手に決めるなよ……俺達はお前らの玩具(おもちゃ)じゃない! 命を……生きる事を侮辱するな!!」


 ノーティスは激昂しながらも、自身の心をしっかりと見据えて詠唱を行う。

 必ず勝たなければいけないから。

 この邪神達に、自分だけで……


「ハァァァァッ……! 光のクリスタルの名の下に、限界を超えて輝け!! 俺のクリスタルよ!!!」


 ノーティスは、自らの額の魔力クリスタルから放たれるゴールドの煌めきを全身に纏い、超越者達に必殺剣で突撃していく。


「お前達を倒し……俺は、今こそ全てに決着を付ける!! 闇の彼方へ還れ!! 『アトミック・エクス・ギルスラッシュ』!!!」


 ノーティスは涙を(ほとばせ)ながら、たった一人で彼らに立ち向かっていった。

 この身が引き裂かれても消えない程の、悲しい記憶と絶望を胸に抱えて。


───ロウ……アンリ……レイ……ジーク……メティア……そして……!


「ハァァァァッ!!!」


───みんな……俺は未来を変えて、今度こそ、みんなとこの世界を……そして……キミを守り抜く!!


 その想いと共に邪神達に立ち向かうノーティスの意識は、漆黒の闇に覆われていった……


◆◆◆


「……様っ」

「……ティス様っ!」

「ノーティス様っ!」

「うわっ!」


 ノーティスが目を覚ましガバっと上半身を起こすと、その目に飛び込んできたのはルミの姿だった。

 心配した顔でノーティスの事を見つめている。


「大丈夫ですか、ノーティス様」

「ん、あぁ……」

「大分うなされていたご様子でしたが……」


 ルミからそう言われ、体中汗をぐっしょりかいている事に気付いたノーティス。


「うわっ、俺ベタベタじゃん」


 そうボヤきながら、どんな夢を見たのか思い出そうとしたが全く思い出せない。


「ルミ、俺どんな夢見てたんだっけ……」


 片手で頭をクシャっと掻き寝ぼけてるノーティスに、ルミは呆れた顔でやれやれのポーズを取る。


「知りませんよ。さすがに、そこまで管理は出来ません」

「まぁそうだよな……けど、何か大切な事だった気がして……」


 少し考え込んでるノーティスを、ルミは何となく不思議そうに見つめた。

 あまり見た事が無い表情だったから。


 そしてそのまま少し見つめると、ルミは軽く諭すような表情に変えた。


「ノーティス様。夢も大切ですけど、今日は現実的に何の日かご存じですか?」

「現実的に……」


 そうボヤいた瞬間、ハッと気付いたノーティス。


「ヤバッ! 今日は教皇様の謁見の日だ!」

「そーです♪ よく出来ました」


 そう言って少し呆れた顔で微笑んだルミに、ノーティスは用意しながらぶつくさ文句を言ってくる。


「いやルミ、だったら何でもっと早く起こしてくれなかったんだよ」

「起こしましたよ、何度も。これで3回目です。足りませんでしたか?」


 ルミがちょっと強い視線で見つめてきた時、ノーティスは悟った。

 これ以上文句を言ったら怒られると。


「えっ? あっそっか……ごめんルミ。取り敢えず急ごう!」

「もう、お車は準備してあります♪」

「さっすがルミ!」


 ルミにそう礼を言うや否や、ノーティスは大慌てで準備を済ませルミと車に乗り込んだ。


「ではノーティス様、行きますよ♪」

「頼むよ! ルミ」

「任せてください。私、ノーティス様の執事ですから♪」


 ルミは笑顔でそう言うと、アクセルを目一杯踏んだ。


 ルミの運転は、相変わらず早い上に心地がいい。

 窓の外の景色が静かにドンドン移り変わっていく。

 そんな車に揺られながら、ノーティスは夢の内容を思い出そうとしたが、残念ながら一切思い出せなかった。


───やっぱり無理か。でも……


 ノーティスは、ルミをチラッと横目で見る。

 嬉しそうに運転してくれている、ルミの頼もしく可愛い姿を。


───夢がもし悪夢であったとしても、俺はこの現実に感謝してる。


「ルミ、ありがとうな」

「な、なんですか急に」

「いや、別に♪」


 ノーティスは後頭部に両手を添えてシートによたれかかると、嬉しそうな顔をして目を閉じた。

今ある現実に感謝するノーティス。

けれど、あの悪夢は一体何を告げるのか……!



次話はあの教皇からの訓示にザワつきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 思いもよらない展開、驚いた。 そして日本、パトカーらしき車。 一体どんな展開が待っているのか楽しみ。
[気になる点] 大規模で転生体がいる?
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