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cys:73 苛立つパーティ

 シドが彼女と別れホラムに行軍している時、ノーティス達はホラムの宮殿の控室に集まり陰鬱な面持ちを浮かべていた。


「ノーティス、災難だったな」

「いいのさロウ……」


 ノーティスがソファーに座って両手を組んだまま静かにそう零すと、近くに立っているレイがノーティスにキッ! と、鋭い視線を向け身を乗り出してきた。


「よくないわノーティス! あんな風に恥をかかされて、アナタは何とも思わないの?!」


 レイの叫びを受けたが、ノーティスは横顔を向け黙ったままだ。

 言い返す事も無く沈黙している。

 そんなノーティスに、ジークも壁に背を預け腕を組んだままイラっとした眼差しを向けてきた。


「正直、俺もそう思うぜ。むしろ、あの場で暴れてもよかったんじゃねぇか」

「そうよ! なんであのまま帰ってきたのよっ!」


 レイとジークから激しい言葉を浴びせられたノーティスだが、やはりソファーに座ったまま何も答えない。

 それにより空気が重くなる中、メティアが小さく口を開く。


「二人の気持は間違ってないと思うけど、ボクはこれでよかったんじゃないかと思ってる……」

「なんですって?!」

「レイ、落ち着いて。ノーティスはボクらのリーダーだよ。きっと考えがあっての事だと……」


 メティアがそこまで言った時、レイは片手でテーブルをバンッ! と、叩きつけた。


「もういいわっ!」


 その怒声にビクッとしたメティアをよそに、レイはノーティスを睨みつけている。

 けれど、ノーティスの表情は変わらない。

 言い返せないのではなく、何かを思案している表情だ。


 レイはそんなノーティスにクルッと背を向けた。

 背中のマントがバサッと靡く。

 そして、長く綺麗な髪を大きく揺らしながら、ツカツカと部屋の出口に向かっていった。

 メティアがそんなレイに向かい、身を乗り出し叫ぶ。


「レイっ、待ってよ!」


 それを背に受けたレイは、足をピタッと止め扉に向かったまま静かに告げる。


「私はね、バカにされるのが一番嫌いなの……!」


 レイは怒りのオーラを溢れさせたまま扉を開け、部屋からサッと出ていってしまった。

 その姿を見たメティアはシュンとなり、ジークは困った顔をしながら片手で頭をクシャッと掻く。


「あーーーくそっ! ノーティス、悪ぃが俺はレイを追っかけるぜ。メティアの言う通りお前さんには考えがあるのかもしれねぇけど、アイツを危険に晒す訳にはいかねぇからよ」

「……すまないジーク。頼む」

「チッ……!」


 ジークは座ったままのノーティスを一瞬睨むと、そのまま部屋を飛び出した。

 存在感の大きな二人が部屋からいなくなり、少しガランとした感じだ。

 そんな中、メティアは不安げな顔でノーティスを見つめた。


「ねぇノーティス、二人の事追いかけなくていいの? 特にレイは、きっとノーティスに追いかけてきてほしいハズだよ」

「メティア……そうだよな。俺だってそうしたい。それにさっき、二人が言うように暴れたかったさ」

「じゃあなんで?!」


 メティアがそう問いかけると、ノーティスは組んでる両手にギュッと力を込めた。

 その姿からは動きたくても動けない、悔しさが滲み出ている。


「あそこで暴れたら、ヤツラの思うツボだからさ」

「えっ?」


 謎めいた顔を浮かべたメティアの側で、ロウがスッとノーティスに力強い眼差しを向けた。

 ロウは分かっていたからだ。

 ノーティスの考えを。

 そして、ノーティスの今の言葉を聞き感心している。


「フム、さすがだなノーティス。いつかの特別授業が活きてるじゃないか」

「あぁ、ロウのお陰さ」


 二人は通じてるようだが、メティアにはどういう事か分からない。


「えっ、ロウ。どういう事?」


 なのでロウをチラッと見上げると、ノーティスが口を開く。


「ワザとさ」

「ワザと……それって……」


 不思議そうな顔で見つめてくるメティアに。

 やっぱりどういう事なのか分からないから。

 そんなメティアに、ノーティスは手を組んで横顔を向けたまま答える。


「あぁ、考えてもみてくれ。確かに俺も最初はイラッとしたが、あの皇帝はこの国のシステムに絶対的な自信を持っている」

「うん、そーだね……」

「じゃあメティア、アイツはなんでワザワザ俺達を呼んだと思う?」


 その瞬間、メティアはハッとして顔を青ざめさせ、思わず両手で口を覆った。


「まさか……」

「そう。俺達を怒らせ、それを口実にスマート・ミレニアムに賠償金を吹っかけてくるつもりだったのさ」

「信じられない……」


 メティアは、まるで悪夢を見たように震えている。

 その側で、ロウはノーティスに感心した笑みを向けた。

 ノーティスの考察が、自分と全く同じだったからだ。


「素晴らしいノーティス! その通りだ。人の言動の真意を見るべきというのを、ちゃんと分かってるな」

「ロウのお陰だよ。それに俺、こういう汚い事は昔散々されてきたから……」


 ノーティスは昔を少し思い出しハァッとため息を吐くと、メティアに優しく微笑みながら頭にポンと片手を乗せた。


「大丈夫だよ、メティア。あんな汚い奴らの手には引っかからないし、何より感謝してる」

「えっ?」

「メティアは分からなくても、俺を信じてくれた。それが凄く嬉しいよ」

「ううっ、ノーティスーーーー♪ そんなの当たり前じゃんっ」


 ギュッと抱きついてきたメティアを、ノーティスは優しく抱きしめたまま囁く。


「俺はメティアの事、必ず守るから」


 そう告げられたメティアは、ノーティスに抱きしめられたまま潤んだ瞳で見上げた。


「うぅっ……ノーティス、大好きだよ」

「俺もだよ、メティア」


 そう言われたメティアは、分かっていた。

 ノーティスの大好きは、自分の言う大好きとは違うのを

 けれど、メティアはそれでも嬉しくて、しばらくそのまま抱きついていた。


◆◆◆


 その頃、ジークはレイを探してホラムの場内を奔走していた。

 ホラムの場内は広い上にスマート・ミレニアムとは造りも違うのもあり、なかなか探しにくい。

 それがジークの心に焦燥感を募らせてゆく。


「ったくレイのやつ、どこに行ったんだよ」


 そうボヤいた瞬間、ジークはハッとした。


「まさかレイの奴、また不意をつかれてさらわれたんじゃ……」


 ジークはそう思うといてもたってもいられなくなり、大声を出しながらレイを探し回った。


「おーーーーい! レイ! どこだ?! 返事しろ!」


 そして、ドアを片っ端から開けまくっていく。

 カギがかかっていても、ジークの剛力の前では関係無い。


───チッ、すまねぇ。弁償なら後ですっから、頼むから見つかってくれ。どこだっ?!


 ジークは心の中でそう叫びながら駆け回る。

 けれど、いくら探しても見つからない。

 へしゃげたドアが増えていくだけだ。


「クソったれ! どこだレイ!」


 そう叫びながらドアを開けた瞬間、ジークの視界に飛び込んできた。

 湯上がりでバスタオルに見を包んだレイの姿が。


「えっ?! あっ……!」


 顔を真っ赤にして固まるジーク。

 方やレイは突然ドアが空いたので物凄く驚き、目を大きく開いてジークに振り返った。

 そして、部屋に置いてあった小物を投げつけていく。


「バカ! 変態! スケベ! 最低っ!!」

「いや違う、俺はお前さんがいないから何かあったんじゃないかと……」

「いいから出てって!!」

「わ、分かったよ、わざとじゃねぇんだって! すまねぇっ!」


 ジークは逃げるように部屋から飛び出し、顔を火照らせたままドアの前でへたり込んだ。


「なんだよ……ワケ分かんねぇ」


 そうボヤくジークだが、レイはレイでドキドキしながら胸を押さえていた。


「何なのよいきなり! ドアに来賓用の名前表示されてるじゃない。全く、それも見ないなんて……」


 レイは自分でそこまで言って言葉を止めた。

 ハッと気付いたからだ。


───なによアイツ。それも目に入らないぐらい、必死で探してたって事……? ありえない。本当にありえない。けど……


 レイはハァッとため息をつくと、嬉しそうに微笑んだ。

 そして、服を着替え身支度を済ませると、ドアを開けようとした。

 が、開かない。

 その理由はすぐに察しがついた。

 まるで、それが見えるようなシンプルな理由だ。


「ハァッ……ジーク! アナタがそこにいたらドア開かないんだけど!」

「あっ、わ、悪いっ」


 ジークがドアから飛び退くと、レイはガチャっと開けジークを見つめた。


「強引に入ってきたり閉じ込めたり、まったく……アナタ何がしたいの?」

「い、いや、そーゆーつもりはなくてよ、ただ敵地っちゃ敵地だしよ、お前さんに何かあったらどーしようかと……」


 ジークが慌てながらそこまで言うと、レイは軽く微笑んだ。

 そしてそのままジークの口に、そっと人差し指を縦に添えた。


「分かったから♪」


 顔を真っ赤にするジークを、レイは妖しくセクシーな瞳で見つめたまま静かに囁く。


「次は優しくしてね♪」

「あっ……あぁ、分かったよ」


 ジークが何とかそう答えると、レイはクルッと背を向け歩き出した。


「おいレイ、どこ行くんだよ?」


 すると、レイはスッと振り向き微笑む。


「探検に決ってるじゃない♪ どーせやる事無いんだし」

「いや、まぁそーいやそうだけどよ……」


 ジークがそうボヤいている内に、レイはスタスタ歩き出している。

 けれど、ピタッとその足を止め、ジークの方へ美しい髪を靡かせながら振り返った。


「ねぇ、一人で行かせる気?」

「……! ったく、しゃーねーな」

「フフッ♪ 早くしないと私どっか行っちゃうから」


 そう言って軽く微笑み、楽しそうに歩き出したレイ。

 ジークはその後ろ姿を見ながら、安心してそっとため息をついた。

ジークとレイは、結構似た者同士かも……

次話はジークとレイがノーティスの真意を知ります。


まだの方はブクマしておいて下さい\(^o^ )

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