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cys:50 人の夢を嘲笑う者

「ん……!」


 翌朝メティアが目を醒ますと、その瞳に温かい日差しと共に街行く人達の光景が映った。


「あっ、そうか……ボク、昨日ここで泣いたまま寝ちゃってたんだ……」


 しゃがみこんだままゴシゴシと目をこすると、昨日の光景がメティアの脳裏に蘇ってくる。


『去れ、メティア。お主の様な役立たずにいられては気分が悪い。吐き気すらする』


───ヒカイト……


『メティアー、私、アンタ見てると同じ女である事が嫌になりそうなの。だから消えて。今、す・ぐ・に♪』


───リィーテ……


『まだ分かんねぇのか?! メティア、テメェは追放だって言ってんだよ! 去れ、役立たずのゴミ女!』


───イクタス……!


「そう、ボクはみんなから追放されたんだ……」


 メティアはそれを思い出すと心が黒い悲しみに覆われそうになったが、同時に思い出した。


『ぐすっ……メティアちゃん。キミならきっと、きっと素敵な仲間に出会えるから!』


 涙ながらにリューイが一生懸命励ましてくれた事を。

 すると、闇に覆われそうだった心に光が差し、メティアはその光に意識を集中させていく。

 心を明るくして、これから頑張っていく為に。


「リューイさん、ありがとう。そうだよね。いつまでもメソメソしてられないよね!」


 そう思ったメティアは、その場からスッと立ち上がりグッと拳を握って上を向いた。


「よしっ、頑張るぞ♪」


 メティアは元気な声で自分に発破をかけると、一旦自宅に戻りシャワーを浴びて身なりを整え、再びギルド会場へ向かう。

 新しい仲間を探す為に。


 ただ、自宅からギルド会場へ向かってる途中で、メティアは凄くお腹が減ってきた。


「あっ、そーいえば昨日から何も食べてないんだった」


 そう呟きピタッと立ち止まったメティアは、何か食べたいなーと思って周りを見渡すと、ちょうどよさげな喫茶店が目に映った。


◆◆◆


 カランコロン♪ と、いう音と同時にドアが開くと、可愛い制服に身を包んだ女の子達がキラキラした笑顔をメティアに向けてくる。


「いらっしゃいませー♪ アステール・ダストへようこそ♪」


 メティアはそんな店員に微笑み返す。

 こういう時こそ、自分も笑顔でいなきゃと思ったからだ。


「その制服似合ってて可愛いですね。ボクも着てみたいな♪」

「ありがとうございます♪ オーナーもきっと喜びますし、お客様もとても可愛くて素敵ですよ♪」

「あ、ありがとうございます♪」


 照れて少し頬を赤くしたメティアを、店員は上機嫌な面持ちで席に案内した。


「ご注文お決まりになりましたら、お呼びください♪」

「あっ、じゃあ……」


 店員にその場で注文したメティアは、周りをスッと見渡した。

 冒険者もちらほらいれば、普通のカップルや一人で本を読んでる人もいる。


 メティアは昔から少し落ち着きが無いと言われるが、周りの景色や人が気になってしまう性格なのだ。


───色んな人がいるなぁ……あっ、アレは執事さんとそのご主人様かな……? ご主人様の後ろ姿素敵だし、執事さんは凄く可愛い人だな……♪


 メティアが見つめた2人はノーティスとルミだ。

 二人はテーブルを挟んで話をしていた。


「……と、いう訳なんだけどさ、そんな人材なかなかいないよ。ルミ、どうしたらいいんだ」

「頑張って下さいノーティス様。優秀なお仲間を探すのも勇者の務めです」


 静かにそう答え紅茶をすするルミに向かい、ノーティスは参ったという顔をしている。

 ノーティスは自分が頑張る事に関しては得意だが、人を勧誘したり発掘するのは得意じゃないから。

 能力の問題ではなく、性格がそうなのだ。


「ルミ、俺が1番苦手な務めだよ」

「……はい、お察し致します♪」


 静かにそう答えたルミに、ノーティスは軽く口を尖らした。


「こういうのって、アンリとかの方が得意なんじゃないかな」

「でしたら、アンリ様にお尋ねしてみてはいかがですか」

「いや、それが何となく気が引けるっていうかさ……」


 ノーティスが軽く不満げにそう告げると、ルミはカップをソーサーにそっと置き、諭すような凛とした瞳を向けた。


「お気持ちは分かりますが、仲間を上手く頼る事もこれからのノーティス様には必要です」

「う~~ん、一人で出来る……」

「事は限られています。いくらノーティス様がお強くてもです」

「ハァッ……だよな」


 メティアがそんな二人を微笑みながら見つめていると、さっき注文した紅茶とケーキが運ばれてきた。


「お待たせしました。コスモティーとニケのカレッタでございます♪」


 この紅茶とケーキは、メティアがメニューを見た時直感的にコレだと思ったオーダーだ。

 まるで宇宙を思わせる神秘的な色の紅茶と、女神のニケの形のケーキ。


 ただ、紅茶に映った自分の顔を見たメティアは、やはりまだ自分の顔がいつもと違い暗くなってる事に気付いた。


───暗くなってたらダメだよね。応援してくれたリューイさんに安心してもらう為にも、ここから頑張らなきゃ!


 メティアは紅茶に映る自分を見ながら決心すると、コスモティーをクッと飲んだ。

 まるで、本当に宇宙のエネルギーが入ってるかのようにメチャメチャ美味しかったし、なんだか力が湧いてきた。

 ケーキの味も抜群だし、甘い物好きのメティアにとって最高だ。


「よしっ♪ やるぞっ!」


 メティアは元気よく店を後にし、ギルド会場へ向かった。


◆◆◆


 ギルドの会場に着いたメティアは、ヒーラーを募集している幾つかのパーティーに声をかけてみた。

 幸いヒーラーの需要は多いいので、どこかのパーティーには入れてもらえると思っていたから。

 けれど、結果はどれも惨敗で理由はどれも一緒。


『スカーレット・イグニスを追放された、役立たずのヒーラーはいらない』


 そう言われ、どのパーティーにも断られ続けたのだ。


 メティアは辛くて泣きそうだったが、僅かでも話を聞いてくれた事にお礼を言ってギルドから家に帰る。

 そしてまた翌朝からギルドに行き、仲間集めに奔走した。

 もちろんその間も、ギルドからの依頼を一人でこなしながらだ。


 ヒーラーなので報酬の高い討伐系の依頼は受けれなかったが、生きていく為に日々様々な依頼をこなす。

 その合間に仲間集めに走る。


───リューイさん、待っててね。もうすぐだから。


 辛くても、その一心で日々頑張るメティアだが、パーティーはなぜか一組もいなかった。


 もちろん、メティアが自分の出来る事を伝えると皆興味を示すし、幾つか仲間にしてくれそうなパーティーはある。

 また、中にはメティアの魔法の内容に驚愕するパーティーだっていた。

 けれど、いつも最後でバツ悪そうに断られてしまうのだ。


───なんでだろう……きっとボクみんなの力になれるハズだし、分かってくれてるハズなのに……


 メティアは違和感を感じながらも日々頑張ってきたが、ある日の出来事を境にもう疲れ切ってしまった。


 その日もギルトの依頼をこなした後、仲間集めを断られギルドから帰ろうとしていた時の事。

 かつての仲間だったイクタス達が、メティアに後ろから声をかけてきた事が始まりだった。


「おいおいメティア、まーだいたのかよ。いい加減無駄だって気づけよ」

「フゥッ、お主も往生際が悪いな」

「諦めの悪いメンヘラちゃんなのかしら? アハハッ♪」


 下卑た笑みで見下ろしてくるイクタス達に、メティアは目を丸くした。


「イクタス、ヒカイト、リィーテ……その格好は?!」


 イクタス達はメティアを嘲笑ってくるものの、自分がパーティにいた時よりも明らかに傷が増えているし、焦燥感が目立つからだ。


 もちろん、イクタス達はB+ランクのパーティとして虚勢を張っているが、メティアの目は誤魔化せない。

 けれど、そんなメティアにイクタス達はイラっとした顔を向けてきた。


「なんだよ? メティアのクセに、俺らを心配してんじゃねーよ!」

「全くだ」

「ホント、感じ悪ーい」


 そう言い放つイクタス達だが、彼らの脳裏には最近の原因不明の不調の日々が甦る。


『くっそ! なんでこんな奴ら倒せねーんだ』

『体が重い……』

『なんで私の魔法が躱されんのよ!』

『くそったれ……! ヒカイト、リィーテ。一旦退くぞ』

『なっ?』

『またぁ? もうっ、どーなってんのよ!』


───なんでだ。最近敵が急に強くなりやがった気がするし、トラップの遭遇率が多すぎる……


 イクタスはそんな日々の中にいるので、諦めずに元気にしているメティアの事が、より鬱陶しくてしかたなかったのだ。

 自分達はB+ランクどころか、このままだとCランクに降格すらありえそうだから。

 なので、そのうっぷんを晴らす為にメティアに声をかけたのだ。


「メティア、俺らだって好不調はある。けど、お前はいくらやっても無駄なんだよ!」


 イクタスはメティアを怒鳴りつけてきたが、メティアは凛とした瞳で見返す。


「イクタス、そんな事言われてもボクは諦めないよ。一人でも多くの人を助ける為にヒーラーとして腕を磨いて『特級ヒーラー』になる夢があるんだから!」


 メティアがそう言い放つと、イクタス達は声を上げてせせら笑う。


「ハアっ? 笑わせるぜメティア。追放されて、誰の仲間にさえも入れてもらえねぇオマエが? しかも特級だと? ヒャハハハハッ!」

「ハハッ。特級ヒーラーとはSランク王宮魔導回復士の事。呆れて何も言えんわ」

「夢見ちゃん♪ そーゆーのは、お寝んねしてから言いまちょうねーーー」


 イクタス達に自分の夢を嘲笑われたメティアだが、それに怒る事は無くただ強く決意を伝える。

 メティアには夢を叶える為の、強い理由があるから。


「イクタス達がどう思おうと、ボクはそう決めてるんだ! だから新しい仲間も必ず見つける!」


 けれど、イクタスは下卑た笑みを向けたままメティアに告げる。

 メティアにとって最悪の真実を。


「メティア、それは無理ってもんだ。だってよ、俺らだから。お前を仲間に入れないように、ここの奴らに言ってるのはよ。クックックッ……」

「えっ……?!」


 その瞬間、メティアは自らの心が軋む音が聞こえた……

最悪な追い打ちに心が軋む……

次話は遂にノーティスとメティアが出会います!

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