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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第3章 白輝の勇者エデン・ノーティス
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cys:45 無礼者に囁きを

「……ったく、迷惑なヤツだ。下民のくせに、この俺様に楯つきやがって」


 バルガスは、メイの父親の姿を見てうっとおしそうに吐き捨てると、自分を護衛した騎士達に向かいニヤリと下卑た笑みを浮かべた。


「おい、お前ら。あのフェクターを討伐したのは俺だよな」

「えっ?」


 騎士達は余りにも予想していなかった言葉に一瞬耳を疑ったが、バルガスはそんな騎士達を睨みながら再び問う。


「……俺だよな。あのフェクターを討伐したのは!」


───コイツ……どこまで腐ってやがる!


 その場の騎士達は、全員今すぐバルガスをぶん殴りたかった。

 けれど、それは出来ずに拳をギュッと握りしめる。


 バルガスは貴族の息子。

 彼の父親は権力者達との繋がりも強く、この息子の機嫌を損ねれば、騎士ともいえど容易にクビにさせられてしまう。

 それは、日々誇りを持って職務に望む彼等にとって、屈辱以外の何物でもないのだ。


「……はい。あのフェクターを討伐したのは、バルガス様でございます……!」


 悔しさで震えながら答えた騎士達の姿を見て、バラガスは下卑た顔で嗤う。


「ハハハハッ! そうだ。その通り!! 分かってるじゃないか。んーーー?」

「……はい」


 歯を食いしばりながらそう答える騎士達。

 バルガスはその姿を満足そうに見下ろすと、下卑た笑みをニヤニヤと浮かべながらノーティスの側に行き、完全に見下した眼差しを向けた。


「おい、そこの白服。分かってるよな」

「ん? 何が」

「チッ、鈍いヤローだな。いいか、あのフェクターを倒したのはお前じゃない。この俺様だ」

「はっ?」


 思わず、コイツ何言ってんだ? と、いう顔をしてしまったノーティスにバルガスは醜く顔をしかめた。


「キサマっ! なんだその顔は?! お前は一介の冒険者だろ? 俺様は貴族なんだよ」

「それが何か?」

「キサマ……多少腕が立つからって、頭に乗るのも大概にしろよ。この手柄は俺様の物だって言ってんだよ!」


 怒鳴りつけてきたバルガスに、ノーティスは呆れた顔を向けたままだ。


「いや、そーしたきゃそうすればいい。けどお前には、もう無理だぞ」

「はっ? 何を言ってやがる」

「簡単な理由だ。お前はクビになるからだ」


 そう言われたバルガスは醜く顔を歪ませた。

 自分より遥かに格下だと思ってるノーティスから、さも当然のような顔でクビ宣告をされたから。


「はぁっ? クビだぁ? テメェ何様だよ。言っとくけど俺の父さんはなぁ、あの王宮魔道軍師のロウ様や、王宮魔導士のレイ様とも知り合いなんだぞ!」


 バルガスは自慢気にそう告げて、さらに話を続けてくる。

 何も言い返してこないノーティスが、自分にビビってると勘違いしながら。


「ハハハッ! 驚いたろ。ロウ様やレイ様と知り合えるのは、貴族の中でも滅多にいないからな。それに比べて、オマエなんか良くてただのBランクぐらいの冒険者だろ?」

「いや違う。俺はまだ一応、剣士見習いだ」


 するとバラガスは、よりノーティスをより嘲笑う。


「見習い?! ただの見習いかよ! テメェ雑魚じゃねーか。そんなお前が俺をクビとか、マジで笑わせてくれるぜ。ヒャハハハッ!」


 下卑た笑い声がこだまする中、周りの皆が悔しさに顔をしかめている。

 すると、その場に目を疑う様な高級車が、キキイッ! と、勢いよく音を立てて到着した。

 車の勢いで砂埃が舞う。


「あ? 何だいきなり」


 バラガスが訝しむ顔をうかべる中、車のからルミが降りてくると、バルガスを含めた男達はルミの可愛さに目を丸くした。


「な、なんだ?! 超高級車から、メチャメチャ可愛い子が降りてきたぞ!」


 皆が見つめる中、ルミはタタッとノーティスに駆け寄る。


「ノーティス様!」

「よっ♪ ルミ」

「もうっ! よっ♪ じゃないですよノーティス様。いくら渋滞してるからって、走っていくなんて……」


 呆れ顔で脱力したルミに、はにかんだ顔で軽くゴメンのポーズを取ったノーティス。


「悪いっ。でも、やっぱこの方が早かったろ♪」

「だからといって、車で一時間かかる場所から走らないで下さいっ」


 二人の会話を聞いた周りの連中は、訳が分からないという顔で、ノーティスを唖然と見つめている。


───車で一時間? 走った方が早い……? はっ???


 その場の皆が頭に幾つもハテナマークを浮かべる中、ルミはノーティスの側で魔力ポータルを開いて、誰かと話していた。

 その所作はやはり執事そのものだ。


「ノーティス様。ロウ様達に繋がってますので、代わって下さい」

「えっ?」


 マジで? と、いう顔をしたノーティスに、ルミは早くしてという雰囲気で迫る。


「えっ、じゃないです。もう間に合いませんよ! 『勇者の就任式』に!」

「でも……」

「でもじゃありません! ノーティス様」

「分かったよ……」


 ルミに叱られたノーティスは、気まずそうに魔力ポータルに向かい話しかける。


「あっ、ロウ?」

「あぁ、私だ。ノーティス、キミは今どこにいる?」

「ここは……」


 あれ? ここどこだっけ、と思ったノーティスに、ルミがそっと耳打ちする。


(ノーティス様。シルバーエリア・東北東・8739番地です)

「シルバーエリア……東北東……8739番地」

「ハァッ……全く。ルミから一応事情は聞いたが、就任式には間に合うのか?」

「すいません。ちょっと遅れるかも……」


 ノーティスがすまなそうに零すと、ロウの隣からレイがサッと割り込んできた。


「ノーティス!」

「レ、レイ!」

「アナタね、初日から遅刻なんて美しくないわ!」


 レイの怒鳴り声に、うわっと顔をしかめたノーティス。


「悪かったよレイ。けどさ、困ってる人を見捨てて行く方が美しくないだろ?」

「……全くこの子は。いいから、早く来なさい! 教皇様も全員待ってるんだからね!」


 レイはそう怒鳴ると、魔力ポータルをプチッと切った。

 言いっ放しのガチャ切り。

 通信が切れた後の静寂が気まずい。


 そんな中ノーティスは、やってしまったか……と、いう顔をルミに向けた。


「ルミ、ちょっとヤバイな」

「ちょっとじゃありません。かなりです」

「う〜ん……だよな」


 ルミから真顔で言われ唸るノーティスに、ルミは一瞬軽く溜息を零すと微笑んだ。


「でもまぁ大丈夫です。ちゃんと手は打ってありますから♪」

「マジか?! さっすがルミ! 頼りになる〜♪」


 ノーティスは感激してルミに笑顔で感謝を告げているが、それを見ているロバート達は唖然としていた。


「あのよノーティス、どういう事だ? 何か色々凄すぎて、こちとら訳が分からねぇんだが……」


 唖然としながら尋ねてきたロバートに、ノーティスは軽く頭を掻いた。

 全部説明すると長くなりそうだから。

 なので、ロバートに向かいニカッと笑う。


「まあ、ロバート。取り敢えず何とかなるって事さ♪」

「何だそりゃ。全然分かんねーよ!」

「まあまあ、それよりも……」


 ノーティスはバルガスの方をチラッを見た。

 目を大きく見開き、愕然としているバラガスを。


「う、嘘だそんな事……あのロウ様やレイ様と知り合い……いや、そもそもアナタは勇者……様?」

「あぁ。今日の就任式が終わったらな」

「そんな……も、も、申し訳ございませんっ! 知らなかったとはいえ、数々のご無礼を!」


 手のひらを返したように、深く頭を下げノーティスに謝るバルガス。

 スマート・ミレニアムでは、貴族よりも王宮魔道士の方が遥かに位が高く、勇者はその中でも最高峰。

 貴族よりも遥かに強い権力を持つからだ。


 なので、バルガスは大量の冷や汗をだくだくと流しながら謝るが、ノーティスの表情は何も変わらない。

 バルガスを哀れむ瞳で見つめたままだ。


「……バルガス」

「は、はいっ!」


 つい先程までとは打って変わり体を硬直させながら声を震わせるバルガスを、ノーティスは静かな怒りと共にジッと見据えた。


「謝る相手が違うんじゃないか」

「えっ? そ、それはどういう……」

「ハァッ、まだ分からないのか。お前が謝るべきは俺じゃなく、メイとメイの父親。そして、お前のせいで血を流したロバート達だろ」

「うっ! い、いやしかしそれは……」


 バルガスが躊躇った瞬間、ノーティスはチラッとルミに目配せをした。

 そして再びバルガスを見据えると、バルガスはノーティスに向かい汗だくで訴えてくる。


「ノ、ノーティス様っ! 私は悪くないのです。あの小娘が父親と一緒に盗みを働き、それを戒めた私を愚弄してきたのです! 確かにやり過ぎた所はありますが、元々は奴ら親子が原因でして……」


 バルガスは狂ったような出まかせを言うと、騎士達をギロッと睨みつけた。


「そうだよな! お前ら!」


 けれど、騎士達は押し黙ったままだ。

 騎士達も耐えきれなくなったのだ。バラガスのあまりにも腐りきった精神に。


「お前ら、なんで黙ってんだよ?! おいっ!!」


 慌ててふためき怒鳴るバルガスに、ノーティスは静かに告げる。


「バルガス、これが答えだ。貴族の息子だか何だかしらないけど、お前はやりすぎた」

「くっ……ううっ!」

「それにバルガス。衛生兵以上は有事の際、クリスタルログの作動が必須なのも知らないのか?」


 バルガスはその瞬間ハッ! と、した表情を浮かべ、汗だくの顔を青ざめさせた。

 完全に血の気が引いていく。


「あっ……ああっ!」


 バルガスは悟ったのだ。

 ノーティスがロバートから、クリスタルログで全て見せてもらった事を。


「うっ……あっ……ぐうっ!」


 凄まじい恐怖と遅すぎる後悔に、全身をガタガタ震わせているバルガス。


 ノーティスは、そんなバルガスの右肩にポンと左手を乗せた。

 そして、耳元で囁く。

 アルカナートを彷彿させる、ニヤリとした不敵な笑みを浮かべて。


「この、無礼者が……!」

驕れる者に鉄槌を! ただ、真のざまぁは、まだこれから……

次話はバルガスに真の罰が下ります。

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