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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第3章 白輝の勇者エデン・ノーティス
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cys:46 バルガスへの真罰

「あっ……あっ……あぁっ!」


 顔を悲愴にグニャっと歪め、その場にドシャっと跪いたバルガス。

 今まで威張りちらしていたオーラは完全に消え失せている。

 ノーティスはそんなバルガスに踵を返しロバートの側に行くと、力強い笑みを向けた。


「ありがとうロバート。キミのお陰だ」

「何言ってんだよノーティス。全部アンタのお陰だぜ」


 ロバートが嬉しそうに軽く頭を掻くと、ノーティスはその場の皆に大きな声で告げる。


「皆さん、彼らの協力のお陰で何とか街を守れました! ただ、一番はフェクターを発生させない事です。なので皆さん日々色々あると思いますが、極力心穏やかに過ごして下さい」


 街の人達がノーティスの言葉に頭を下げる中、感動で目を丸くするロバート。


「ノーティス……! お前さん、この為にワザと俺達に一斉射撃をさせたのか」


 そんなロバートに、ノーティスは澄んだ瞳を向けた。


「いや、ロバート達の協力が無きゃ俺も技を放てなかった。この街を救ったのはロバート達だ」

「ノーティス……!」


 感謝に目尻を下げたロバート。

 ノーティスはそんなロバートに軽く微笑むと、メイの側に行き跪いた。

 そして、ニコッと笑う。


「メイ、よかった」

「うん、ありがとう! ノーティスのお陰だよ♪」

「あぁ。でも俺が戦えたのは、ロバートのおじちゃん達が協力してくれたお陰なんだ。だから、ロバートおじちゃん達に感謝してくれ」

「わかった♪」


 メイはニコッと笑うと、ロバートに駆け寄りバッと抱きついた。


「ロバートおじちゃん、ありがとう♪」

「メイ! ハハッ、よかった。本当によかった……!」


 ロバートは嬉し涙を滲ませながらメイを抱きしめ、同時に誓う。


───もう、二度とあんな悲しい抱きしめ方をしない為にも、今日から再度猛特訓だぜ。ノーティス。本当に、本当にありがとうな……!


 けれどロバートは、次の瞬間驚愕して目をカッ! と、見開いた。


「ノーティスよけろっ!」

「えっ?」


 ノーティスがその叫びにハッとして振り向いた瞬間、瞳に飛び込んできた。

 短剣を突き立ててくる、バルガスの姿が。


「死ねーーーーっ!!」


 ザシュッ! と、いう音と共に、短剣から血がポトリポトリと流れ落ちる。


「ノーティス!」

「ノーティス様っ!」


 顔を青ざめ叫びを上げた、ロバートとルミ。

 だがノーティスは、バルガスを哀しく見つめたまま静かに告げる。


「もうよせ、バルガス」


 けれど、バルガスは顔を歪ませノーティスを憎悪に満ちた瞳で睨みながら、ググッと力を込めている。

 ノーティスの左手に掴まれた短剣に。


「……黙れっ! お前さえ……お前いなければ、後はどうにでもなるんだ。まだ完全に勇者になってない、お前を消せば!」


 バルガスはそう言い放ち、憎悪と狂気に満ちた眼差しで短剣に力を込める。

 そんなバルガスを、真摯な瞳で受け止めるノーティス。


「バルガス……まだ分からないのか。必要なのは肩書じゃない。人を守る気持ちと力なんだ!」

「うーーーうるさいっ! 黙れ黙れ黙れっ! 俺様は貴族なんだ! 他の奴らとは違うんだ!!」


 必死の形相で睨みつけているバルガスだが、その時バルガスの腕に着けているマジックポータルが振動した。


「くそっ、こんな時に一体誰だ?!」


 バルガスが憤りながらマジックポータルの画面を見ると、そこにはバルガスの父親の名前が。


「お、お父様?!」


 バルガスは目を見開いて応答ボダンを押した。

 その瞬間、父親の罵声がバルガスの耳を貫く。


「バルガスっ! キサマ、何て事をしてくれたんだ!!」

「えっ……! ど、どういう事ですかお父様」


 顔が狂気から恐怖に変わりひきつる中、バルガスの父親はさらに怒鳴りつけてゆく。


「キサマ、市民に蛮行を働きフェクターを発生させた挙句、レイ様とロウ様達がお認めになった、勇者になる方の就任式まで邪魔しおって!」

「な、なぜそれを?」


 慌てふためくバルガスだが、もう遅い。

 全て見抜かれている。


「レイ様から散々言われたわ! 勇者になる方の執事から、さっき連絡があったと言われてな」


 バルガスはルミをチラッと見て、ギリッと歯を食いしばった。


───あの(あま)……!


 ルミを一瞬睨みつけたが、それどころではない。


「ちなみに、よもやとは思うが、勇者になる方に粗相(そそう)はしていないだろうな?」

「ま、まさか、お父様。そんな事は……」


 バルガスがこの期に及んで言葉を濁すと、ノーティスがその横からサラッと言ってくる。


「本日勇者になるエデン・ノーティスです。今、バルガスさんに刺されそうになって、左手で短剣を掴んでいる所です」


 それを聞かされたバルガスの父親は、マジックポータルの向こうで愕然した。

 ノーティスから告げられたあまりの内容に、全身からブワッと冷や汗が吹き出す。

 

「な、なんですと?! た、た、大変申し訳ございません!」

「まあ、僕はまだマシなんですけど、バルガスさんは罪もない一市民を斬りつけましたので、その方への賠償もお願いします」

「き、斬りつけた? 罪も無い一市民を?!」

「はい。目撃者は街中の人と、証拠は衛生兵のクリスタルログに残ってます」

「……な、なんと……」


 あまりにもムチャクチャ過ぎて言葉を失うバルガスの父親に、ノーティスはさらに告げる。

 平然とした顔をしたままで。


「これがバレたら大問題ですけど、もしこれを隠蔽しようとしたら、お家取り潰しは避けられないでしょうね」

「あっ、あぁ……そう、ですね……」


 そこからしばらく沈黙が流れた後、先に口を開いたのはノーティスだ。


「まあ、そこはアナタにお任せします。ちゃんとご子息様の犯罪を認め謝罪した上でご子息様を切るか、それとも隠蔽ようとしてバレて、お家取り潰しになるかは」

「うぅっ……!」


 嘆きを零す父親の気持ちが、魔力ポータルの向こうから痛いほど伝わってくる。

 なので、ノーティスはそんな父親に余り言いたくは無かった。

 声と話し方から、彼の人格が伝わってきたから。

 けれど、皆の為に敢えて心を据える。


「……ちなみに申し訳ないですけど、自分もみんなも素直に証言しますよ。さぁ、どちらを選びますか?」


 ノーティスがそう尋ねると、バルガスの父親はスッ表情を落としバルガスに告げる。

 バルガスにとっての処刑宣告を。

 

「バルガス。お前は今日で貴族の身分と財産を剥奪し、我が家から追放処分とする」

「そ、そんな! お父様っ!」

「馴れ馴れしく呼ぶな! お前みたいな奴は、もう……息子ではない!」


 バルガスの父親はそう告げると、マジックポータルの向こうでノーティスに深々と頭を下げた。


「大変申し訳ございません。この事の公表と皆様への賠償はこれからさせて頂きますが、宜しいでしょうか?」


 そう言われたノーティスは、みんなにこれでいいかと問うと満場一致で賛成だった。


「大丈夫です。後、賠償額もかなり大きくなりそうなので、王様には取り潰さないよう自分から伝えておきます」

「おおっ! な、なんと! かたじけない……!」

「いいんです。皆への賠償と、バルガスさんの事だけちゃんとして頂ければ」


 ノーティスはそこまで言った時、ピンと閃いた。


「あっ、ちなみにお父さん、こういうのどうでしょう?」

「なんでしょうか?」

「バルガスさんの事、追放した後は騎士団に預けてほしいんです」

「騎士団に?」

「はい。もちろん、身分と財産は没収しての事なので一兵士からですが。それで、騎士団のみんなからちゃんとした人間になったと認められたら、戻してあげてもいいと思うんで」

「それはいいですな! 素晴らしい!」


 明るい声で賛同したバルガスの父親に、ノーティスは少しキツめの口調で言う。

 締める所は、ちゃんとしとかないとダメから。


「その代わり、バルガスさんがそこから逃げる事は許さないで下さい。更生するまで何年でも、何十年でもです」

「分かりました。本日からそう致します」


 その会話を聞いているバルガスは、あまりの恐ろしさにヒイッ! と、悲鳴を上げた。

 バルガスにとって、こんなの考えただけで気が狂いそうになる事だから。


 けど、そんなバルガスとは真逆に、騎士団の皆はニヤニヤしながら見つめている。


「バルガ~~~ス、入団おめでとう。歓迎するぜーーーー♪」

「ハハッ、よかったなバルガス。正式に認めてもらえて♪」

「まあこれから何年か、もしくは何十年の付き合いになるからな……みっちり仕込んでやるよ!!」


 騎士達からそんな言葉と眼差しを向けられ、バルガスの心は絶望と共にパリンッと割れた。


「うあ……あっ……イヤだ……イヤだ……イヤだーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 バルガスは再びその場にへたり込んで絶望に嗚咽を漏らすが、同情の余地はない。

 これから更生するまで、死ぬ以外には逃げる事の出来ない罰を受けなければいけないのだ。

 それこそがバルガスへの真罰……!


 それを見て全て収まったと感じたノーティスは、スッとルミを見つめた。


「ルミ、さすがよく分かったな。さっきのアレ」

「とーぜんです! 私はノーティス様の執事ですから♪ それに、救護班等も要請済です」

「そっか。ほんっっと、頼りになるなルミ。ありがとう!」


 ノーティスはそう言ってニカッと笑ったが、ハッと思い出し気まずそうな顔に変わった。

 さっきまでとは違い、少年らしい顔に。


「ちなみに、就任式どうする? もう本当に時間無いんだけど……無理かな、やっぱ」

「そんな事はありません。とりあえずゴールドエリアまで行けば何とかなりますので、もう行きましょう」

「分かった!」


 ノーティスがそう言って車に乗ろうとすると、メイとロバートが声をかけてきた。


「ノーティス、ありがとう♪」

「ありがとうな、ノーティス……さん」

「ロバート、さんなんかつけるなって」

「いや、今から勇者様だろ? だからなんかよ……」


 ロバートはそう言ってガラにも無くドモってしまった。

 元々豪快な性格ではあるのだが、根は真面目で律儀な所もあるからだ。


 ノーティスはそんなロバートに微笑む。


「俺らは一緒に戦った戦友だろ。だからまた会おう、ロバート」

「あぁ、またな……ノーティス!」


◆◆◆


 みんなに見送られながらその場を後にしたノーティスに、ルミは運転しながら尋ねる。


「ノーティス様、さっきのは一体何だったんでしょう?」

「さっきの?」

「はい。先程、メイという子の父親が呟いてた件です」


 ルミからそう尋ねられたノーティスは、前を見ながら思い返していた。

 あの場から去る直前に、メイの父親は確かに呟いていたからだ。


───確かに何だったんだろう? 彼は仰向けになりながら、空に何かが飛んでるって言ってたけど、俺もロバートも何も見えなかった……クリスタルが破壊された事による幻覚? いや、それとも……


「ノーティス様?」

「あっ、あぁ。多分、ただの幻覚だろ」

「幻覚、ですか……」

「メイの父親以外、誰も何も見えなかったし……」


 そう答えるノーティスの横顔をチラッと見たルミは、ノーティスが、何か別の事を考えているような気がした。

 ルミ自身上手くは言えないが、何となくだ。


 けれど、今はそれ以上詮索しなかった。

 必要があれば、きっとノーティスは言ってくれると信じてるから。


「じゃあノーティス様、飛ばしますよ♪」


 ルミはそう言ってほほ笑むと、アクセルをより強くギュッと踏んだ。

ルミの微笑みがノーティスを支える。

次話は遂にノーティスが就任式に。

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[気になる点] 異形になったものは戻せないからの浄化は探せばあるが、それに対する不穏は「第3者のもの」じゃなければ不気味だな
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