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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第2章 波乱のギルド検定試験
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cys:34 王宮魔導戦士『アンディーノ・ジーク』

 時は少しだけ遡り、ノーティス達がアンリと対決する少し前……



 ノーティスと戦ったレイとエミリオの前に一人の大男が現れ、二人にニヤリと笑みを向けていた。


 大きくガッシリと体躯に重装備を纏った、ショートウルフの男だ。

 精悍な鋭い目つきからは、好戦的なオーラが溢れ出ている。

 さらに背中に引っ提げているのは、大岩を大地ごと難なく叩き切る『戦斧・バハムート』だ。


「よぉレイ♪ それに、シスコンのエミリオじゃねぇか」

「ジーク、王宮魔導戦士のアナタがなぜここに? それに、突然来るなんて美しくないわね」


 レイがツンとした表情でジークを見上げる側で、エミリオはイラっとした顔でジークを睨み上げた。


「なんだよジーク、お前も姉さんを狙ってるのか?」

「ん? いけねぇかい♪」

「帰れ! ボクの姉さんに気安く話しかけるな」


 顔をしかめるエミリオに、ジークはニヤリと笑う。


「悪ぃけど、そういう訳にもいかねぇのさ。今日はちょっくらレイに話があるからよ」


 ジークはそう言ってレイにグイッと身を乗り出した。


「聞いたぜレイ。エデン・ノーティスっていう駆け出しの小僧が、お前さんを倒したんだってな」

「あらジーク、お耳が早いのね」

「あぁ、さっきちっとばかしな。全くの無名剣士がSランクの王宮魔導士のお前さんと、互角以上の勝負をするたぁ驚きだぜ」


 これは凄い事であると同時に、普通に見ればレイにとっては屈辱的な事だ。

 けれど、レイは動じない。

 確かに悔しさが無いと言えば嘘になるが、あの戦いでそれ以上に大切なモノを得たから。


 むしろ、ジークが何を言いたいのかの方が気になる。


「で、何の用事で来たの? もしかして、この子の言う通り、私にデートの申し込みでもしに来たのかしら。フフッ♪」

「まぁ、そーしたいのも山々なんだが、それはお前さんに勝つよりも難しいだろ」

「あら、随分と察しがいいじゃない♪」


 軽やかにそう告げたレイの瞳を、ジークは、ん? と、思いジッと見つめた。


「なによ?」

「いや……まぁ今日は別の用事で来たんだけどよ、今のお前さん見てると、前よりも本気でデートに誘いたくなっちまうな」


 付き合いの長いジークは、レイの瞳の色が変わった事に気付いたのだ。

 以前と同じくプライドの高い光は変わっていないが、それに加えて前とは別の美しさが宿っているのを感じ取ったから。


「そう♪ 光栄だわジーク。でも知ってるでしょ。いい女は常に進化するの♪」

「ハハッ、違ぇねぇ。ただレイ。お前さん、ノーティスって奴を、実技試験無しで合格にさせようとか考えてねぇか?」


 ジークは今までと違い、真剣な眼差しを向けてレイに問いかけた。

 これが今日の本題なのが伝わってくる。


「あらジーク、アナタ本当に今日は察しがいいのね。少し見直したわ♪」

「チッ、やっぱりか……!」


 ジークは片手で頭を抱え軽くうつむいた。

 そしてサッと顔を上げ、レイに懇願するような顔を向ける。


「レイ、それは勘弁してくれ!」

「なんで? あの子は……ノーティスは筆記試験も満点で、攻撃力測定試験では、ドラゴンの皮膚と同じ硬度でコーティングされた測定機を、鋼鉄製の円柱ごと破壊して、さらに、防御力測定では私を倒して合格したのよ!」


 キツい眼差しで答えてきたレイに、ジークは少し顔をしかめた。

 確かにレイが言った事は間違っていないから。


「だからもう、実技試験なんて必要ねぇって言いたいんだろ」

「そうよ。あの子は一刻でも早く、私達の力になってもらうべき存在なの! だから今からちょうど、実技試験の免除をギルドに提出しに行こうと思ってた所よ」


 ノーティスの事を誇らしげに話してきたその姿に、ジークはノーティスの実力が本物である事をヒシヒシと感じた。

 でもだからこそ、ジークにはどうしても引き下がれない理由があるのだ。


「レイ。確かにお前さんの言う事は分かるし、お前さんがギルドに申請すれば一発で通るだろうよ」

「当然でしょ♪ それの何がいけないの?」

「いや……」


 一瞬口ごもったジークを、レイは両手に腰を当て強く見据える。


「ジーク、アナタだって分かっているハズよ。今、あの人が……私達の師、アルカナートがいなくなってから、トゥーラ・レヴォルトにジワジワと領土を奪われてるのを!」


 レイにそうキツく言われたジークは、悔しそうに顔をしかめ軽くうつむく。

 キツく言われたからではない。

 実際その通りだからだ。


「……分かってらぁ、そんな事はよ。確かに先生がいなくなってから、俺達だけで何とか踏ん張っちゃいるけど、今のAランク勇者じゃ俺達と肩を並べて戦うのは無理だしな」


 ジークがそう嘆くと、レイも残念そうに瞳を軽く伏せる。


「そうよ……この前のあの子も、半年前の戦いであんな事に……」

「アイツはいいヤツだったけど、荷が重すぎたぜ……」


 レイもジークも戦場で散ってしまった彼を思い出し、瞳に悲しみを湛えた。


「えぇ……彼らトゥーラ・レヴォルトは、五英傑の作りった魔力クリスタルの救いを拒んだ蛮族のクセに、何か不思議な力を持っているから」


 レイがそう零すと、隣で話を聞いていたエミリオは目を丸くして声を上げる。


「えっ? アイツら魔力クリスタルを埋め込んでいないのに、そんなに強いの?!」

「えぇ、そうよエミリオ。きっとアレは悪魔の力」

「あ、悪魔の力?」


 ギョッとした顔を向けたエミリオに、レイは凛とした顔を向けた。

 いずれ、エミリオも彼らと戦う事になるからだ。

 Aランク勇者を一瞬で葬り去った、あの強敵達と。


「そう。あの国は悪魔に支配されてるの。百年前に突如現れた『アーロス』にね。そして、幾度となくこのスマート・ミレニアムに侵攻を繰り返してきてるわ。私達の神聖樹『ユグドラシル』を奪おうとして……!」


 レイはエミリオにそう答えると、再びジークをキッと睨んだ。


「ジーク、だから一刻でも早くあの子が必要なの!」

「分ーーかってる。だがなレイ、このまま実技試験を免除されると困るんだよ」

「なんでよ!」


 レイが少し身を乗り出すとジークは一瞬身体を引いたが、すぐにグイッと前に乗り出した。

 譲れない想いがあるから。


「……戦えなくなっちまうだろ! 仲間になったらよ!」


 ジークの大きな声が周囲に響くと、レイは呆れたような顔をしながらハァッとため息を吐き、ジークをキツく睨んだ。


「ジーク。そんなの、仲間になってから稽古の時にすればいいでしょ!」

「いや、それじゃダメなんだよ! 俺は本気のアイツと戦いてぇんだ。戦士としての血が騒ぐんだよ!」


 拳を握りしめたままそう叫んだジークに、レイは怒りの眼差しで返す。

 ジークも退けない想いがあるが、レイもそれは同じだ。


「アナタ、そもそも何を言ってるの? もしそれで万が一あの子に重傷を負わせたら、どう責任取るつもりなのよ!」


 そう言って怒鳴られたジークは、不満気な顔でジトッと見つめる。

 レイの言う事が正しいのは分かるが、ここで引き下がる訳にはいかないし、何よりジークにも言い分があるからだ。


「レイ、そりゃそうだけど……お前さんは全力でアイツと戦ったんだろ?」

「そ、それは、まだあの子の力を知らなかったから……」


 少し分が悪そうに視線を斜め下に逸らしたレイ。

 痛い所を突かれて、返す言葉が無い。


 そしてジークは、この瞬間を逃さず強く告げる。

 ここを逃しちゃダメだと思ったからだ。


「知らなかったとしてもレイ、お前さんも試験以上の気持と力で、アイツと戦ったのには変わりねぇよな!」

「くっ……! 言うわね」


 痛い所を突かれ少し顔をしかめたレイを、ジークはニヤリと見下ろした。


「俺とお前さんは職種は違っても、同じ王国直属の王宮魔導Sランクだ。お前さんだけよくて俺はダメだってのは、美しくねぇんじゃないか?」

「うっ……ジーク、アナタ本当に今日はどうしたのよ。凄いじゃない。なんかムカつくわ……!」


 レイは悔しそうにジークを睨みつけると、プイっと顔を逸らした。

 こう言われた以上、レイからは何も言えない。


「フンッ、好きにしたらいいじゃない。行くわよエミリオ」

「はいっ、お姉様」


 エミリオはサッとレイの側に寄ると、ジークの事をイラっとした目で睨んだ。


「ジーク、今のは姉様の優しさだからな。勘違いするなよ」

「へぃへぃ、わーかったよ」

「……フンッ!」


 エミリオがしかめっ面を向ける中、レイは背中のマントを(なび)かせたままジークに告げる。


「ジーク。あの子と……ノーティスと戦うなら、アルカナートと戦うつもりで挑む事ね。でなければ、アナタも無事ではすまないから……」


 するとジークは、マジか?! と、いう顔で目を大きく見開き、歓喜と共に全身を震わせた。

 ジークは根っからの戦士。

 相手が強ければ強い程、その闘志は燃え上がるタイプだから。


「くぅ~~~~~っ、そいつは腕が鳴るぜ!」


 背中でジークの悦びの声を感じたレイは、颯爽と歩きながら心の中でジークに宣言する。


───ジーク。アナタには悪いけど、ノーティスは私が守るわ。彼は、あの人が教えてくれた、私の運命の人なんだから……!

ジークは根っからの戦士であるが故に……

次話はレイがノーティスに迫ります。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 決闘の流れが大きすぎて最初の流れが頭から飛んでた ただ試験と称して本気になる人や復讐に使う流れはよくあるから問題はないか(え...)
[一言] いろんな意味で血気盛んなやつが多いなw というよりこの復讐劇?は「防御試験」を兼ねてたのかw
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