表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第2章 波乱のギルド検定試験
PR
35/251

cys:35 レイの願い

「ねぇ、ノーティスはどんな人が好きなの?」

「えっ?」


 ノーティスは、ルミとエレナの三人でギルド会場内の展示場やお土産コーナーを巡った後、ギルド内のカフェ『カエルム』でくつろいでいた。

 ノーティスとルミが並んで座り、テーブルの向いでエレナがノーティスを見つめて微笑んでいる。


 そんな中、突然あまり慣れていない質問をされたノーティスは少し戸惑ってしまったのだ。


「いや、どんな人って言われても……」

「ほら、ドキッとした事とか無いの?」


───ノーティス様……♪


 隣でドキドキしながら緊張しているルミをよそに、ノーティスの脳裏にはフッとセイラの姿が浮かぶ。


 セイラは幼くして孤児になったノーティスを、アルカナートと一緒に育ててくれた明るく優しい女だ。

 辛い時に抱きしめてくれたり、いつもノーティスを優しく支えてくれた大切な(ひと)


 また、セイラは明るく可愛い上に人との距離感が近いのもあるせいで、実際ドキッとさせられた事は何度もある。

 思春期の男の子には刺激が強い場面とかも、しょっちゅうだった。


───んーーー、セイラの事は好きか嫌いかで言われたら大好きだけど、そういうモノなのかな……


 そもそも女心には壊滅的に弱いノーティスは、それが恋心なのか親愛なのかの区別も出来ていない。

 まあ、今まで恋をしてるような暇が、時間的にも精神的にも無かったのが大きい原因の一つなのだが。


───あぁ……ホント、そこら辺は分からない……


 そんなノーティスだが、反面気持ちは純粋だ。

 なので、ありのままに自分の心を振り返ってみた。


───好きっていう気持ちがどういうモノかハッキリとは分からないけど、自分にとって大切な人の事だよな。でもそうなるとやっぱりセイラもそうだし、師匠だってそうなる。それにルミも……ん?


 ルミの事を考えた時に、何か今まで感じた事の無い気持ちを感じたノーティス。


「ん? あれっ?」


 思わず声を漏らしたノーティスを、エレナが不思議そうな顔で見つめる。


「ノーティス、どうしたの?」

「あっ……いや、なんでもない」


───なんだこれ?


 ノーティスが心でそう思いながらルミをチラッと見ると、ルミは頬を赤くして慌てた。

 元々ドキドキしながら話を聞いてた上に、ノーティスの気持ちを何となく感じ取ったから。


「な、なんですかノーティス様」

「いや、別に何でもないけど……」


 すると、それを見たエレナがちょっと不満気に可愛く口を尖らした。

 こういう事にはことさら敏感なのだ。


「あーーーなんか二人とも怪しいーー」

「エ、エレナ。もうっ何言ってるのよ♪」


 顔を火照らせているルミと、それをジトーっとした目で見つめてるエレナ。


「だって、何か二人ともさーーー。ねぇ、やっぱりお姉ちゃんてノーティスと付き合ってるんでしょ?」

「そ、そ、そんな訳ないでしょ!」


 ルミが顔を赤くして声を上げた時だった。

 サングラスをかけた超絶スタイルのいい女が、ルミの斜め後ろからそっと顔を覗き込んできたのだ。

 そしてすぐにサングラスを軽くスッと下し、艶のある瞳でルミを見つめ微笑む。


「フフッ♪ じゃあ、この人少し借りてもいいわよね」

「レ、レイ様! なぜ……」


 思わず席をガタっと立ち上がろうとしたルミに、レイは、シッ! のポーズを取った。


(静かにっ。せっかくお忍びの恰好で来てるんだから♪)

(す、す、すいません)


 顔を赤くしてサッとうつむいたルミ。

 その真向いで、エレナは瞳をキラキラさせ震えながらレイを見つめている。


(あわわわっ♪ 本物のレイ様だーーー物凄く綺麗!!)


 レイはそんなエレナをチラッと見ると、ニコッと微笑んだ。


(フフッ♪ アナタも磨けばより綺麗になれるわよ)

「は、はいっ!」


 緊張しながら声を上げたエレナ。

 レイはその美貌故に、女の子からのファンも多く、エレナもそのファンの内の一人だ。

 なので、顔を赤く火照らせてレイをポーッと見つめている。


 そんなエレナをよそに、レイはノーティス見下ろした。


「ノーティス。ちょっといいかしら」

「レイ、何の用だ?」


 座ったままチラッと流し目を向けたノーティスに、レイはサッと答える。


「実技試験の件で話があるの」

「一ヵ月後の実技試験の件か」

「そうよ。だから今からちょっと付き合いなさい」

「付き合うって、どこへだ?」

「ギルドの本部よ」


 ノーティスはレイが何をしたいのか分からなかったが、レイの瞳をジッと見つめると席からガタッと立ち上がり、取りあえず本部に向かう事にした。

 レイの瞳が至急の件だと告げていたからだ。


「ルミ、エレナ。すまないが、ちょっとここで待っててくれ」

「かしこまりました。ノーティス様♪」

「りょーかいだよ♪ ノーティス」

「ありがとな、二人とも」


 ノーティスはそう告げレイと一緒に店を出ると、横に並んで話をしながらギルド本部へ向かい始めた。

 夕日の明かりが二人を照らしている。


「もう日が暮れてきたな」

「そうね。今日もそろそろ終わりね」

「今日は朝から色んな事が立て続けにあって、まるでここで何日も過ごした気分だ」

「いい事じゃない♪ それだけ、濃密で美しい時を過ごしてる証だもの」

「レイ、キミのお陰なのは大きいけどな」

「フフッ♪ それはお互い様よ」


 レイはそう言って微笑むと、ピタッと足を止めた。


「レイ、どうした」

「ノーティス、話があるの。実はね……」


 レイは艶っぽい瞳を切なく光らせ、話を始めた。


◆◆◆


 レイから実技試験免除の件とその理由を聞いたノーティスは、少し唸り考えていた。


「レイ、事情は分かった。それに、そこまで俺を買ってくれてるのも光栄だ。ただ、そのジークって奴は本当に納得するのか?」


 ノーティスからそう尋かれたレイは、少しダルそうに視線を斜めに落とした。


「フゥッ……しないでしょうね。彼の性格上」

「じゃあ……」

「でも、今話した様にもうあまり時間がないの。彼の気持ちも分かるけど、私はこの国を守る事を優先するわ」

「それがレイ、キミの選んだ美しさか」

「ええ、そうよ」


 レイがそう答えると、二人は互いにジッと見つめ合った。

 そしてノーティスは、意を決してレイに言う。


「レイ、だったら今からでも会わせてくれ。そのジークって奴に」

「ノーティス!」

「キミの判断は間違っていない。けど同じ男として、ジークの気持ちにも応えてあげたいんだ」


 そう告げたノーティスの両腕を、レイはガシッと掴んで強い眼差しを向けた。


「ダメよノーティス! 私が言うのは違うかもしれないけど……アナタに無駄な傷を負って欲しくないの!」

「レイ……」


 プライドの高いレイから半ば懇願するような瞳を向けられたノーティスは、胸がキュッと締め付けられるような感覚に陥った。


 そんなノーティスの事を、レイはより強く見つめる。


「ノーティス。もちろんこの国の為でもあるけど、私はアナタを……」


 レイがそこまで言った時、ノーティスの腕に付けている『マジックポータル』が振動した。

 魔力を使って動く通信機器だ。

 そして、表示画面にはエレナの名前が。


「レイ、ちょっとゴメン」


 レイに一言断ってからエレナからの着信に出ると、エレナの涙声が聞こえてきた。


「うっ……うぅっ……ノーティス、ごめん。お姉ちゃんが……」

「エレナ、大丈夫か? 何があった?!」


 エレナの声に只ならぬ事を感じたノーティス。

 すると、エレナはその予感通りの事をノーティスに告げてくる。


「お姉ちゃんが……お姉ちゃんが連れて行かれちゃったの!」

「ルミが? なんでだ?! 誰に!!」


 思わず大きな声を出してしまったノーティスに、エレナは涙声のまま話を続ける。


「急に大きな男が二人来て、ジーク様が呼んでるからって……お姉ちゃんは抵抗したんだけど、そのまま連れて行かれちゃって……うぅっ、ごめんなさいノーティス」


 ノーティスはさっき大声を出してしまった事を反省し、不安な気持ちを押さえながら落ち着いた声でエレナに告げる。

 恐い思いをしたのはエレナだからだ。


「エレナ、キミは何も悪くない。だから、そこで待っててくれ。今はまだ、さっきの店だよな?」

「うん……」

「すぐに行く。大丈夫だから」


 ノーティスはマジックポータルを閉じると、レイにサッと振り向いた。


「レイ、ルミが攫われた! 恐らくそのジークって男の部下達に!」

「なんですって?」

「だからレイ、すまない。俺はルミを助ける為にそいつと戦う!」

「……分かったわ。でも、私も一緒に行くから」


 ノーティスはレイにコクンと頷くと、二人で全速力でお店に駆け戻った。

 そして、すっかりしょげ返ってしまっているエレナの側に行くと、ノーティスは少し息を切らしながらも、エレナに優しく微笑む。


「エレナ、恐かったよな。大丈夫か?」


 するとエレナは涙で濡れた瞳をノーティスに向け、コクンと頷いた。

 いつもと違い、飛びついてきたりはしない。

 それがエレナの辛さを物語っている。


 そんなエレナは涙を零したままノーティスを見上げ、一枚の紙きれをスッと渡してきた。


「ノーティス、これ……」

「ん?……これは!」


 エレナから差し出されたメモを読んで、ノーティスは目を大きく見開いた。

 そこにはルミが拐われた事と、返してほしければ指定の場所まで来るように書かれていたからだ。

 もちろん時間も。


 なのでノーティスはサッと時間を確認すると、レイの方へさっと振り向き、エレナから渡されたメモを見せる。


「レイ、この場所分かるか?」

「ええ、分かるわ。このすぐ近くよ」

「ありがとうレイ。じゃあ急ごう!」


 ノーティスが、レイと一緒にその場所に向かおうとした時だった。


「私も行く!」


 と、エレナが大きな声を上げた。


「エレナ、無理するな。ここで休んでた方がいい」

「イヤだよ。だって、お姉ちゃんが拐われたのに、私だけここでジッとなんてしてられないもん!」

「エレナ……」


 エレナを静かに見つめるノーティスに、レイはそっと声をかける。


「いいじゃない♪ ノーティス」

「でもレイ、エレナを危険な場所に連れて行くのは……」


 不安そうなノーティスに、レイは軽く笑みを浮べた。


「だからよ。女は泣いてるだけじゃ磨かれないの♪」


 そう言い切るレイからは、絶対的な自信が溢れている。

 今の言葉は、レイの信念であり生き方なのだ。

 

 それを感じたノーティスは、エレナをスッと見つめた。


「分かったエレナ。ついてきてもいい。その代わり、俺とレイの傍から離れるなよ」

「うんっ!」


 エレナが涙を拭きながらそう答え席から立ち上がると、ノーティスはレイとエレナを連れて店から出て、ルミが運転してきてくれた車の場所まで走った。


 まだ免許の無いノーティスは、レイに車の運転を頼もうと思ったから。

 けれど、一瞬ハッとしてそれを止めた。


「エレナ、おんぶするから掴まって」

「えっ?」

「早く」

「う、うん……♪」


 そしてエレナを背中におぶり、レイに告げる。


「レイ、あの闘技場まで一気に走ろう。行けるか?」

「フフッ♪ 当たり前でしょ。体術はアナタ程じゃなくても、私は王宮魔導士よ」

「フッ、さすがだなレイ」


 ノーティスはそう言って微笑むと、闘技場まで全速力で駆け出した。

 敢えて車を使わなかったのは、ルミがいつも運転してくれてる姿が脳裏に蘇ったからだ。

 ハッキリと言葉には出来ないが、ノーティスはその席に別の人を乗せたくなかった。


───うん、よく分からないけど、これでよかったのかな……


 ちょっと切なく謎めいた気持を抱える中、ジークとの戦いが迫っていた。

闘技場は近くても、心は逸る……

次話はノーティスの怒りが振り切れます。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 攫うのが好きな騎士様連中って…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ