cys:27 レイの運命の人
レイの切なく甘い記憶……
スマート・ミレニアム軍の中でも強く美しい王宮魔導士のレイは、子供の頃からその美貌で周りを魅了してきた。
もちろん、男達からは性的な目で見られ、女達からは憧れと同時に嫉妬もされる。
けれど、やはりその分レイの言う事は他の子よりも優先されたし、魔力が元々飛び抜けて優れていたレイは、クラスのカーストの中では常に最上位だった。
それを失いたくないからこそ、自分の美しさにより磨きをかける。
レイが美しさにこだわりそれを力とみなすのも、そんな幼少期と決して無縁ではない。
それにより、レイの美しさは日に日に高まっていった。
『私の美しさに、全ての男達は跪くの♪』
そう思っていたし、実際男はもちろんの事、女もレイの高貴な美貌にひれ伏していた。
ただそんなレイでも、一人だけ思い通りにならなかった男がいる。
かつて自分を誘拐犯から救い出してくれた上に、その後自分を弟子にしてくれたスマート・ミレニアム最強の勇者だ。
その男はレイに言い寄ってこないばかりか、レイが気のある素振りをしてもぶっきらぼうな態度を崩さない。
けれど、その男から溢れ出ている強さと優しさが、自然とレイを包んでいく。
レイはその男に夢中になり、その男を嬉しそうに見つめながら話している。
『ねぇ、もっとこっち向いてよ』
『今、本を読んでんだ。見りゃ分かるだろ』
『う〜〜〜っ、本なんかよりもレイを見て♪』
『無理』
『ねぇっ、なんでっ!』
レイは可愛く甘えた顔で、口を尖らして話を続ける。
『みんなレイに夢中なのに、オカシイよ』
すると、男はメンドクサそうにフゥッと、溜息を吐いた。
『悪いが、ガキには興味がない』
『なによ、レイは子供じゃないわ! もう大人よ。付き合ってくれたっていいじゃない』
『はあ? お前はまだ、見た目も中身もガキだ』
『酷いっ! みんなはレイの事、綺麗とか可愛いって言ってくれるのに……』
レイが悔しさと怒りに涙を滲ませ軽くうつむくと、男は分厚い本をパタンと閉じてレイの方へ静かに振り向き、透き通った艶のある瞳で見つめる。
『レイ、真の美しさは見えるモノじゃない。感じるモノだ』
『感じるモノ? 何よそれ、全然分からないーーっ!』
『フッ。もしいつか、それをお前に分からせるヤツが現れたなら……レイ、それがお前の運命の相手だ』
◆◆◆
切なく甘い記憶を振り返ったレイは、ノーティスの事を睨みながら苛立ち身体を震わせた。
「なんで……なんでアナタなんかが同じ事を言うの?! 私の愛するあの人と同じ事を!」
「あの人……?」
「許さない……! もういいわ。絶望に染まって存在ごと消えなさい!」
レイはノーティスをギリッ! と、睨みつけると、手の平の上の不死鳥をより輝かせた。
その輝きがレイの美貌と交わり、神々しい輝きを周囲に溢れさせていく。
また、光だけではなく、凄まじいエネルギーの波が周りを震わす。
けれど、ノーティスは臆する事無くそれを見据えたまま、心の中でアルカナートに誓う。
───師匠、今こそアナタから授けてもらった力を示します!
「光のクリスタルの名の元に、輝け! 俺のクリスタルよ!!」
その瞬間、ノーティスのクリスタルから白く鮮やかな『白輝』の光が眩く輝き、その煌めきがノーティスの全身を包み込んだ。
その強く大きな輝きに照らされ、美しい目を大きく開いたレイ。
「ノーティス、アナタの魔力クリスタルは無色のハズじゃ……!」
「……師匠から教えてもらったんだ。勇者の光を発揮させる為には、他の色よりも心の力が必要だと」
「なんですって?!」
「だから、一見無色の魔力クリスタルにしか見えないし、心を輝かせなきゃ無色のままなんだ」
「そんな……」
ノーティスから無色のクリスタルの秘密を聞かされたレイだが、どうしても納得出来ない事があった。
「でも、どうやって……アナタは無色の魔力クリスタルのせいで、これまで散々苦しめられてきたハズよ。なのになぜ……なぜ心が闇に染まらなかったの!」
大きく叫んだレイに、ノーティスは必殺剣の構えのまま凛とした瞳で答える。
「……レイ、言っただろ。俺の心には大切な人達が宿ってるって」
「くっ……何よ偉そうに……そんな事認めないわ! これで終わりよ! 『ディケオ・フレアニクス』!!」
ノーティスに向かい、巨大なエネルギーで作られた不死鳥が襲いかかる。
けれどノーティスはその不死鳥を真正面から見据え、より白輝の煌めきを輝かせた。
「レイ……だからこそ俺はこの技でキミに答える。全ての絶望を斬り裂く、数多の流星の斬撃『メテオロン・フォーススラッシュ』!!」
ノーティスが剣を振り抜いた瞬間、まるで流星群のような輝きを放つ数多の光の斬撃が、レイの放った不死鳥に飛び向かっていく。
神々しく輝くレイの不死鳥と、闇を切り裂くようなノーティスの流星。
それはまさに、レイとノーティスの魂その物のようだ。
「ハァァァァッ!」
「オォォォォッ!」
その両者は空中でぶつかると、カッ!! とした眩い閃光が走り辺りを白く激しく照らす。
そして、レイの不死鳥は空中で斬り刻まれ、虚空へバシュッ!!と、激しく消し飛んだ。
それにより起こった凄まじい衝撃波と斬撃が、一気にレイに襲いかかる。
「キャーーーーーーーーーーーーーっ!!」
レイは大きく吹き飛ばされ背中から地面にドシャッ! と、倒れると、悔しそうに顔をしかめながら上半身を起こし跪いた。
傷付いた体に片手を添えたまま。
「くっ……そんな。私の不死鳥が破られるなんて……! しかも今の光と技は、間違いなく私が愛してるあの人の……」
悔しく嘆きを零しながら戸惑うレイに、ノーティスがゆっくりと近づいてくる。
───ううっ、このままじゃ、やられる……
レイが悔しさでその瞳に涙を滲ませた時だった。
試験場のドアがバンッと勢いよく開かれ、そこからレイに駆け寄ってくる男がいた。
それは何と、あのエミリオだ。
エミリオは傷付き跪いているレイの側に駆け寄ると、レイの両方に手を乗せ心から心配している顔で見下ろす。
「姉さん! 大丈夫?!」
「エ、エミリオ……アナタなぜ……」
少し呆然とした顔で問いかけると、エミリオはレイの前に背中を向けてザッ! と立ち、ノーティスに向かい両手を大きく広げた。
「姉さんはボクが守る! ノーティス、お前なんかに姉さんは殺させない!!」
レイを倒したノーティスの力に恐怖しながらも、それよりも遥かに強い気持ちでレイを守る為、エミリオはその身を盾にして立ち塞がる。
すると、エミリオに遅れ、なんとルミも入口から勢いよくタタッと駆け込んできた。
そして息をハアハア切らせて駆け寄ると、ノーティスの事を不安そうに見つめる。
「ノーティス様っ、ご無事ですか! さっきの爆発音が気になってしまって……!」
ルミから心配されるノーティスだが、ノーティスはその瞬間ニヤリと笑った。
「フッ、ルミ。何も心配する事はない。今からこの女にトドメを刺すだけだからな」
「ノ、ノーティス樣……?」
ルミは思わずギョッとして見つめた。
邪悪な笑みを浮かべ、エミリオとレイを見下ろすノーティスの横顔を……
一体ノーティスに何があったのか?
次話はかなりレアな回になります。




