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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第9章 アルカナートの追憶
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cys:205 ナターシャの愛と別れ

「クククッ……アルカナート、ようやく諦めたか」


 シルフィードがニヤリと嗤うと、セイラは怒りと驚きに顔を引きつらせ、アルカナートの両肩をガシッ! と、掴んだ。

 正面から見上げる瞳には、悲しさと怒りが混じる涙が浮かんでいる。


「アルカナート、何言ってるのよっ!!」


 セイラは怒声を上げたが、アルカナートの表情は変わらない。

 もう、全てを悟りきってしまったかのような雰囲気だ。


「どけっ、セイラ」

「どかないわよっ!」

「いいからどけっ!」


 アルカナートはセイラの両手を振り払い、ドンッと横に突き倒した。


「きゃあっ! ア、アルカナート……!」


 倒れたまま涙目で見上げるセイラの事を、アルカナートは敢えて視界に入れず、シルフィードを哀しく見据えている。

 無論、セイラには本当に申し訳ないと思いながらもだ。


───すまないセイラ。けど、俺はお前を巻き添えにはしたくねぇんだ。


 心でそう零したアルカナートを、カミラも切なく見つめている。

 その心に複雑な想いを抱えながら。


───アルカナート、それが貴方の愛の示し方なのね。どこまでも強くて、不器用過ぎなんだから……


 そんな中、シルフィードは剣を片手で頭上に掲げ魔闘気を滾らせた。

 その紫白(しはく)の輝きがアルカナートを照らしてゆく。 


「クククッ……アルカナートよ、やはりいくら(あが)こうが運命(さだめ)は変えられぬ。貴様がどれだけ意志を貫こうがな」

「シルフィード、まだ分かんねぇのか。これは俺の意志だ」

「そうか……ならば、その意志と白輝(びゃっき)の魔力クリスタルを抱いたまま死ぬがいい!!」


 シルフィードの剣に紫白のオーラが立ち昇り、その光とエネルギーが周囲を妖しく照らす。

 その光は、まるでアルカナートの最後を象徴するかのような輝きだ。


「イヤ……イヤだよアルカナートーーーーーーーーー!!!」


 セイラがそう叫んだ時、アルカナートはスッと瞳を閉じた。

 自分の意志を貫く以上、最後にナターシャの事はもちろん、自分を愛してくれてる女の顔を見る事など、決して許されないと思ったからだ。

 

「セイラ、後の事は頼んだぜ。クリザリッドと上手くやれよ」

「イヤだよ! イヤだよアルカナート!!!」


 セイラは必死に叫ぶが、アルカナートはやはり変わらない。

 哀しく瞳を閉じたままだ。


「……ナターシャを許してやってくれ。セイラ、頼んだぞ」


 静かにそう告げた時、アルカナートは思わずハッと目を開いてしまった。

 腕に異変を感じたからだ。

 そして、その瞬間瞳に映った。


 ナターシャがアルカナートの持つ剣を水平にしたまま握り、涙を流して自分を見つめている姿が。


「なっ……」


 その姿に、アルカナートは一瞬理解が追いつかなかった。


「ナターシャ、何を……」


 謎めいた顔でそう零すと、ナターシャは剣の切っ先を自分の胸に当て、ニコッと微笑んだ。


「ありがとう、アルカナート」


 その瞬間、ナターシャはそのまま前に倒れ込むように、剣を自らの胸に突き刺した。

 剣がズズッ……! と、食い込んでいく鈍い感触が、アルカナートの手を通し全身を駆け巡ってゆく。


「なっ?!」


 もちろんこれは、今まで戦いの中では何度も味わってきた感触だ。

 けれど、それまでの物とは、まるで違うように感じてしまう。

 むしろ、何が起こっているのかすら理解できない。

 いや、したくないと言った方が正しい。

 今目の前で起こった出来事を、心が理解するのを拒否しているかのようだ。


───なんだ、一体何が起こっている……


 ナターシャが自らの胸を刺し、ドシャッ! と、後ろに倒れるまでは、数瞬の間の出来事だった。

 けれど、まるでそこまでがスローモーションのように感じ、アルカナートは言葉も出てこない。


 それは、他の皆も同じだった。

 目を大きく見開いたまま固まってしまっている。


 そんな中、ナターシャはアルカナートを見つめながら、微かに微笑んだ。


「……アルカ……ナート……」


 瞳からは涙が下に零れ、口からは血が滲んでいる。


「ナターシャ!!!!!」


 アルカナートはようやく呪縛が解けたかのように、ナターシャに向かいダッ! と、駆け寄り膝をついてガシッ! と、強く抱きしめた。


「なぜ、なぜだ!!!」

「こ、これで……いい、の……貴方が、私を……殺した事に……して、くれれば……貴方は、助かるから……」

「ふざけるな!!!」

「お願いだから……そう、して……貴方は、きっと……これから……多くの人を……救える……から……」

「やめろ!! ダメだ!!!」


 アルカナートが必死に叫ぶ中、ナターシャは最後の力を振り絞り、ニコッと微笑んだ。


「貴方と……過ごせて……よかっ……た……アルカナート……愛してるわ……」


 そこまで告げるとナターシャは瞳を閉じ、顔をガクッと横に倒した。

 瞳から流れる涙と共に。


「ナターシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

ナターシャを失ったアルカナートの慟哭……

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