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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:99 ノーティスの矜持とアネーシャの想い

 黄金の煌めきを纏ったノーティス。

 その姿を、銀色の煌めきと呪符、そして蒼と真紅の瞳で見据えるアネーシャ。


 剣を構える2人からは凄まじい闘気が放たれ、他の誰も近寄る事が出来ない。

 そんな中、2人の一番近くにいるメティアは感じていた。


───なんでだろう……ノーティスが負けるハズなんてない。でも、あのアネーシャって人からは、強さを超えた何かを感じる……


 メティアはその想いを振り払うかのように、頭を左右にブンブン振るとノーティスに向かって叫ぶ。

 勝利への想いを込めて。


「ノーティス! 頑張れーーーーーーーー!」


 その瞬間、ノーティスはカッと目を見開いた。


「いくぞ、アネーシャ!」


 ノーティスがそう叫び飛びかかると同時に、アネーシャも剣を横脇に構えザッ! と飛びかかる。


「喰らいなさい!」


 ガキインッ!!


 凄まじい音と共に衝撃波が辺りに広がり、そのまま鍔迫り合いを始めたノーティスとアネーシャ。


「くっ……」

「うっ……」


 2人はしばらく睨み合った後、バチンッ! と、剣を弾かせ互いに飛び退き間合を取る。

 ノーティスはそこからすかさず、突きの構えを取った。


「この閃光で貫く! 『エッジ・スラッシュ』!!」


 黄金の閃光と化したノーティスは、凄まじい速さでアネーシャに突進していく。

 だがアネーシャはそれをサッと躱し、ノーティスのガラ空きの背中に飛びかかった。


「アァァァァッ! 覚悟!!」

「くっ! そうはさせない! 『ギルティ・カウンター』!!」


 地面を蹴り剣を水平に打上げる対空技で応戦したノーティス。


 ガキインッ!


 アネーシャは剣を防がれ、悔しい顔でノーティスを睨む。


「クッ……もう少しだったのに。けど、私に一度見せた技はもう通用しないわ!」

「……そのようだな」

「それに、もう次はないから。これでアナタを仕留める!」


 アネーシャはそう言い放つと両手で剣を大きく振りかぶり、剣に銀色の闘気を集中させていく。

 そして、呪符からピンク色のエネルギーが立ち昇り構えた剣と交わった時、ノーティスの事をキッ! と睨んだ。


「私は……アナタを絶対に許さない! 狂い咲け! ティターン・二乃太刀『神桜裂華』!!」


 振り下ろした剣から、銀色とピンク色の交叉した無数の斬撃がノーティスに襲いかかる。

 無論ノーティスはそれを迎え撃つが、アネーシャからはただの斬撃ではなく、何か別の想いが伝わってくる。

 それがノーティスの心を締め付けた。


「……くっ! 煌めけ数多の流星よ! 『メテオロン・フォース・スラッシュ』!!」


 ノーティスは苦しみながらも必殺剣を放った。

 しかし、中に舞う花びらを捉えられないように、ノーティスの流星剣は虚しく空を切っていく。


───バカな!


 そう思った時、ノーティスの瞳に一瞬映った。

 舞い散る桜の姿が。


───なんだ、この花は……


 自分の周囲に咲き乱れる狂い桜。

 次の瞬間、それは狂刃と化してノーティスに一斉に襲い掛かる。


「うわァァァァっ!!」


 舞い散る花びらの様な無軌道な数多の斬撃を受け、全身をボロボロに斬り刻まれたノーティスは、ドシャっと片膝を付いて剣を地面に刺し、顔をしかめアネーシャを見上げた。

 体中から、ポタポタと鮮血を零しながら。


「くっ……強い!」


 その姿を側で見て、悲壮な顔をしたメティアは瞳を潤ませた。


「ノーティス!」


 目を潤ませ駆け寄ろうとしたメティア。

 けれどノーティスは、そんなメティアに真摯な眼差しをぶつけた。

 メティアが自分に、回復魔法をかけようとしたからだ。


「来るなメティア!」

「でもノーティス……!」

「ダメだ。ここでキミに助けてもらったら、俺はもう、勇者として戦う事が出来ない」

「ノーティス……そんな……」


 哀しい瞳でノーティスを見つめたまま立ち止まったメティア。

 そんな中、アネーシャはノーティスに近づき、怒りと切なさを交叉させた瞳で見下ろしている。


「ノーティス……終わりよ」

「くっ……今の花は一体……」

「……見えたの?! アナタに」

「あぁ……幻かもしれないけど、一瞬咲き誇る美しい花が……」


 ノーティスがそう答えると、アネーシャは一瞬スッと瞳を閉じた。


───なぜこの男に桜が見えたの……偽りの光の勇者のハズなのに……


 けれど思う。

 愛する自分の祖国トゥーラ・レヴォルトが、スマート・ミレニアムにどれだけ奪われ、蹂躙されてきたのか。

 そして、なぜ今自分がこの国の勇者として戦場に来たのかを。


───そう。私は決して忘れない……あの日の事を!


 アネーシャは心の内を振り返るとバッと目を開き、瞳に冷酷な決意を宿した。

 そしてその瞳でノーティスを見下ろしたまま、両手で剣を大きく振りかぶる。


 ノーティスはその姿を苦しく見上げながら、心の中で思い出していた。

 アルカナートから叱咤された事を……


『ノーティス。もう立てないと思った時に相手が剣を振り降ろしてきたら、どうすればいいか分かるか?』

『えっ、それは逃げるしかないですよね』

『ったく。違うに決まってんだろ。そーゆー時はな……』


「ノーティス、私はアナタを倒し仇を討つ。そして、この国の未来を守るわ! 覚悟っ!!」


 アネーシャが想いを乗せた剣を振り降ろしてきた時、ノーティスは最後の力を振り絞りバンッ! と、大きく飛び上がった。


「アネーシャ、俺はまだ死ねない! けど、逃げる訳にもいかないんだ。今まで戦ってきた人の命と想いを背負ってるから!」

「嘘よ……なぜアナタがそんな事を言うの!」

「俺は……生きる為に攻める事を決して辞めはしない! 雷光のように轟け『シェル・スラッシュ』!!」


 ノーティスは、上空から雷鳴のように轟く必殺剣を繰り出した。

 

 アネーシャは、それを受け止めれないと咄嗟に悟りサッと躱したが、大地に叩きつけられた時に生じた、その凄まじいエネルギーの衝撃波がアネーシャを襲う。


「きゃあァァァっ!!」


 大きく吹き飛ばされたアネーシャ。

 その姿を見ながらノーティスの心の中で、アルカナートが自慢気に言ってきた。


『躱された時? フンッ。生きようとして放った一撃が、ただで終わるわけねーだろ。まったく、このバカ弟子が』


「ハァッ……ハァッ……師匠、ありがとうございます」


 ノーティスがそう零した時、アネーシャはググッと立ち上がった。

 そして、苦しい表情を浮かべながらも、光の宿る凛とした瞳でノーティスを見据える。

 アネーシャを動かしているのは、体力でも気力でもなく、その胸に宿っている切なく儚い想いだ。

 

───私は負けない……負けてたまるか! 私は彼の無念を晴らし、この国の未来を必ず守るの……!

アネーシャの眼光は衰えない……!



次話は、魔力クリスタル闇をノーティスが知ってしまいます。

この物語の根幹を成す部分です。

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