(10) サバイバル生活、やらされます。
ちょっと主人公ばっかりの話です。ご了承くださいm(_ _)m
翌日、いつも通り訓練場に行ったら目と口を布で塞がれて何処かへ連れていかれた。急すぎて訳が分からない。動きが止んだと思えば椅子に座らされ、布越しに周囲が暗くなるのが見えた。
目を覚ませば、そこは森であった。なのに、目の前には紙が落ちている。
『勇者君へ 今日からサバイバル生活をしてもらうわ。魔法を使うような強い魔物は居ないからしっかり生き延びてちょうだい。森の魔物は基本的に食べられるわよ。 シャーロット』
そんな馬鹿な。今日からの訓練これですか? もうちょっと意図とか教えて欲しい所だ。
しかし、嘆いていても仕方ない。自分の周囲を確認する。ただただ森、森、森。耳を澄ませば水の音はする。ふと手を腰に当てて考えようとした時、左腰に何かがあることに気付いた。サバイバルナイフだ。これがあるならまだ生き延びれそうだ。YouTubeは強い。
森のサバイバルは寝床の確保から始めた。地面で寝ていては虫に噛まれて最悪毒にやられる。音を頼りに川を見つける。
「ここの水は綺麗だな……」
拠点はここにしよう。その近くの丈夫そうな細めの木をナイフで切る。これを繰り返す。いいぐらいの本数が集まった。次は蔦だ。木々の固定に長く取る。四本の木を地面にぶっ刺す。途中からはナイフで打ち付ける。柱が立った。一部を削り取って形を整え、床木を乗せれるようにする。次に床木だ。とりあえず同じ太さにして四角くする。ナイフしかないからある程度までしか形成出来ないが十分だ。蔦で固定して完成。柱に乗せる。これで安全な寝床は確保出来た。
周囲をもう一度見回す。何か使えそうな物は無いか、と。川の下流の方を見た時、鉄鍋を見つけた。これは使える。鉄鍋には当然だが汚れが着いている。このままでは使えない。歩き回りつつ、地面をよく見る。
「お、あったあった」
丸く、黄色い実を見つけた。ムクロジの実だ。幾つか拾って拠点に戻る。川の水とムクロジで鉄鍋を洗う。いい感じに泡立ち、汚れも落ちただろう。次は火の確保だ。立っている木々を見る。白樺はあるか、松はあるか。少し探索すれば白樺を見つけた。皮をナイフで削り取る。少し川から離れて、乾燥した倒木が無いか探す。途中、竹林に変わっている部分もあった。そこからまた少しすると、木漏れ日の強いところを見つけた。この辺りの倒木なら乾いているはずだ。白樺と共に拠点に持って帰った。竹林にはもう一度足を運び、水やなにかのの容器として持って帰った。
ナイフで薪にちょうどいい大きさに切る。白樺の皮を撒き、サバイバルナイフの鞘と刃で火花を起こす。燃えた。息を吹き込み種火を大きくする。
――ボッ
「あつつつつつ!」
出来た火を薪につける。これで火も確保出来た。鉄鍋に水を入れ、煮沸する。鍋の消毒とともに飲める水もきちんと作っておく。
暫く休憩だ。ここまで出来れば水が煮立つのを待ってから食料を確保しに行くだけだ。俺は寝床に腰掛けた。
◆
水の消毒が終わったので火から下ろす。竹で作った容器に注ぎ、寝床に置いておく。薪にはまだ猶予がある。少し火に投げ入れてから狩りに出る。
──アオーーン
何かの遠吠えが聞こえた。息を殺し、向かう。物音が大きくなったところで近くの木に登り、様子を伺う。ちょうど狼らしき動物が狩りをしていたところの様だ。ターゲットが割とすばしっこく、その狼は見失ったように周囲を見ている。チャンスだ。思い切って飛び降りて、狼の首にナイフを突き立てる。
「ごめんな、狼。こっちも生きなきゃならないんだ」
ナイフを抜き、大きく下がる。
狼は飛びかかってくる。首のナイフは致命傷にはならなかったか。何度か躱す。狼はまだ襲って来ようとしたが、遂に失血によろめいて、絶命した。
狼を担いで拠点に戻る。辺りは暗くなってきているが、焚き火の光が拠点を示してくれている。
血に汚れたナイフを川で洗い、狼を捌く。毛皮を剥ぎ、食べやすい大きさにしてから鍋にいれ、火にかける。焼ける音が食欲を唆る。
いい具合に焼けた所で鍋を退かす。まだ川でナイフを洗い、火で炙って消毒し、竹を細く切る。これで箸が出来た。味付けのしていない肉は普段食べている物に比べ味気ない。しかしここに調味料などという贅沢な物は無い。
「せめて塩は欲しいなぁ……」
俺の願望は届く訳もなく、一日目を終えた。
◆
サバイバルは続く。なんの目的があるか分からないままに。
狼の肉は大量にあるため、腐らないよう焼いて、手頃な枝に吊るしてあるため、今日はそれだけで生きていける。ただただ森の中で暇な一日を過ごすことになりそうだ。ぼーっとしていたら、
──ガサッ
足音がした。警戒を強める。何も来ない。足音は遠のく。これが何回か続いて、日が暮れた。火の回りしか見えなくなったからとりあえず寝ることにした。
◆
三日目。朝起きると紙が落ちていた。手紙だ。
『コウキ君へ 折角私か教えた魔法があるんだから使わないでどうするのよ。どれだけの知識量があれば魔法無しでここまでサバイバル出来るのよ。 シャーロット』
そう言えば、ここは異世界だった……。
気を取り直して、狩りに出る。狼も食べ切り、食料がない。手紙の言葉を思い出し、ちゃんと魔法を使って罠を張る。
拠点から円状に罠を作り終え、あとは待つだけだ。
暫くして、罠の巡回に入る。六個目の罠に鹿がかかっていた。これも生きるため、と殺して、命を頂く。これだけあれば今日はもつ。罠だけ張り直して拠点に戻った。
あとは何事も無く日が暮れた。起きていても暇なのですぐに寝ることにした。
◆
鳥の囀が聞こえる。もう四日目か……と目を開ければ、そこは通いに通い、見慣れた訓練場だった。エフもヴェルズもそこにいる。
「え?」
体を起こしつつ、ついそんな声が出てしまった。
「お、目ェ覚ましたかい。おーい! シャーロットー!」
ヴェルズが呼べばシャーロットが走ってきた。
「コウキ君、貴方逞しすぎるわよ。どこでそんな知識手に入れたのよ」
シャーロットが問うてくるが質問があるのはこちらの方である。
「それは生前ですが……というか、あの森なんなんですか?」
「あの森は私の幻術よ。ラスカルも一応何をするか分かったもんじゃない。もしかしたら転送魔法で貴方を何処かに飛ばすかもしれない。だからサバイバル技術を身につけて欲しかったんだけど……その必要は無いみたいね」
「ご主人様〜格好良かったですよ〜狼とか〜」
エフが声を低くして「ごめんな、狼。こっちも生きなきゃならないんだ」と声真似してくる。恥ずかしい。
「やめろエフ、シンプルに恥ずい」
「とりあえずこれで訓練は終わりよ。明日は休みだからしっかり休養するといいわ」
脳に疑問符が溢れる中、自室に戻ることにした。
──ベッドとは有難いものである。




