17話 ー クラス最強の女子力 ー
「どうしたものか…… 」
シャーロットが無事に編入出来てから数日が経った。
あの後、3-Cの連中とは上手くやっているみたいで、日を増すごとにシャーロットが学園の事を話す機会が多くなっていく。
今まで一緒に登下校していたのだが、なんと今日、友達と待ち合わせをしているとの事で、オレ達よりも一足先に家を出て行ったのだ。
…… なんだろうか、この気持ちは。
まるで飛び立とうと必死に翼を動かしている雛鳥を見守る親鳥のような感覚。
つまり、オレは嬉しい。
知り合い探しは兎も角、シャーロットにはこの島で出来るだけ人との繋がりを大切にしてもらいたかった。
自分の友達のところに行くわけでもなく、本当にいるかもわからない人物を追ってこんなトコまで来たんだ。
一人でも多く、信頼できる友達を作って欲しい。
そう思っていた矢先にこれだ。
心配事が一つ減って一安心…… も束の間。
「それではっ! 第2回『和風カフェ"平静"のメニューを決めようの会を始めます! 」
昼休みが終り午後の授業。
本日は通常授業ではなく、例により星見祭に向けての準備時間として割り当てられている日だっだ。
現在、オレは星見祭実行委員の中川さんの指示の下、我が2-Aクラスの出し物であるカフェのメニューを試行錯誤する為、調理実習室に来ていた。
学園は広く、調理実習室自体は全校舎合わせて4室あるのだが、その分人数もクラスも多く、調理を必要とする出し物をするクラスは、実習室を使う順番待ちをしなければならない。
星見祭に向けての準備期間は前から設けられていたものの、順番待ちをしないといけないので、まだ二回しかクラスで調理実習室を使っていないのだ。
因みに現在の状況だが…… 男子はオレと弘信の二人だけだ。
男子の大半と絵や工作が得意な女子は、2-Aの教室でカフェの外装について話し合っている。
「前回、桜庭クン考案の"三色ハンバーグとシャキシャキチャーハン〜慧神島風味噌付き〜"は大好評だったので、ウチの店のメインメニューその1として決定したところだったよね? 」
女子バレー部に所属している中川さんの声はよく通り、副部長も務めているので統率力もある。
いんちょの眞鍋は外装の方に行っているので、このメンバーの中では適任だった。
「…… まさかあのハンバーグにホウレン草が入っていたとは…… 」
ホウレン草が嫌いな凪咲は、前回のこの会で行われた試食の際に材料を目の当たりにしたショックを未だに引きずっているようだ。
はいオレの勝ち! オレの勝ちー!
ただ、人前では優等生として振舞っている凪咲。
クラスメイトの前で嫌いな食材が混入している事実を知った時、好き嫌いなんてありませーんみたいな装いを貫いていた辺り、流石である。
「いやあんなの出されたら、あたし達女子として立つ瀬がないよねー」
「桜庭さぁ、困るよーこんな時くらいウチらに女子力アピールさせてくれなきゃさぁ! 」
「…… 実際、桜庭が私達の中で一番お料理上手だし…悔しいけどコレ、現実なのよね…… 」
「いいなぁナギは、こんなデキる夫がいて! 」
「ちがっ、一緒に住んでいるだけで…まだそんな関係じゃないわよ! 」
「まだ、ね! まだ花嫁修業期間中だもんねー? 」
女子連中がキャイキャイと騒ぎ立てる中、オレはこの会早く進行しないかなーなんて事をぼんやり考えながら突っ立っていた。
「…… おいハルっ、試食会は…… 女の子の手料理を食べる会はまだ始まらないのか? 」
進行が滞っていると、今まで隣で大人しくしていた弘信が、我慢の限界が近いのかソワソワしながらこっちを見てきた。
因みに弘信の料理の腕は…… わからん。
多分、料理自体したことがないはずだ。
では、なぜそんなこびり付いた油汚れの方がまだ役に立ちそうな程の場違いゴミ野郎がいるのか。
実は弘信の実家は農業を営んでおり、黒木家は島では有名な農家の一つだったりする。
米もそうだが、野菜も多種多様に栽培しているので、クラスの出し物のために食材を斡旋してくれているのだ。
卵や肉類なんかも、知り合いの酪農家や漁師さんに話をつけてもらっているので、予算の大半を外装や他の事に割り振ることができるってワケ。
最初は善意からこの話を持ってきた弘信だが…… この会の話しが出た途端に、食材を盾にして女子の手料理を食べたいと言い出した結果……
「はーやーく♡ はーやーく♡ 」
女子も渋々といった形で参加を許可しているのだった。
これさえなければ、弘信も随分モテると思うのだが…… 。
元々気配りも出来るし友達思いな部分もあり、顔だって良い方なのだ。
ただ、余りにも女子に対してガツガツいっている点がなぁ。
あと、女子がいる場所でエロゲーがどうのって話なんかを平気でやる点。
エロゲーをやるなとは言わんが…… とまぁ、色々と残念なヤツなのだコイツは。
「…… はーいごめんごめん、ちょっと脱線しちゃったけど、本題に入ろっか! 」
中川さんがパンパンと手を叩いて場の空気を切り替える。
隣では弘信が「いよっ、待ってました! 」と囃し立てていた。
「先日決まったハンバーグセットの他にもう一点、目玉商品を作るってことだったと思うんだけど…… 私はオムライスがいいと思うの! 」
「オムライス? 洋風の料理だよね…… ? 」
「中身じゃなくて外…… かけるソースを和洋中と分ければイケるんじゃないかって思ったの! 」
なるほど…… と女子達が納得する。
確かにソースを変えるだけなら、態々作り方を変えないでいいし、元からソースの準備をしていれば、後はご飯を卵で包むだけで良いので、時間短縮にもなるだろう。
問題なのは調理班がうまく卵を巻けるのかどうか。
たかが学園の出し物なので、そこまでクオリティーを求められてはないだろうが、ある程度はできてほしいと言うオレの謎の拘りがあった。
「反対意見もないようだし、オムライスでいこう! で、肝心のソースなんだけど…… 洋風はケチャップとデミグラスソースどっちにしようか? 」
「洋風だけ二種類でいいんじゃない? どうせどっちも市販のソースをかけるだけだし! 」
いやそうなるだろうが、なんか夢がないな…。
「和風はどうしよっか? ってか和風のオムライスって何? 」
「…… 私、前に家族で本島へ旅行に行った時、お好み焼き風オムライスって言うの…… 食べた… よ? 」
「ナルッチの意見頂き! これもお好み焼きのソースと鰹節をかけるだけだもんね? 」
想像したのだろうか、女子の席から複数の腹の虫が声を上げていた。
虫の飼い主達は、恥ずかしさからか一斉にオレ達男性陣を殺す勢いで見てきたので、すぐに顔を背けた。
光の速さで目を背けた事はあるかぁい? (ねっとり)
初めてだよ。
「和風もその方向性で行くとして…… 問題は中華よねぇ」
「中華と言えば…… ラーメンとか麻婆とか? 」
すでにオムライスではなくなっている。
「うーん…… じゃ、かに玉にかかっているような甘酢餡をかけるのはどうかしら! ? 」
凪咲ぁ…… それ、オムライスちゃう、天津飯や。
似て非なるものである。
しかし思った以上に難関である事は確かか。
先日のハンバーグセットにチャーハンが入っているため、中身をチャーハンにする意見は通らない。
甘酢餡も「これただの天津飯やないかーい! 」と言う客のツッコミを受ける事請け合いなので却下。
あと、ラーメンのオムライスって何だよ。
考えろ。
ソースやタレで勝負できる中華料理は……… 。
「…… 海老チリなんてどうだ? ピリッと辛い海老チリのソースとオムライス。目新しいし、辛い物が好きな客を呼び込めると思うが」
『それだ! ! 』
…… 決まったようだ。
それからしばらく、ご飯はどうするだとか、ソースの味だとかを話し合い、実際に作って食べてみて感想を言い合ったりする時間が過ぎていく。
…… が、結局、ある程度の方向性は決まったものの決定には至らず。
次回この調理実習室を使えるのは1週間後。
星見祭は5月の最終金曜日なのでまだまだ時間はあった。
今日のところは各自で研究して、1週間後に改めて発表し合うって事で決着し、後片付けをした後解散となった………
余談だが、無理矢理参加した弘信は……
「ングングっ…… うまいっ! あむっ… これもうまいっ! 」
女の子の手作りならばなんでもいいのか終始こんな感じで、全く参考にならなかった。




